鹿友会誌を紐とく
第三十三冊(昭和6.1)
 
△「〃 鹿友会盛衰論 小田島信一郎」
 鹿友会はこの頃だんだん衰微して、昔日のような面影がなくなった、と言う人がある。 この頃渋々義理で出てくる人が多くなった、と言う人がいる。見方によってはそうかも しれないが、私の見方は違う。
 確かに約五十年前、指ケ谷時代の鹿友会は、大里法学士のもと、佐藤良太郎さんが女 房役となって、理想的な共同生活を送っていたから、自然そこが本部となって活気があ ったし、親しみも湧き上がった。
 しかし、これ等の人達は皆んな郷里に於ける良家の子弟ばかりで、生活の苦労は知ら ない人達ばかりであったから、その頃の鹿友会がいかに生気溌溂であったかは想像に難 くない。
 
 然るに最近の鹿友会にはそういう中心がない。本部が一体どこにあるか判然としない。 幹事長宅とはあっても、交替の度、また移転の度に本部が替わる。だから形の上では、 影が薄くなった様にも感じる。
 四十余年の歴史がある。また大人物を出している。我鹿友会が未だに小さな建物一つ をも建てることが出来ないような状態では、決して盛運に向っているとはいえないだろ う。
 しかし、それは形の上で、内部に入って見るとなかなかどうして、えらい働きをして いる。奨学資金のことしかり、この頃の鹿友会例会は、現農相町田忠治氏、横山警保局 長、南米の成功者石井氏、池田氏、更には柳田国男氏などの講演等を開き、大に郷土愛 の心を燃え立たしたものである。
 同郷会でこの様な本質的な活躍をしている会は、聞いたことがない。郷土愛なるもの には、社会生活を豊富ならしむるに、重大なる要素をなすものであると信じている。
 
△「〃 感想・希望・対策 中島織之助」
一、奨学資金は、将来共継続、充実して行きたいものである。資金制度を基金制度に改 めたとは、十数年前からの持論である。
一、奨学金と経常費は、全然別個のものとした方がいい。現在でも大体は別々であるよ うだが、観念や実際には未だ混同している様に思われる。会費免除の制度を、奨学資金 をも対象にしているのはよくない。その結果は必ずや経常費に不足をもたらす。
一、会誌発行度数を増やしてもらいたい。この持論も前からのものだが、地方に於いて は年一回の会誌だと心細い。紙質は多少悪くしても頁数は多少減じても、少なくとも年 二回位は欲しい。鹿友会を面白くするも総べて「集まる」ところから始まる。蔭での不 平不満は有益にはならない。
一、寄付金申込者は、是非未払いをなくしていただきたい。払込がないと、種々食い違 いが生じ、折角勉学中の学生にまで心配をかける。
 
△郷土の動き
 ……
 国立公園指定の義につき陳情
 花輪高女落成式
 ……
△会員名簿(昭和五年)賛助会員二十九名、
 正員、東京附近百八名・地方百十九名・郷里百二十一名・不明九名

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