鹿友会誌(抄)
「第三十冊」
 
△想起す故人十三氏
小泉画伯氏
 氏の渡米を春洋丸甲板上に送り、其の大抱負を聞き、其の成功を祈って別れたるは、氏と此の 世の別れ、其の抱負、遂に実現せず、恨を抱いて彼の地に客死す、氏の其の時の心情や如何。 故旧枕頭になく、骨肉身辺に侍せず、異国の空に、一?の煙と化して終る。其の霊や必ず 西に飛んで帰りしならん。米国に於ける製陶事業の勃興に、氏の長技たる絵画を取り入らしめ、 異日の大成を図るのは、氏の抱負であったようだ。之を若い之れからの会員に告げて、先輩の 遺志を継ぐものなきかと絶叫するもの、徒労なりや否や、仮りに十年の将来を待って見よう。
 
 以上の外、物故会員が沢山ある、他日に譲ります、乞ふ諒せよ。

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