鹿友会誌(抄)
「第三十冊」
 
△想起す故人十三氏
櫻田潔氏
 世才るもの学才なし、学才あるもの世才なし、天は同時に二物を与へず、牙あるもの角なし、 角あるもの牙なし。然るに我が櫻田潔君は、実に世才学才を兼ねた奇才家であった。学才は非凡、 世才は抜群、花輪小学校で村山義一君が万年首席として、其の秀才を称へられて居たとき、尾去澤 小学校から転校した櫻田氏は、見事に万年首席村山君をして其の高座から下らしめた。工手学校でも 一度数百人の首席として気を吐いた。其の世才の実例を陳べんとせば、却て贔屓の引き倒しに終る 虞れあり、故に略す。

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