鹿友会誌(抄)
「第二十四冊」
 
△俳句「春愁録」   樹人
 暮るゝ畦に色捧げ立つ薊かな
 日に汚にき豚の餌箱や鳥交る
 留守の戸や春潮窓に平かに
 人去れば滝鳴るのみや岩躑躅
 春昼や火箸はありし灰の底
 風塵に本堂の灯や散る桜
 観桜列車雨後の煙を散らしつゝ
 蝶々や韮を怖れて麦の上
 山をつないで鉄橋かゝる小鮎かな
 躑躅みな鐘撞く僧に赤きかな
 鳥過ぎしと思ふ障子や春真昼
 行春の雲湧くのみや麦の上

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]