鹿友会誌を紐とく
第十一冊(明治42.9)
 
△例会
 (前年の)十一月百六十五例会は出席者十一名であったが、幹事始め遅刻する者多く あり、午後一時開会予定が午後三時になった。川村竹治氏が憤慨し、左の様な決議をし た。
一、今後会員は開会時刻を厳守して出席すること
一、会員は、万障繰り合わせ出席すること
 この決議をしたときは七名であったが、その後四名が出席した。
 幹事は謝罪し、会務報告の後、鹿友会の拡張問題について激論数時間
@拡張すると共に内部刷新を企るべし
A内部の刷新を企り、しかる後に拡張すべし……
 
 百六十六例会並びに二十二回総会も二時予定が四時になり、出席者は十五名。
 総会としてはすこぶる少数であったが、会則変更あるいは支部問題について熱心に討 議した。
 
 規則改正
一、毎月第一日曜に例会を→春夏秋冬各季一回以上とする。
二、除名項目追加
@三年以上会費未納の者
A在京会員にて一年以上音信不通、又は例会に出席せざる者
三、各地方委員を設ける
 
△「二大問題 川村十二郎」
 第拾冊の中島織之助の論説「月次会廃止論」について、真っ向から反論した。即ち(要 旨)、
 
一、例会の縮小について
 確かに会員年齢が上がり、生徒も中学ではなく高等以上の学 生になってきたことは事実であり、学事や学校の催しも盛んになってきた。また、今の 人は一般に利巧になってきて、若々しい無邪気さがなくなってきた。更に近来同郷者と か、朋友とかの間柄に温かい情愛が薄らいできたことを嘆かざるを得ない。
 例会本来の意義を感じ、時勢の要求に応じ、善良なる方向へ向かって、その趣意を拡 張し、会の発展を図るべきは、後輩の務めである。
一、事業としての例会  例会を鹿友会の事業として継続したことは、大変な効果を及ぼし、他郡 県人が羨んでいるのも、そこにある。その特色を捨てゝ、他府県の郷友会と同じように するのは、会を無意味なものにしていまう。
 
 我々は多忙なればなる程、精神的慰藉を求むる。
 近来会員の動向からして、単に回数を少なくしたといって、大勢集まるだろうとは信じ 難い。
 
△反論
 前記川村氏の論説に、中島氏が反論した。即ち(要旨)、
 
 川村氏の筆頭、走り過ぎたるか、熱の高まり様、少し過度の為か、いや我輩の筆の 足らざるなり。
 曲解にあらざるも、誤解の甚だしきものは一言置いておく。
一、年一回
二、例会は不必要
三、物質的利害の観念に鋭くして、無形の利益を全く看却されたのであろうと思う、君は理 財学を専攻云々
 
 これらに対しては、
一は、一学期一回とし、外に新年大会・夏期大会としてある。
二は、月次会は有害であるが、例会においてはその必要性は私も常に主張している。理 財学を専攻しているが、精神的慰藉の必要を忘れていない。
三は、余りにて馬鹿馬鹿しく、「君は理財学云々」に至っては、失笑三度なお足らざる なり。
 論旨の是非は別として、氏の如く正々堂々と意見を交換せんことを常に切望する。
 
△贅言「附米澤有為会の概要 中島織之助」
 我鹿友会の発展に参考とすべきものの一つとして、米沢有為会の概要を記す。
一、必ずしも米沢出身者に限らず。
一、会員四十名を充たした場合、各地に部会を設ける。
 東京・米沢・山形・仙台・京都
 会合は、各部によって異なり、総会は毎年八月米沢にて行う。  他事業としては、七、八月を除き、毎月雑誌を発行、七、八月は米沢地方にて、巡回 学術講談会を開く。
 総務部(庶務会計)、教育部(学生の指導監督・寄宿舎・貸費並講談会)、編集部(雑誌)
 
 注:本年は一層の革新を加へ、法人組織に変更とか。
 
△「覚悟せざるべからざる鹿友会の学生 中島織之助」
 鹿角に限らず一般父兄は、子弟を遊学させるのは、堕落を勧める様なもので、学問す る者は家事に疎く、いたずらに大言壮語し、るで無頼漢を作るようなものだという。
 この頃の学生諸士を見ていると、当らずといえど遠からずというのに対し嘆く。しか し、これらの心配事を打ち消すのもまた、学生本人であり、その重任大なるべし。
 故郷鹿角も生存競争に入っていった。これに備えるには、人材養成に外なるべし。
 「言ふ勿れ、鹿角には人材なしと、彼も人、我も鹿人、なんぞ人材は薩長のみに限ら んや……」
………
 浩々たるとわだの清湖を北に控へ、
 矗矗(ちくちく)泰然たる五の宮霊山を南に拝する我狭布の里は、
 天、已に与ふる自然の美観を以てす。
 浩然の気、堅忍の志、自らその内に養成せらるゝや必せり。
 何人かその人材の卵なきの愚を言ふものぞ。
 然れども翻ってまた思へば、光なきの玉は玉なきが如く、
 琢かざれば終に光なくして了るを如何にせん。
 
△明治四十二年賛成員二十一名、
 地方会員九十五名(在郷五十八名)・在京会員五十八名(学生二十九名)

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