鹿角市文化財保護協会
事務局からのお知らせ
 
△鹿角市教育委員会史料調査室の機能移行に関する陳情
 平成23年12月26日午後3時、鹿角市教育委員会教育長室
      鹿角市教育委員会史料調査室の機能移行に関する陳情
  
  陳情趣旨
  新図書館を含む仮称学習文化交流施設の計画においては、鹿角市の財
 産であるたくさんの古文書が全て新しい図書館に収蔵される見込みとな
 りましたことは大変喜ばしく、深く感謝申し上げます。
  しかし、平成23年11月30日、鹿角市交流センターで行われた「仮称学
 習文化交流施設整備事業市民説明会」の席上で、参会者の質問に答えて
 鹿角市教育委員会生涯学習課と政策企画課は、「現在史料調査室にある
 古文書は新しくできる複合施設内の図書館で館内の図書として市民の方
 に活用して頂く、また新しい図書館内には現在の史料調査室の機能は持
 たせない」と明言されたことを聞き大変驚いております。
  これまで長い間、深く「史料調査室」と関わりを持って来た当鹿角市
 文化財保護協会並びに各地区の史談会等として、新しい図書館において
 も、鹿角市史編さん時に収集された膨大な古文書やそれらの解読文書等
 が有効に活用されるように、これまでの史料調査室のどのような機能を
 新しい図書館に移行したらよいか話し合いました。
  その結果、これまでに寄贈された多くの古文書や郷土資料が新しい図
 書館においても多くの市民に活用されるようにすること、そのためにま
 だ寄贈されたままの古文書等の検索目録を作るための作業場所が新しい
 図書館の中にも必要であるという結論に達しました。
  つきましては、その内容や理由をご説明申し上げ、ご理解を頂けるよ
 う陳情申し上げる次第であります。新たな図書館が鹿角市民のためのも
 のになるよう、宜しくご検討、ご配慮をお願い致します。

史料調査室機能の移行をお願いする事項
(1) 史料活用のためにはデジタル化された古文書目録が必要
  「鹿角市教育委員会史料調査室」は、昭和53年「鹿角市史篇さん事務
 局」として発足以来、今日までの33年間に、「鹿角市史」全5巻7冊に
 加えて、「鹿角市史資料編」を平成17年度作成の第34集まで刊行してき
 ました。
  「鹿角市史」の特徴は、鹿角に現存するたくさんの古文書を市民の方
 々より提供して頂き、それをもとに編まれた、いわば市民の実生活に密
 着した市史であり、他に類を見ない優れた市史であります。
  平成18年度より史料調査室を閉鎖するという方針が市から出された平
 成17年にも、私たちは、史料調査室存続の陳情を致しました。その時は
 嘱託職員の配置は打ち切られたものの、史料調査室の看板は降ろすこと
 なく、調査員を限定したり、図書館員が厳重な管理を行ったりする等で
 貴重な史料が紛失することを防ぎながら、郷土史研究のために各史談会
 や市民の方々に史料を活用して頂くことができました。
  また、平成18年度と19年度には、秋田県公文書館の古文書班の方に当
 市が所有する古文書を具体的に調査して頂きました。その結果、鹿角市
 の古文書は他の市町村では見られないほど貴重な古文書が多く、その量
 は県内のトップであることが分かりました。さらに、当時市役所の4階
 倉庫にアルミの箱26個に入れられ、保管されていた毛馬内山本家より寄
 贈された古文書は、文書目録を作るだけでも専門家2名が取り組んでも
 10年はかかる程の大量の古文書があるということも分かりました。
  鹿角市はこうした状況に深くご理解を示され、平成20年度より緊急雇
 用の方4名とその指導者1名(実質的には1ヶ月を2名で分担)を雇い、
 本年度までコンピュータで検索のできるデジタル化した目録を作ってき
 ました。
  その結果、専門家2名が担当しても10年(延べ20年)はかかると言わ
 れた山本家古文書の目録作りは、毎年人が代わる緊急雇用の方々の3年
 間の作業、延べにして15年間の作業では、残念ながらその全てを終える
 ことができず、平成23年12月現在でアルミの箱26個中の3箱を残すこと
 となってしまいました。もし、来年1年間もこれまでと同様の5人の体
 制で目録作成作業を継続すると(延べ20年目)毛馬内山本家の古文書目
 録は完成するものと思われます。
  こうして作成されたデジタルの古文書目録によって膨大な数の古文書
    (現段階の山本家の古文書だけで14,175点)はコンピュータで速やか
 に検索され、大切に保管された閉架書庫より取り出されて、読みたい人
 の手に渡すことができます。
  毛馬内山本家の古文書には、亨保18年(1733)に山本家五代九一郎が 
御給人となった頃の山本家の開田や山林開発の状況、商取引の様子、鉱 
山との関係等、代官所下役や巡見使が来た時の御給人山本家の職務(大 
湯家老汲川家等の文書との比較ができる)、戊辰戦争時の兵器や布陣の 
様子等、さらには山本修太郎の県議会での活躍の様子等々が克明に記さ 
れており、鹿角の歴史を理解する上での貴重な史料となります。
     県内他市町村とは比べられない程の大量の古文書を所有する鹿角市に
 は、その量が膨大であるが故にその古文書を選び出すためのデジタル化
 された古文書目録が必要となります。図書館の蔵書のように製本された
 ものであれば背表紙に本名が印刷されているので、書架から本を選び出
 すことはそれほど難しくありません。しかし古文書の場合は一枚一枚が
 バーコードが貼られた袋に入れられ、さらに段ボール箱にまとめて入れ
 られているので、見たい古文書を手作業で探し出すことは困難です。そ
 の為に、資料名や人物名、年代、バーコードなどから速やかに検索ので
 きる目録が必要になります。そうすることで市民のふるさとの歴史を知
 りたいという希望に応ずることができます。
  もし古文書目録がない場合は、単に古文書が書庫に収納されているだ
 けで、大量の古文書は市民に活用されることなく今後永く死蔵されるこ
 とになってしまいます。

(2) デジタル化された古文書目録作成のための作業スペースが必要
  現在の史料調査室には、山本家の古文書の他に、保管されたままで、
 まだ目録ができていない以下のような古文書があります。

   @ 山本家(毛馬内)       衣装ケース2個(一部手書き等
の目録あり)
   A 内田家(尾去沢)       ダンボール1箱
   B 関善             ダンボール5箱
   C 田村酒屋           衣装ケース7箱
   D 田村又夫(玉内)       ダンボール2箱
   E 工藤次郎家(小枝指)     衣装ケース1個
   F 柴内不動院          木製引き出し2個
   G 花輪役場行政文書       ダンボール3箱
   H 毛馬内大湯行政文書      ダンボール1箱
   I その他郡役所時代の文書等   ダンボール1箱
     J 川村家文書             段ボール箱2個

  これらの古文書も、いつの日かバーコードのついたデジタル目録が作
 成され、市民が活用できるようになることが望まれます。
  加えて、現在の史料調査室には手書きの文書目録(10巻の簿冊)があ
 ります。これは花輪の川村家や大湯の汲川家、八幡平の安倍家、尾去沢
 の内田家、毛馬内の高橋家等々、鹿角の昔を伝えるたくさんの古文書の
 目録です。その他に、3,000冊程の郷土史料(手書きの解読文や古文書を
 コピーして製本したもの2,000冊程と今は入手のできない1,000冊程の古
 い活字本)もあります。これらはデジタル化された目録はないのですが、
 幸いこれまでは史料調査室には勤務している人がおり、所蔵している古
 文書や古地図、郷土史料を活用するなどをして、問い合わせや史料提供
 に対応することができました。
  今後、図書館の職員が、新しく設置される移動ラック(普段は書架と
 書架が密着している)から、市民の史料提供の要請や問い合わせに応え
 てスムースに郷土史料等を選び出すためには、やはり検索のできるこれ
 らの目録の作成は必須のこととなります。
  手書きの古文書目録(10巻の簿冊)は、市史編さん事務局が発足した
 昭和53年より作成され始め、長い年月をかけて作成され、その形式は統
 一されていません。古い時期のもののため、資料名のないものや、古文
 書の最初の1行目を資料名に代えているものもあります。現在の秋田県
 公文書館や全国の公文書館で行っている目録の形式、現在作成中の毛馬
 内山本家の目録の形式のようなものではありません。従って、これら手
 書きの目録もいずれはデジタル化する必要があります。それは単に今あ
 る手書きの目録をそのままパソコンに打ち込めばよいということではあ
 りません。
  実際の古文書に再度照らして、検索するための約束事に従って、資料
 名や文書の形式、寸法、最初の1行(備考欄に)等が記され、さらには
 古文書目録と古文書のバーコードが照合するようにし、入れられた段ボ
 ール箱の箱番号も記され、新しい図書館に移行後はその書架番号も記さ
 れることで、スピーディーな市民への史料の提供が行われるようになり
 ます。しかし、そうした古文書目録を作成するためには、その作業をす
 る人と その作業をする場所(スペース)が必要となります。
  これまでの史料調査室の機能は次のようなものでした。

  @ 鹿角市史作成時に収集した古文書や古地図、またはそのコピーが
   大量に保管されてきたこと
  A これらの古文書等が管理されやすく、市民に利用されやすいよう
   にするために目録作りが継続されてきたこと
  B 目録を作成する場所(スペース)や、目録を作成するための机、
   パソコン、辞書等の備品があったこと
  C 鹿角市史や郷土史に対する問い合わせや、古文書や郷土史料を活
   用の希望に対応してきたこと
  D 古文書を解読して「鹿角市史資料集」を作成してきたこと、但し
   この作業は、第34集が平成17年に刊行されて以降は中断されている
 
  今新たな図書館が建設されるにあたり、11月30日の市民説明会では、
 「新しい図書館には現在の史料調査室の機能は持たせない」と述べ、12
 月6日の第4回 文化の杜を作る会の資料には「史料調査室は、図書館
 には設置しない方 針です」と文章で示しています。
     「現在の史料調査室の機能は持たせない」とは上の史料調査室の五つ
 の機能の内のどの事を指すのでしょうか。
   @の古文書等の保存保管については、現在史料調査室にある古文書や
 郷土史料の全てを閉架書庫に格納することのできる設計として頂き、こ
 の問題は解決しております。
  AとCの古文書の目録作成や市民の供用に応ずる機能については、先
 の11月30日の市民説明会で担当の方から「現在史料調査室にある古文書
 は新しくできる複合施設内の図書館で、館内の図書として市民の方に活
 用して頂く」という説明がありました。現在史料調査室にある古文書が
 新しい図書館で市民の方が活用できることが実現したら、それは本当に
 素晴らしいことです。
  鹿角市が収集した貴重な古文書が死蔵されないためにはデジタル化さ
 れた目録作りは今後も必要なのですが、その為にはある程度古文書を読
 むことのできる人が必要となります。今後は図書館職員の採用に当たっ
 ては大学で古文書の単位を取った人とかそれなりの教育を受けた人を採
 用するとか、職員の職場教育に力を入れることなどが必要になると思わ
 れます。
  こうしたAやCやDの機能の問題は、諸経費を含む運営上の問題です。
 新しい図書館の運営につては市民の期待が寄せるものは大きいのです。
 郷土の歴史や文化を知りたいという市民の希望に応えることも運営の一
 つの重点として今後図書館運営の工夫をして欲しいと思います。
  Bの目録を作成する場所(スペース)の問題ですが、Bの目録を作る
 場所とそれに関わる電源配置等の設計上の問題は、今問題にしなければ
 ならないことです。新しい図書館ができてからでは手遅れとなってしま
 います。
    先の市の担当の「新しい図書館には現在の史料調査室の機能は持たせ
 ない」という説明は、目録を作成する場所(スペース)も全く作らない
 ということでしょうか。
  市民に古文書や郷土資料を活用してもらうことは、図書館の蔵書にバ
 ーコードを貼って図書目録を作るように、古文書にもバーコードを貼っ
 て古文書目録を作ることは、管理と活用が十分に行われるようにするた
 めの図書館職員の仕事です。まさに「館内の図書として市民の方に活用
 して頂く」ための図書館職員の重要な仕事です。
   新しい図書館には、まだ段ボール箱の中に入ったままのたくさんの古
 文書等が運ばれます。この古文書等の目録作りはどこで行われるのでしょ
 うか。図書館の職員がその作業をする場所が必要です。例えその作業が
 遅々たるものであっても、その作業をする場所は確保されていなければ、
 たくさんの古文書は死蔵されたままのものとなってしまいます。
  その作業をする場所は閉架書庫の中です。もし設計上許されるスペー
 スがあれば、閉架書庫にドア1枚で出入りでき、2〜6名程の人員が入
 れて、電源と手を洗う水場がある部屋があればより理想的です。
  古文書目録の作成作業は、閉架書庫内にある実際の古文書の「史料
  名」や「最初の一行」「作成された年月日」「成作者名」等を読み取る
 作業から始まり、「史料番号」「バーコード番号」「保存される箱の番
 号」「保存される書架番号(移転後)」などを目録に記載します。そし
 て、目録に記載された古文書は、劣化しないように中性紙の袋に入れら
 れ、その袋にもバーコードが貼付され、段ボールの箱に入れられ、自ら
 が指定した書架番号の棚に格納されることになります。
  これらの作業を行う場所は、一連の古文書を直接扱う作業なので閉架
 書庫の中か、もしくは古文書の箱を運ぶ距離が短くなるような閉架書庫
 に続く部屋が必要です。
  古文書を読んで目録を作る作業は、パソコンのくずし字事典を活用は
 するものの、扱うものが地方文書なので判読に手こずるものも多く、と
 ても集中力を必要とする仕事です。図書館員が日常的に行う作業、会話
 のある作業とは内容が異なり、同じ作業室を使用することはお互いに避
 けなければなりません。閉架書庫に隣接する部屋を作るほどのスペース
 的な余裕がない場合は、閉架書庫内で最低2名位は作業ができるように
 机等を配置することが望まれます。
  年度半ばに古文書や郷土資料が持ち込まれる場合もあります。これか
 らは新しい図書館に持ち込まれるのですから、閉架書庫に格納され、目
 録に掲載されて、市民に活用されるようにしなければなりません。決し
 て図書館のどこかに山積みにされるようなことがあってはなりません。
    「新しい図書館内には現在の史料調査室の機能は持たせない」とか、
 「現在の史料調査室の機能は持たせない」ということですが、博物館等
 のない当市では、新しい図書館ができ史料調査室が廃止になったときに、
 これまで史料調査室が担ってきた基本的な機能を切り捨てるのではなく
 新しい図書館に移行することができたならば、新しい図書館を作ったこ
 との意義がより深まります。その機能とはこれまで収集された史料が新
 しい図書館においても市民に活用されることです。そのためにはデジタ
 ル検索が可能な目録があれば市民への対応も素早いものになります。
    今新しい図書館の設計図が完成しようとしているときにどうしても私
  たちが陳情しなければならないことは、これまでに市に寄贈され鹿角の
 歴史を今に伝える多くの古文書を死蔵させないために、まずは寄贈され
 た古文書を整理し、検索可能な目録を作るためのいくらかのスペースを
 設けて頂きたいというお願いです。
    大日堂舞楽やストンサークルなど世界に門戸を広げようとしている鹿
 角市です。郷土を誇りに思う市民や未来を担う子どもたちのためにも、
 寄贈してくださった多くの方の期待に応えるためにも、今残されている
 郷土の史料を大切にする鹿角市であることを願います。

  提出(予定)先
   1、鹿角市長               児玉  一 様
   2、鹿角市議会議長            高杉 正美 様
   3,鹿角市教育委員会教育委員長      安倍 良行 様
   4,鹿角市教育委員会教育長        吉成 博雄  様
   5,鹿角市議会教育民生常任委員会委員長  倉岡  誠  様
   6,鹿角市議会教育民生常任委員会副委員長 児玉 政明  様
   7,鹿角市議会教育民生常任委員      吉村 アイ  様
   8,鹿角市議会教育民生常任委員      宮野 和秀  様
   9,鹿角市議会教育民生常任委員      阿部佐太郎  様
   10,鹿角市議会教育民生常任委員      米田 健一  様
   11,鹿角市議会教育民生常任委員      田口  裕 様
   12、鹿角市議会議員            福島 寿栄 様
   13、鹿角市議会議員            和井内貞光 様
   14、文化財保護審議委員会長        高木 英子 様

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