GLN「鹿角の温故知新への旅・鹿角先人列伝一覧」

佐藤政治

 昭和62年鹿角市文化功労者。 「上津野」研究発表バックナンバーNO.12 ・同記念講演バックナンバーNO.18
参考(出典):「鹿角のあゆみ」
 
△鹿角のあゆみ はじめに
 
 学校における社会科指導では、その基本となる郷土社会の学習に際して教科書にない資料を整えるのに苦労する。 身近かな筈の郷土、又現実自分たちを埋めている郷土社会の事象現象を学習体系に整えるのは却って困難を感じる。 特に歴史的資料は秘蔵されていたり、分散していたりして繁忙な教師を歎かせるのである。 こうしたことから私たちは郷土学習資料編集の必要を痛感し、可なりの努力をして郷土史年表(昭和三十五年)歴史資料編T (明治以前史)(昭和三十七年)及び仝U(明治以降史)(昭和三十九年)とを「鹿角の歴史」と題してまとめたのであった。
 
 特に明治以降編は単なる資料集としてでなく、日本の歴史の流れにそって、明治のはげしい転変をこの北国の山里がどう受け止め、 仝反応したかをたずねる通史として構成したのであるが、これが生徒や教師のみならず、郷土を愛する一般の方々の需めが 可なり多く、これが再刊の要望ともなって私たちを感銘させたのである。しかし私たちの現実はなかなかそれを許さず今日に 至っている。その後心ある研究家の方々から内容に対する御指導を頂いたり、又新しい資料も多少集ったので、 折々再刊のことも話題にしていたが、たまたま大館印刷所武内氏の御協力が得られもことになったので、ここに前書の不備を 補正し、追録、写真等数十頁を加えて新訂版とし御要望に応えることにしたのである。 尚「鹿角の歴史」(明治以降史)刊行の際に、前編(明治以前史)を併せて要望する方も多かった。しかしながら前編は後編に 比して資料の広さからも又その組立てからも大きな追補改訂の必要を感じていたのであるが、それを為す余裕もなく、 今回も大いに躊躇したのである。しかしこの際一応「古代上津野(かずの)」から通して見て頂くことも意味あることとして 原本のまま合本することにしたのである。
 
 郷土の歴史的資料は旧家や何人なの蒐集家、研究家の手元に秘蔵され、又或るものは学術書の中に収められて一般から 遠ざけられ、郷土を愛する広い一般の方々と無縁のものとなったり、又断片的な語り草としてあいまいのまま過されてしまい 勝ちである。しかも最近の住宅ブームは益々古記録を消滅散逸させる恐れが多い。 又伊藤為憲の「鹿角縁記」、内藤十湾「鹿角誌」、曲田慶吉「鹿角郷土誌」、又は宮城佐二郎「花輪町史」等の 各町村史までも今では古典となり、最近では郷土をまとめて知ることがむずかしくなっていると思われる。
 
 郷土を歴史的に知るということは郷土を愛する者の科学的な愛し方であり、又そのことは単なる懐旧や郷愁、好奇で 終るのでなく、愈々近代化されていく郷土の展望や設計につながることである。又日本としての動きが、この山里の おだやかなくらしをゆすぶり、その中で郷土の先人の苦悩があったのであるが、この今日を築いてきた郷土の先達の 苦悩や功績を知ることは、郷土を近代化していく郷土人の育成にかかわりがあることであろう。
 
 私たちは郷土の歴史を確実精密に組立てて提供するには余りに非力であることを知っているが、今にして誰かが しなければならない仕事だと思うのである。私たちはまだまだあるであろう資料のすべてを掘り起こすことはできなかったが、 今一応のまとめを提供することによってこの上の資料の所在がわかったり、又この筋道の上に各位の考察なり補正なりが 加えられるものとして敢えて刊行を急いだのである。
 
 本書は学術的なものとしないために原資料の羅列を制限した通史としているが、今後これ等の資料の集成をしておく 必要を痛感している。又明治以前史、古記録等については特にその道の方々を広く動員して「鹿角史」の確定版が 生れるよう提案したいと思うのである。今や鹿角は一市として大きな飛躍が策定されていると聞くが、教育と行政の 達眼から実現することを待望したいものである。その意味をこめてこのささやかな仕事を御認め下さった 鹿角郡町村会長関孝三氏、鹿角郡地方教育委員会連合会長松井太禅氏、鹿角郡教育界並びに郷土研究の元老高橋克三氏 の序文や題字を頂けたことは身に余ることであり、心から感謝申し上げます。
 
 本書の刊行に当り、今は散り改ったかつての同人石川雄三、川尻日出男や相川積、渋谷俊雄、秋林武、片岡正一等の 諸兄との仕事がなつかしく、又その労苦は永く止められるべきと思う。 又直接資料や御指導を頂いた町の若き研究者工藤利悦氏(花輪町、現江刺市)、栗山文一郎氏(花輪町)や、 助言を頂いた関村幸次郎氏、その他直接間接に資料を提供して下さった方々、特にこの刊行をすすめて下さった 大館市大館印刷所武内政雄氏に心から感謝申し上げたいと思います。
  昭和四十四年六月
     鹿角のあゆみ 刊行会
        佐藤政治(花輪小学校)
        汲川隆景(熊沢小学校)
        阿部繁治(花輪小学校)
        安村二郎(阿仁合中学校)
     特別会員 工藤利悦(江刺市、東北銀行)

  • 鹿角全科 Wiki

  • [バック]  [前画面へ戻る]