「鹿角」
 
△七 伝説の鹿角
<錦木塚の俤   高杉露星>
 相思ふ 二つの魂ゆ とこしへに 眠りし所 此処ぞ錦木
 そゞろなれや 果敢なき恋を秘めしてふ 錦木塚の秋は悲しも
 ぎんなんに 雨や降るらん 錦木の 塚の御石に沁む歌もあれ
 彩れる 千束の木々も立ながら 朽ちぬと聞けば 悲しかりけり
 われ泣かば 泪に血汐 交るべし 冷めたき石よ 紅き苔むせ
 ともすれば乱るゝ梭の狂ひ音を 姫の心と知る人ぞなき
 われ遂に 御霊誘はん 歌もなく ひたすら石に 泪して来ぬ

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