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[鹿角の演芸・民俗芸能]

 
川原大神楽「川原万歳」
 
△前文その一
 太夫 とうくんのせいとう、我また天下にあまねく武士は、光栄をたな心として、弓 は袋に収まりて、太刀は鞘を出でずして、とささのみよとかやかほどめでたき折からに、 ごさいの才三一曲囃してまいろ。
 
 才三 オウ……コロロロー……コラ万歳、コラ万歳、うんこらしんこら天秤棒、さざ えすたすり鉢、うちの旦那様御用だらけで暇がないとも喜んだが太夫殿の万歳。
 
 太夫 おやおうたれ、そえさまた続いて物事良けりゃ、松前の島から喜びが続いたが 才三。
 
 才三 コロロロー……サアサア……喜びともござれば、うちの旦那様銭金ふだで、お 庭に大きな金山積んで、山にたとえて申そうならば、筑波山にかば山、男鹿で新山本山、 五城の目で森山、馬場の目で馬場岳、ふだ岳峠、お国で申そうなら、いまずにごどじゃ のステラテンのテッペコまでも届くべとも喜んだが太夫殿の万歳。
 
 太夫 おやれおうたれ、そえさまた続いて物事良けりゃ、かなであれ、きき酒なんど は、お国ではやる、お国でもろはぐ、濁り酒のしか酒、おまじゃて、樽が鳴ってガフリ。
 
 才三 コロロロー……サアサア……樽が鳴ってガフリ、樽が鳴ってガフリ、あんたら 酒さ焼酎過ぎて才三鼻フゥン……どうでもこうでもスパスパと飲んだだけ得だと、喜ん だが太夫殿の万歳。
 
 太夫 おやれおうたれ、そえさまた続いて物事良けりゃ、ごどじゃにくまじゃに、い 長い長いの銚子で、旦那さんが三合。
 
 才三 コロロロー……サアサア……三合三杯、三合三杯、てっぷりごんがが始まって、 旦那様のお祝いなら大きなもので飲みましょう。かし鍋の底抜けが、つくりごんがの底 抜けが、しごろく六杯詰め込んで、ものを食らひれば鬼、仕事さひればミソ、相撲とら ひれば、えっくれかっくれにとりまけたとも喜んだが太夫殿の万歳。
 
 太夫 東方には、金蔵を建て、
 
 才三 西方には、酒蔵を建て、
 
 太夫 四方しまんに、御蔵ミクラを建て、
 
 才三 百万の長者とならせたまえ。
 
 太夫・才三 有りがたかりけり神力のさしえもあらたにおあします。おあします。サー テモ、タットキ日の本の、(太夫)イザナギ(才三)イザナミ スッペラポン おんみ わさとの始まりで、ににんのおん神なれば、初めて日本をとりたてたもう、その後は。
 
 才三 どうでも、四本にきわまった。
 
 太夫 違った。
 
 才三 四本と四本で八本だ。
 
 太夫 違った。
 
 才三 八本と八本で十六本。
 
 太夫 違ったでば。
 
 才三 十六本と十六本で六三十二本だ。それが嘘なら世間の人から聞いてもみろ、タ タタァの馬鹿太夫。何だけナ、理屈もなく人の頭ワッタミッチ、ワッタミッチと、たでぁ でぇ。
 
 太夫 俺が二本と言えばその方は、四本八本と言うではないか。
 
 才三 それでは、お前さんの二本は、どっから出てきた二本だかナ。
 
 太夫 これは、たいせつ二本だ。
 
 才三 ひば、神棚さでも上げてシャンと飾っておくものでがんしか。
 
 太夫 いや、そういうものではない。
 
 才三 ひば、長持ちの底さでもひで、ビンとしまっておくものでがんしか。
 
 太夫 いや、そういうものでもない。
 
 才三 ひば、どういうものだけな。
 
 太夫 この御代は神国なるをもって日の本と書いて日本と読む。
 
 才三 ヤアヤア、太夫さん、さんたら古くさいことだば、猫も杓子もみんなおべでら でがんしナ。
 
 太夫 では、その方の四本、八本はどこから出てきたがナ。
 
 才三 これは、ソロバンから出た四本、八本でがんす。一さんやってお目にかけまし ょうかナ。おらが親父は、ナンバンカクザエモンというて、シャンシャンの名人。パラ ッと払たぇ。ゴシカシ、ゴシカシ、ゴサンカサン、ゴサンカサン、むじなの十六、キャ ッペァ十二、シッテンガッテンバッテン。(鼓をたたく)
 
 太夫 何として、ソロバンにシッテンガッテンバッテンなんてあるもんでねぇナ。
 
 才三 ヤアヤアヤア、お前さんよくよくもののわからねぇ人だな。まず、こっち見て 足開いて立ってみてがんひ。俺の足が二本、お前さんの足が二本、二二が四って、四本 にきわまった。
 
 太夫 誰も、手足の制限なんどしていないヨ。
 
 才三 ほぅ太夫さん、手足の制限でなくしてしあわへこ、爪コねぇども中足コかでれ ば二人前で六本だおんなし。
 
 太夫 何として、万歳もあらあら成就つかまつり、四方に霞ととうとめて、何か珍し い話はないかナ。
 
 才三 さぁ、この頃さっぱり珍しい話コ忘れましたナ。
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