4401米ブク粟ブク
参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
昔のお話です。
ある処に、米ブクと粟ブクと云う二人の女の子が住んでいました。
米ブクは前の母の子で、粟ブクは今の母の子でした。
ある日、お祭りを見に行くことになりました。アッパ(母)は、米ブクにオボケ(竹
篭)にマルベ(マルメロ)の葉を敷いて、
「これで、風呂に水を汲んでおくように」
と言い付けて、粟ブクには綺麗な赤い着物を着せて、お祭りに連れて行きました。米ブ
クは、『私も行きたいなあ……』と思ったけれども、泣きながら水を汲み始めました。
けれども、オボケにマルベの葉を敷いたものでは、いくら水を汲んでも、風呂に一杯に
はならなかった。そうしていたら、隣のアッバがそれを見て、
「米ブクよ、何をしているの。お前だけお祭りに行かないでいるのか」
と訊きました。
「風呂に水を一杯汲んで、風呂を沸かしておかなくでは、アッパに怒られる(叱られる)
の。ですから、お祭りに行かれないの」
と、言いました。隣のアッパは、可哀相だと思って、米ブクの水汲みを手伝いました。
「米ぶくよ、早く一杯汲み終えて、お祭りに行こうね。オレと一緒に行こう」
と、隣のアッパは言いました。米ブクは嬉しくなって、隣のアッパから借りた手桶で、
水を一杯汲みました。すぐに風呂の水が一杯になったので米ブクは、隣のアッパに連れ
られて、お祭りに行きました。
米ブクが嬉しそうにお祭り見物をしているのを見た粟ブクは、
「アッパよ、米ブクが来ているよ」
と言いました。
「そのような筈はないよ」
とアッパが言いましたが、よく見たら、米ブクが来ていました。
隣のアッパとお祭りを見ていた米ブクは、一足先に帰って、風呂を沸かして、アッパ
と粟ブクの帰りを待っていました。
アッパと粟ブクは、お祭りから帰り、
「言い付けておいたことも、しないで……」
と怒りました。
米ブクは、
「水を汲んで、風呂も沸かしておいたので……」
と言いましたが、アッパは米ブクを大いに怒って、いじめたそうです。どっとはらぇ。
(大欠)
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