132 藤の花を屋敷内に植えない訳
 
                       参考:鹿角市発行「十和田の民俗」
 
 昔、昔ある所に、継母ママハハと義理の娘が居ました。継母は娘のことがうとましくて、
折をみて殺そうと思っていました。
 藤の花が綺麗に咲いた頃、継母は、崖縁に咲いた藤の花を取って来いと義理の娘に言
い付けました。娘は、継母の言うことをきかないと、怒られる(しかられる)ので、藤
の花を取りに行きました。
 
 その藤の花の咲いている所まで娘は来て、びっくりしました。ひどい崖で、落ちたら
命は無いような所でした。娘は『藤の花に手を伸ばすと死ぬな……』と思ったけれども、
継母の言いつけなので、思い切って手を伸ばし、藤の花を取ろうとしました。その時、
天から綺麗な紫色の雲が下りてきて娘を包み、救って呉れました。その紫の雲は、紀
伊の国のお寺まで娘を運び、助けて呉れたと云うことです。
 
 そのとき以来、藤の花は美しい花だが、人の命を奪おうとしたことに利用された花な
ので、仏様に手向けたり、個人の屋敷内に植えてはならないと、言われたと云う。(大
湯)
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