5502ドホ、ドホ雪
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 ある年の田植えどきでした。
 左多六さまは、ケラ(蓑ミノ)を着て、モンパ(吹雪除け帽子)を被り、カンジキを背
負って、ツマゴ(わらぐつ)を履いて、八幡平の山へ狩りに行くところでした。
 その時、柴内シバナイの辺りでは、村中でみんなが集まって、田植えをしていました。
 へんてこな格好カッコウをして歩いている左多六さまの姿を見て、
「何処ドコの馬鹿だか知らないが、今頃ケラを着て、カンジキを背負って、何処へ行くの
だろう。あの馬鹿を見れ。馬鹿を見れ」
と言って、みんなして大きな声を出して、
「アッハハー、アッハハー」
と笑いました。
 あまりに人を馬鹿していると怒った左多六さまは、山へ行くのを止めて、
「馬鹿だかどうか、今に見てろ」
と言って、みんな田植えしている処へ行って、カンジキを逆さに履いて、歩いて見せま
した。
 そうしたら、村の人達は、
「アハハハ・・・、アハハハ・・・、ひどい馬鹿も居るもんだ」
と言って、笑いが止まりませんでした。ますます怒った左多六さまは、
「この阿呆ども、今、見てろ」
と言って、呪文を唱えました。
 そうしたら、今まで晴れていた空が急に真暗マックラになって、寒い風が吹いて来たかと
思ったら、空から大きなボタ雪がドホドホと降って来て、忽タチマち雪が一尺も積もりまし
た。田植えをしていた柴内の人達は寒くなって、恐ろしくなり、気持ちも悪くなって尻
卷くって家に逃げて来て、
「大したおっかない人もいるもんだ。今度からは辛口カラクチ(非難すること)は利キかない
」
と驚きました。

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