208a 遊戯考[放鷹・蹴鞠・打毬・竹馬・独楽・紙鳶・鞦韆・印地・競渡・花火]
 
[蹴鞠ケマリ・シウキク(クエマリ・マリコユ)]
蹴鞠は、即ち鞠を蹴て以て戯とするものにして、人数は八人を以て限とし、其の之を行
ふ場所には砂を敷き、四方に柳、桜、松、楓等の樹を植う、之を懸りと称す。
此技は、我国にては、皇極天皇の朝、皇太子大兄(天智天皇)、中臣鎌子(藤原鎌足)
等と行ひ給ひし事あり。
蹴鞠始て此に見ゆ(或は云ふ、用命天皇の朝に厩戸皇子蹴鞠を為せりと)。
此技延喜以降、専ら宮禁貴戚の間に行はれ、名人亦随て輩出す。
藤原成通あり、技芸絶妙、著す所口伝一巻あり。
此に至て蹴鞠益々盛んに、法式亦大に備はる。
終に後世詠歌と併せて之を両道と称するに至れり。
 
なれなれてみしは名残の春ぞとも などしら河の花の下かげ
                    (新古今和歌集 十六雑 藤原雅経朝臣)
 
桜さくほどはのきばの梅の花 もみぢまつこそひさしかりけれ(沙石集 七)
 
花のうへにしばしとまるとみゆれども こづたふ枝に散桜かな(弁内侍)
思ひあまり心にかゝる夕くれの 花の名残も有とこそきけ(少将内侍)
散はなをあまりや風の吹つらん 春のこゝろはのどかなれども(弁内侍)
                              (弁内侍日記 上)
 
吹かぜもおさまりにける君が代の 千とせの数は今日ぞかぞふる
御返し
かぎりなきちよのあまりのありかずは けふかぞふとも尽じとぞ思(弁内侍)
                              (弁内侍日記 下)
 
七夕鞠
久方の天津空まで揚げまりも あひあふ星やけふはうくらん
                       都林泉名勝図会 一 閑田子蒿蹊)
 
流派
たえ行は神もあはれとみたらしや しめの外なる流ならねば(隣女和歌集 四雑)
 
鞠
しほがまやかはらの院の鞠かたの まろき月をうつす成けり
毛がはりをとりあはせたる鞠かはの 思もあはぬ人に恋つゝ(七十一番歌合 中)
 
装束
紫の数には入れど染残す 葛の袴のうらみてぞ著る(耳嚢 五)
 
禄
桜花ちりしく庭をはらはねば きえせぬゆきと成にける哉(詞花和歌集 一春 摂津)
 
[打毬マリウチ・ダキウ]
其の法、騎馬の人数を両班に分ち、庭上に各班に属する毬子を置き、馬上毬杖を持て所
属の毬子を掬スクひ、相争ひて毬門に投じ、早く投入し終りたるものを以て勝とするなり。

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