39a 短歌文法「形容動詞」
 
さだか(定か) (ナリ活)はっきりしている様。確か。明らか。例「さだかならぬ希
 望ノゾミに似たるおもひにて・・」「何処とはさだかにわかねわがこころ・・」
 
さや-か (ナリ活)@はっきりしている様。例「うら恋しさやかに恋とならぬまに・・」
 Aくっきりと澄んで見える様。例「爽やかなる夏のはじめにさきいづる(うす紫の馬
 鈴薯の花)」「昨日の夜の睡りは足りてさやかなる・・」
 B音声が澄んでよく聞こえる様。例「・・流るる水の音さやかなり」
 
さん-さん (タリ活)@涙をさめざめと流す様子。
 A雨の降る様子。例「さいはひに君きたる夜をさんさんと(早春の雨)」
 
さん-さん(燦燦) (タリ活)光などが鮮やかに煌キラめく様子。例「さんさんと光降り
 ゐて静かなり・・」
 
したたか (ナリ活)@非常に強い様。
 Aしっかりした様。
 B程度の甚だしい様。例「(・・沓トホき日の)したたかに熱き父のてのひら」
 C多い様。沢山。充分。たっぷり。例「深梅雨フカヅユは夜をしたたかにふるさとの(従
 兄弟の家を・・)」「したたかに軒に掛け干す蒟蒻コンニャクだま・・」「・・厨クリヤの水をした
 たかに飲む」
 
しづか(静か・閑か) (ナリ活)@落ち着いている様。ひっそりとした様。例「・・し
 づかなるかなや火を濡らす雨」「(竹群の揺れひそかなり独りなる)わが終焉もかく
 静かなれ」
 A平穏な様。穏やかな様。例「・・山脈ヤマナミはれて湖ウミしづかなり」「心静かに鍼ハリを
 うつとき二階より・・」
 B大人しい様。
 
しづ-やか(静やか) (ナリ活)@ひっそりと静かな様。例「ふる雨のしずやかなれば
 今日もかも・・」
 A穏やかでゆったりした様。例「しづやかに光の雨のふりそゝぐ・・」
 
しどろ (ナリ活)秩序なく乱れて,整わない様。例「・・つくつくし(土筆のこと)し
 どろに老いてそよぎゐるかも」「(・・行く春)しどろに草の花活けにけり」「紫木蓮
 シモクレンしどろに闌タけぬかかるひと・・」
 
しめやか (ナリ活)@大きな音を立てず,もの静かな様。例「しめやかに雨過ぎしか
 ば市の灯は・・」
 A静かで悲しげな様。しみじみ。しんみり。例「しめやかに思ひあまれる息をして・・
 」
 
しん-しん (タリ活)@静かに夜の更ける様。ひっそりと。例「死に近き母に添寝ソヒネ
 のしんしんと(遠田のかはづ天に聞ゆる)」「しんしんと雪の降る夜に・・」
 A身に深く染みる様。しみじみと。例「倒れふすわれの身体カラダにしんしんと・・」
 B寒さが身に凍む様。
 
すこ-やか(健やか) (ナリ活)病気をせず,丈夫で健康な様。「すくやか」「すくよ
 か」とも。例「・・まことすこやかになりなむものを」「すこやかに今日を在りつつ
 いたはりて・・」
 
すずろ(漫ろ) (ナリ活)@何となく心がそちらに動いて行く様。漫然。はっきりし
 た理由・目的もない様。例「(・・わが心)何かそぞろなり夜の浪おと」「(暮れゆく
 山・・)そぞろに我の尊くおぼゆる」
 A結果を考えずに事をする様。やたらに。思うような結果にならない様。何とも辛い
 様。例「去らむ日の韻ヒビキすずろぞ引継を終へし机に(鍵のおと)」「・・秋よ三人ミタリ
 よ人そぞろなりし」
 「そぞろ」とも。
 
たま-さか(偶) (ナリ活)@思い掛けない様。偶然。
 A稀であること。偶々タマタマ。時々。例「吹きわたる松の嵐はたまさかに(古葉を散ら
 す・・)」「風もなき堤の薄ススキたまさかに(動く・・)」
 B万一のこと。
 
たゆら (ナリ活)ゆらゆらと定まらない様。例「・・たゆらにゆらぐ藻草のなびき」
 
たわ-わ(撓) (ナリ活)撓み,撓シナう程である様。「たわ」「たわたわ」とも。例「
 山萩の花たわわにて触れつつは・・」「たわたわに蕾ばかりが垂れゐつつ(山百合)」
 「去年七つ今年はたわわなる柿や・・」
 
だん-だん(団団) (タリ活)@月などの丸い様。
 A露などが多く集まっている様。例「団団と花ながれたりみづうみへ・・」
 
つばら(委曲・詳ら) (ナリ活)こと細かなこと。詳しいこと。入念。「つばらか」
 とも。例「(梅林月のひかりのさし入れば)花は霰に似てつばらなり」「つばらに妻
 よ見ておけ農に生まれ農に終りし・・」「・・玻璃戸ハリド(ガラス戸のこと)に遠しさや
 につばらに」「つばらかに冬木に動く小禽が・・」
 
つぶら(円) (ナリ活)小さくて,丸くふっくらとしていること。「つぶらか」「つ
 ぶらつぶら」とも。例「・・つぶらに涼し犬のまなこは」「・・雹ヒョウはのこれりつぶらつ
 ぶらに」「・・生死イキシニの彼岸を言へばつぶらなる瞳は」
 
とどろ(轟) (ナリ活)音がどうどうと鳴り響く様。例「・・煙うづまく音もとどろに
 」
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