24 植物を詠める和歌[草/稲〜茅〜慈姑ヲモダカ]
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△草総載
吾が勢子は借廬カリイホ作らす草カヤ無くば 小松下コマツガモトの草クサを苅らさね
(古事記伝 五(万葉一))
板蓋イタブキの 黒木の屋根は 山近し 明日アケムヒ取りて 持ちて参来む 黒樹クロギ取り
草カヤも刈りつゝ 仕へめど 勤しきわけと 誉むともあらず(同(万葉四))
はたすすき尾花さかふき黒木もて 造れる家は万世までに(同(万葉八))
△稲イネ・トミクサ・水陰草・水懸草・秋待草・いなむしろ・袖の子稲・ひつぢ
秋の田のいねてふこともかけなくに なにをうしとか人のかるらん
(古今和歌集 十五恋 そせい法し)
打むれて高倉山につむものは あらたなる世のとみくさのはな
(倭訓栞 前編十八登(詞花集))
打むれてたかくら山につむ物は あらたなるよのとみ草のはな
(詞花和歌集 十雑 藤原家経朝臣)
天川水陰草の秋風に なびくをみれば時はきにけり(詞林采葉抄 九)
とくうへて吾田の面に秋まちて 水かけ草ぞ苅しほとなる
(蔵玉和歌集 夏 天智天皇)
天河水かけ草にをく露や あかぬわかれの涙なるらん
(新勅撰和歌集 四秋 藤原清輔朝臣)
水かけて秋まつ草のよなよなに 露とみゆるはもしほたるかも
(蔵玉和歌集 夏 基俊)
夕露のたましくを田のいなむしろ かへすほずゑに月ぞやどれる
(夫木和歌抄 十二秋田 西行上人)
いなむしろしくや門田の秋風に 民のみつぎをいそぐ比かな(同 中原師光朝臣)
おぼつかなたが袖のこにひきかさね ほうしごのいねかへしそめけん
(散木葉歌集 三秋)
うぢ山のすそのゝの小田の苗代に いくらかまきし袖の子の種
(松屋筆記 七十四(丹後守為忠家初度百首))
秋の田を吹くる風のかうばしみ こや袖のこるにほひなるらん
(同 花山院御製(夫木和歌抄 秋三))
さよ衣たちのゝひだに耳なれて 袖のこなたにすがるなく也(同(家集如覚法師))
山里はいでいこのへるたもとごに 風そよめきて袖しぼるなり(散木葉歌集 三秋)
きのふみし法し子のいねよのほどに みそうづまでになりにけるかな
(古今著聞集 十八飲食 俊頼朝臣)
をとめらが行き相ひの速稲ワセを刈る時に 成りにけらしも芽子ハギの花咲く
(萬葉集 十秋雑歌)
ゆきあひのさかのふもとにひらけたる さくらのはなを見せんこもがな
(袖中抄 十九(萬葉集))
橘を守部モリベの五十イヘの門田早稲 苅る時過ぎぬこじとすらしも(萬葉集 十秋相聞)
にほどりのかづしかわせをにへすとも そのかなしきをとにたてめやも
(萬葉集 十四東歌)
我まもるなかての稲ものきは落て むらむらほさき出にけらしも(曽根好忠集)
み山田のおくての稲をかりほして まもるかりほにいく夜へぬらし(躬恒集)
あしげなるおくての稲をまもるまに 萩の盛は過やしぬらん(曽根好忠集)
かれる田におふるひつぢのほに出ぬは よを今更に秋はてぬとか
(古今和歌集 五秋 よみ人しらず)
あけくらしまもるたのみをからせつゝ たもとそほづの身とぞ成ぬる
返し
心もておふる山田のひつぢぼは きみまもらねどかる人もなし
(以上、後撰和歌集 五秋 よみ人しらず)
我宿の門田のわせのひつぢぼを みるにつけてもおやの恋しき(曽根好忠集)
なづきの たのいながらに いながらに はひもとほろふ ところづら
(古事記 中景行)
鴫のふすかり田にたてる稲ぐきの いなとは人のいはずもあらなん
(後拾遺和歌集 十一恋 藤原顕季朝臣)
あさなあさな霜をく山のをかべなる 苅田の面にかゝるいなぐき
(新葉和歌集 六冬 前中納言為忠)
風わたるの田のはつほのうちなびき そよぐにつけて秋ぞしらるゝ
(夫木和歌抄 十二秋田 民部卿為家)
いろいろにかど田のいなぼふきみだる 風におどろくむらすゞめ哉(同 民部卿範光)
△米
池をはりこめたる水のおほかれば いひのくちよりあまるなるべし
(拾遺和歌集 七物名 すけみ)
山陰や木の下やみのくろ米の 月出てこそしらげ初けれ
恋せじと神の御前にぬかづきて さんくの米の打はらふ哉(以上、七十一番歌合 中)
[次へ進んで下さい]