19d 歌合・歌会に関わる和歌
ぬま
引すつる岩がきぬまの菖蒲草 おもひしらずもけふにあふかな
(後拾遺和歌集 十五雑)
しぐれ
しぐれつゝかつちる山のもみぢ葉を いかにふくよのあらしなるらん
(金葉和歌集 四冬 修理大夫顕季)
左 山葉緋ヤマノハノアケ
ほのぼのと山のはのあけ走りいでゝ 木の下蔭を見てもゆかなん
右 木下鹿毛コノシタカゲ
山のはのあけて朝日のいづるには 先木の下のかげぞさきだつ(源順馬名合)
足はらのつるぶち馬
雲間よりとぶあしはらのつるぶちに なにはのあしげおひつかんやは
しらいとのくりげ
白糸のくりげひきいでゝみるからに ふすあさぢふのとらげなりけり
(夫木和歌抄 二十七雑)
あまのつむいそな草
すまの延(延冠+虫)アマの朝夕つめるいそな草 けふかちむちはなみぞうちける
(夫木和歌抄 二十八雑)
△非類歌合
左
あまつ空かきたつくもゝ心して 月にさはらぬよその村雨(龍)
右
里のいぬの月みる秋のよはだにも ほしまもるとや人の思はむ(犬)(十二類歌合)
左 虫
片糸のよるにもなればかうろぎの 心ぼそくもなきあかすかな(かうろぎ)
右
秋の野の千種おしなみふく風に にほひ乱るゝ露の玉虫(玉むし)
(輪池叢書 三十七)
△調度歌合
左 恋
しらせばやくる宵ごとに灯火の 明石の浦にもえわたるとも(とうだい)
右
埋火のしたに焦るゝかひもなく ちりはひとのみ立うきな哉(すびつ)(調度歌合)
△雑載
霰ふるかたのゝみのゝかりごろも ぬれぬやどかすひとしなければ(公実卿)
ぬれぬれもなをかりゆかんはしだかの うはげの雪をうちはらひつゝ(道済)
(袋草紙 三)
我ことはえもいはしろのむすび松 千年をふとも誰かとくべき
おくていねの今は早苗とおひ立て 待てふるねもあらじとぞ思
(小野宮右衛門督家歌合)
春曙
春の夜の夢のうきはしとだえして 峯にわかるゝよこ雲の空(定家)
湖上朝霞
あさぼらけみるめなきさのやへがすみ ゑやはふきとくしがのうらかぜ(同)
(兼載雑談)
[歌会ウタノクハイ]
△月次歌会
敷島の道のすさびにひろひくふ ことばの園の豆にも有哉(尭孝法印日記)
深夜閑月
いたづらにふけゆく空のかげなれや ひとりながむるあきのよの月(徹書記物語 上)
△中殿歌会
時しらば花もときはの色にさけ わが九重のよろづ代の春(増鏡 十五村時雨)
△法楽歌会
あひかたきみのりの花はみな人の さとりひらくるたねにぞありける
いづるよりよろづ八千さとてらすにぞ すぐれて清き月ぞともしる(藤原朝臣家平)
おのづからまよふ心のさめぬれば あだなるゆめの世こそつねなれ(藤原朝臣道平)
(今出川内相府記)
ちりのみをしづめんとてや大黒の 心をちゞにわけていたれる(親長卿記)
△影供歌会
ほのぼのとあかしの浦の朝ぎりに 島がくれゆく舟をしぞおもふ
(古今著聞集 五和歌)
△探題
露
我ならぬ草葉も物は思ひけり 袖より外に置ける白露
(後撰和歌集 十八雑四 藤原忠国)
時雨
神無月しぐるゝまゝにくらぶやま したてるばかり紅葉しにけり
(金葉和歌集 四冬 源師賢朝臣)
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