14a 和歌のいろいろ
△短歌
おきつもは へにはよれども さねとこも あたはぬかもよ はまつちどりよ
(日本書紀 二神代)
あしはらの しけこきをやに すがたゝみ いやさやしきて わがふたりねし
(古事記 中神武)
△長歌短歌之別
例題歌無し
△旋頭歌センドウカ
ますかゞみ底なる影にむかひゐて みる時にこそしらぬ翁にあふ心ちすれ
かの岡に草かるおのこしかなかり そねありつゝも君がきまさむ御まくさにせむ
うちわたすをちかた人に物申す われそのそこにしろくさけるはなにの花ぞも
(悦目抄)
あたらしきゐなへのたくみかけしすみ なはしがなけばたれかかけむよあたらすみなは
(日本書紀 十四雄略)
白玉は人に知らえず知らずともよし 知らずとも吾れし知れらば知らずともよし
(萬葉集 六雑歌)
春日なる三笠の山に月も出でぬかも さき山にさける桜の花の見ゆべく
(萬葉集 十春雑歌)
み芳野ヨシヌの滝もとゞろに落つる白浪とまりにし 妹に見せまく欲しき白浪
(萬葉集 十三雑歌)
芽ハギが花を花葛花なでしこの花 をみなべしまた藤袴朝貌アサガホの花
(萬葉集 八秋雑歌)
新室ニヒムロの壁草苅りにおはし給はね草のごと よりあふをとめはきみがまにまに
(萬葉集 十一)
うちわたすをちかた人に物語まうす われそのそこにしろくさけるはなにの花ぞも
返し
春されば野べにまづさくみれどあかぬ 花まひなしにたゞなのるべき花の名なれや
(古今和歌集 十九雑体 読人しらず)
初瀬川古川のべにふたもとある杉 年をへて又もあひ見ん二もとある杉 (同)
ます鏡そこなるかげにむかひゐて見る時にこそ しらぬ翁にあふ心ちすれ
(拾遺和歌集 九雑)
みどり子とおもひし人もおいぬとて そむく世をみるかなしさは夢かうつゝか
返し
ありてなき夢もうつゝもたれにかく とはれましきみが見る世にそむかざりせば
(続千載和歌集 七雑体 皇太后宮大夫俊成)
△混本歌コンポンカ
朝顔の夕かぜまたずちりやすき 花の名ぞかし
岩のうへにねざす松が枝とのみ思ふ 心は有物を (悦目抄)
△双本歌
しらくものたなびくやまは見れどあかぬかも
たつならばあさとびこえてゆふべこましを(奥義抄 上ノ上 大神高市万呂卿)
△片歌
やまとの たかさじぬを なゝゆく をとめども たれをしまかむ
答歌
かつがつも いやさきだてる えをしまかむ
歌曰
あめつゝ ちどりましとゝ などさけるとめ
答歌
をとめに たゞにあはむと わがさけるとめ(古事記 中神武)
はしけやし わぎへのかたよ くもゐたちくも(古事記 中景行 倭建命)
△折句歌ヲリクノウタ
(ことたまへ/ことはなし)
こコとのはも とトきはなるをと たタのまなん まマつはみよかし へヘてはちるやと
かへし
こコとのはゝ とトこなつかしみ はハなをると なナべての人に しシらすなよゆめ
(悦目抄 小野小町)
(かきつばた)
かカら衣 きキつゝなれにし つツましあれば はハるばるきぬる たタびをしぞ思ふ
(古今和歌集 九羇羇 在原業平朝臣)
(をみなへし)
をヲゝぬきて みミるよしもがな なナがらへて へヘぬやと秋の しシら露の玉
をヲりつれば みミて秋の日は なナぐさめつ へヘてこの花を しシらせずもがな
(躬恒集)
(をみなへし)
をヲぐら山 みミね立ならし なナく鹿の へヘにけむ秋を しシる人ぞなき
(古今和歌集 十物名 つらゆき)
(うししはし/うしはかす)
うウらむとは しシらでやしかの しシきりには はハぎのはひえを しシがらみにする
(新拾遺和歌集 二十雑 俊頼朝臣)
返し
うウらめしと しシかをないひそ はハぎがえも かカるもにしつゝ すスぐすとぞみる
(同 藤原仲実朝臣)
(くしうくも(九十くも))
くクるゝよは しシのゝは草の うウは葉まで くクだくる露の もモるしぐれかな
(弁内侍日記 上 大納言殿)
くクもの上や しシるきみ垣の うウちにのみ くクるゝよすがら もモるや殿守
(同 少将内侍)
くクれ竹の しシもおく夜半の うウは風に くクもらぬ月の もモるをみる哉
(同 弁内侍)
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