10a  百人一首
 
[古今集]清原深養父フカヤブ
36夏の夜はまだ宵ヨヒながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ
 
[後撰集]文屋朝康フンヤノアサヤス
37しら露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける
 
[拾遺集]右近
38忘らるる身をば思はずちかひてし人の命のをしくもあるかな
 
[後撰集]参議等ヒトシ
39あさぢふのをのの篠原シノハラ忍ぶれどあまりてなどか人の恋しき
 
[拾遺集]平兼盛カネモリ
40忍ぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで
 
[拾遺集]壬生忠見ミブノタダミ
41恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
 
[後拾遺集]清原元輔モトスケ
42ちぎりきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは
 
[拾遺集]権中納言敦忠アツタダ
43あひみての後ノチの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり
 
[拾遺集]中納言朝忠
44あふことのたえてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし
 
[拾遺集]謙徳公ケントクコウ
45あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
 
[新古今集]曽禰好忠ソネノヨシタダ
46由良のとを渡る舟人フナビトかぢをたえ行くへも知らぬ恋のみちかな
 
[拾遺集]恵慶エギョウ法師
47八重葎ムグラしげれる宿の淋しさに人こそ見えね秋は来にけり
 
[詞花集]源重之シゲユキ
48風をいたみ岩うつ浪のおのれのみくだけて物を思ふころかな
 
[詞花集]大中臣能宣朝臣オオカナトミノヨシノアソン
49みかきもり衛士ヱジのたく火の夜ヨルはもえ昼はきえつつ物をこそ思へ
 
[後拾遺集]藤原義孝ヨシタカ
50君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな
 
[後拾遺集]藤原実方サネカタ朝臣
51かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじなもゆる思ひを
 
[後拾遺集]藤原道信朝臣
52あけぬれば暮るるものとは知りながら猶恨めしき朝ぼらけかな
 
[拾遺集]右大将道綱母ミチツナノハハ
53歎きつつひとりぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る
 
[新古今集]儀同三司母ギドウサンシノハハ
54忘れじのゆく末まではかたければけふを限りの命ともがな
 
[拾遺集]藤原公任キントウ
55瀧の音オトはたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞えけれ
 
[後拾遺集]和泉式部
56あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびのあふこともがな
 
[新古今集]紫式部
57めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半ヨハの月かな
 
[後拾遺集]大弐三位ダイニノサンミ
58ありま山ゐなの笹原風ふけばいでそよ人を忘れやはする
 
[後拾遺集]赤染衛門アカソメエモン
59やすらはで寝なましものを小夜サヨふけてかたぶくまでの月を見しかな
 
[金葉集]小式部内侍コシキブノナイシ
60大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天アマの橋立ハシダテ
 
[詞花集]伊勢大輔イセノタユウ
61いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
 
[後拾遺集]清少納言
62夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂アフサカの関はゆるさじ
 
[後拾遺集]左京大夫道雅ミチマサ
63今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな
 
[千載集]権中納言定頼
64朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木アジロギ
 
[後拾遺集]相模サガミ
65恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋にくちなむ名こそ惜しけれ
 
[後拾遺集・金葉集]前サキノ大僧正行尊ギョウソン
66もろともにあはれと思へ山櫻花よりほかに知る人もなし
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