04 昭和天皇御製1
 
 昭和三十七年
 
 「土」
*武蔵野の草のさまざまわが庭の 土やはらげておほしたてきつ
 
 「日本遺族会創立十五周年」
 年あまたへにけるけふものこされし うから思へばむねせまりくる
 
 「傷痍軍人のうへを思ひて」
 年あまたへにけるけふも国のため 手きずおひたるますらをを思ふ
 
 「遺族のうへを思ひて」
 国のためたふれし人の魂タマをしも つねなぐさめよあかるく生きて
 
 (福井県植樹祭)
 遠山に霞にくもる女形谷ヲナガダニ諸人とともに松の苗植う
 
 「長良川の鵜飼」
 篝火をたきつつくだる舟ぞひに 鵜は川波にたくみにくぐる
 
 「前同」
 長良川鵜飼の夜を川千鳥 河鹿の声の近くきこゆる
 
 (和歌山県巡行)
 雨にけぶる神島を見て紀伊キの国の 生みし南方熊楠をおもふ
 
 「日光小田代ケ原 二首」
 いく代へしから松林なほき幹の ひまにまじりて白樺の立つ
 
 「前同」
 から松の森のこずゑをぬきいでて 晴れたる空に男体そびゆ
 
 「桃山御陵 三首」
 陵ミササギも五十の年をへたるなり 祖父オホヂのみこころの忘れかねつも
 
 「前同」
 五十をばへにける年にまのあたり 国のさま見ていにしへおもふ
 
 「前同」
 桃山に参りしあさけつくづくと その御代を思ひむねせまりくる
 
 (新潟県沖地震)
 地震(ナヰ)にゆられ火に焼かれても越コシの民 よく堪へてここに立直りたり

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