「或る人問う」 「和歌と俳句と魔字句(majiku,majikku)と」とは何か。 「我は想う」 わか【和歌・倭歌】とは @漢詩に対して、上代から日本に行われた定型の歌。長歌・短歌・旋頭歌セドウカ・片歌などの総称。狭義には31音を定型とする短歌。奈良時代には「倭歌」と書き、また「倭詩」といった。うた。やまとうた。みそひともじ。 A和する歌。かえしうた。奈良時代に「和歌」と書くのはすべてこの意。 B詞章が@と同形式の31音を原則とする、舞の際の謡い物の総称。また、謡曲で舞の前後にかけて謡われる謡の一節。延年の「若」と関係づける説もあるが、未詳。 C歌舞伎囃子の一。時代物の大詰めに用いたが、廃絶。 たんか【短歌】とは 和歌の一体。長歌に対して、五・七・五・七・七の五句体の歌。記紀歌謡末期・万葉集初期の作品に成立、古今を通じ最も広く行われ、和歌といえば短歌を指すに至った。みじかうた。 はいく【俳句】とは @俳諧ハイカイの句。こっけいな句。 A五・七・五の17音を定型とする短い詩。連歌の発句ホックの形式を継承したもので、季題や切字キレジをよみ込むのをならいとする。明治中期、正岡子規の俳諧革新運動以後に広まった呼称であるが、江戸時代以前の俳諧の発句を含めて呼ぶこともある。短歌と共に日本の短詩型文学の二潮流。定型・季題を否定する主張もある。 はいかい【俳諧・誹諧】とは @おどけ。たわむれ。滑稽。 A俳諧歌の略。 B「俳諧の連歌」の略。 C俳句(発句)・連句の総称。広義には俳文・俳論を含めた俳文学全般を指す。 せんりゅう【川柳】とは (川柳点の略から) 前句付から独立した17字の短詩。江戸中期、明和ごろから隆盛。発句とは違って、切れ字・季節などの制約がない。多く口語を用い、人情・風俗、人生の弱点、世態の欠陥等をうがち、簡潔・滑稽・機知・諷刺・奇警が特色。江戸末期のものは低俗に堕し、狂句と呼ばれた。 (以上、広辞苑による) このように、和歌(=短歌)は、昔から日本人に親しまれてきた詩文である。そして和歌は、自分の想いを三十一文字を以って完全かつ簡潔に表現すると云う、最も字数の少ない、そして最も合理的な詩文である。 一方、俳句は「滑稽」を旨とするものとして発達したもので、今なお、この「滑稽」の枠を越え得れないことが分かる。この十七文字と云う最短文字による詩文は、日本語としては、自分の想いを完全に表現することは不可能である。そのため、季語(=季題)や切字でこの欠陥を補っているのである。 また俳句は、例えば季語を取り去ってしまうと、自ずから川柳に収斂されてしまうのである。 俳句や和歌について、 @作られるべき詩文が、五・七・五の三句体(17音)の基本定型の基準を逸すれば、最早それは「俳句」とは呼ばれないと思わざるを得ない。 A作られるべき詩文が、五・七・五・七・七の五句体(31音)の基本定型の基準を意識的に逸脱したものであれば、それは「和歌」と呼ぶことを差し控えたい。 従って、俳句や和歌を作るときは、基本定型の基準を出来るだけ守るよう心がけたい。 基本定型の基準を逸脱した詩文は、真に「魔字句(majiku,majikku)」と呼ぶに相応しいからである。 |
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