苦あれば楽あり、楽あれば苦あり。
解釈:人生の苦楽は、繰り返されるものであるから、悲観せず油断せず努力
せよ。
類義:浮世の苦楽は、壁一重(ひとえ)。苦あれば、楽あり。
株(くいぜ)を守りて兎を待つ。
解釈:昔のやり方にこだわって、新しい方法を考えられない者のこと。融通
がきかないことのたとえ。中国宋(そう)の農夫が切り株で首を折った兎を捕
まえて以来、また兎を捕ろうと株の番をして、国中の笑い者になったという故
事による。
類義:株を守りて兎を待つ。
食いつく犬は吠えつかぬ。
解釈:真に力のある者は、無闇に相手を威嚇せず黙っているものだ。
類義:空樽(あきだる)は音が高い。浅瀬に仇浪(あだなみ)。吠え付く犬
は噛み付かぬ。
食い物と念仏は一口ずつ。
解釈:食べ物は一口ずつでも家族と分け合って食べた方がよく、念仏も一口
ずつでも皆に唱えてもらった方がよい。
類義:後生(ごしょう)と念仏は一口が肝腎(かんじん)。念仏と食い物は
一口が大事。
食い物のあるのに鉄砲汁。
解釈:いかもの食いを嘲(あざけ)る言葉。他に食べ物があるのに、わざわ
ざ鉄砲汁(河豚鍋)を食べなくともよさそうなものだ。
参考:川柳に「河豚汁や鯛もあるのに無分別」とある。
空谷(くうこく)の跫音(きょうおん)。
解釈:侘しく暮らしているときに、人が訪ねてくれること。また、嬉しい便
りのこと。「空谷」は人の住んでいない谷、「跫音」は人の足音。
類義:空谷の足音(そくいん)。
食うことは今日食い、言うことは明日言え。
解釈:食べ物は味の変わらないうちに早く食べた方がよい。話はゆっくり考
えた末にするのがよい。
食うた餅より、心持ち。
解釈:貰った物も嬉しいが、持ってきてくれた気持が、なお嬉しいという意。
類義:米の飯より思召し。食べた餅より心持ち。搗いた餅より心持ち。
空中楼閣(くうちゅうろうかく)。
解釈:根拠がなく現実性のない空想のこと。空中に築く楼閣にたとえている。
食うに倒れず、病むに倒れる。
解釈:普段食べていく分にはそれほど金はかからないが、医療費は非常にか
さむから、つぶれるむ者は多いということ。
類義:飲むに減らで、喫(す)うに減る。
食おうとて痩せる。
解釈:本来、痩せないために食うものなのに、食うために苦労して痩せると
いう意。
類義:口に使われる。口ゆえに使われる。
九月納豆は何より有り難い。
解釈:手間いらずの納豆は、九月に入ると一層味もよくなり、農繁期に入っ
た忙しい人々に大変喜ばれる。
釘の裏を返す。
解釈:間違いのないように、更に念押しをすること。打ち付けた釘の裏に出
た先を曲げて叩いておくとなお強固になるところから。
類義:釘の穂を返す。釘を刺す。言葉に釘を刺す。念の折釘打ち返す。
釘の曲がりは鉄槌(かなづち)で直せ。
解釈:悪い癖を直すには、厳しい方法でなければならない。また、強い者
には強いやり方で対せよという意。
釘を刺す。
類義:釘の裏を返す。
公卿(くげ)にもつづれ。
解釈:身分の高い者も、貧しい身なりをすると卑しく見えるものだ。
類義:君、飾らざれば、臣、敬わず。姿は作り物。
反義:馬子にも衣装。
公卿の位倒れ。
解釈:位ばかり高くて経済的には苦しいことのたとえ。
類義:公卿の位負け。
公卿の位負け。
類義:公卿の位倒れ。
愚公、山を移す。
解釈:愚かな者でも弛まず努力すれば、必ず成功することのたとえ。昔、中
国の愚公という老人が、家の前の山を他へ動かそうと、土を運び始めた。人々
が止めようとすると、愚公は、孫や曾孫の代までかかれば山は移せるだろうと
答えた。そこで、愚公の意気に感じた天帝が山を他へ移し、平らにしたという
故事による。
臭い物に蝿集る(たかる)。
解釈:悪い者には悪い仲間が集まることのたとえ。
類義:油樽(あぶらだる)に犬が付く。腐った物に虫が湧く。臭肉(しゅう
にく)蝿を来す(きたす)。
臭い物に蓋。
解釈:内部の不正や、人に知られたくない事実を、一時凌ぎに取り繕って隠
すこと。
類義:臭き物には蓋をする。
反義:膿(う)んだものは潰せ。
臭い物、身知らず。
解釈:自分の欠点は自分では中々気づかぬものだ。自分の臭さは、自分では
分らないように。
類義:息の臭きは、主知らず。我が糞は臭くなし。
草木も眠る丑三つ時(うしみつどき)。
解釈:真夜中の二時から二時半のこと。人や動物は元より、草木も眠ってい
ると思われるほど、夜の更けた森閑とした頃。
腐っても鯛。
解釈:元がよい物は、傷んでも、落ちぶれても、それだけの価値はある。た
とえ腐ったとしても鯛は魚の王であるという意から。
類義:大鍋の底は撫でても三杯。腐っても鯛の骨。沈丁花(じんちょうげ)
は枯れても香(かんば)し。ちぎれても錦。古川に水絶えず。襤褸(ぼろ)で
も八丈。敗れても小袖。
反義:麒麟も老いては駑馬(どば)に劣る。
楔(くさび)を以て楔を抜く。
解釈:何事も理に適った正しい方法でしなければ効果がないことのたとえ。
楔を抜くには、その傍に他の楔を打ち込んで、根元を緩めてから抜くことから。
類義:人(にん)を見て法を説け。
腐り縄に馬繋ぐ。
解釈:当てにならないことのたとえ。
類義:朽索(きゅうさく)の六馬を馭(ぎょ)する如し。腐り縄で荒馬を扱
う。朽縄に取り付く如し。蒟蒻(こんにゃく)の楯を突いたよう。蓮(はす)
の糸で大石を釣る。
反義:腐り縄にも取りどころ。腐り縄も用に立つ。
腐れ縁は離れず。
解釈:悪縁を切ることは中々難しい。
類義:悪縁契り深し。業縁(ごうえん)腐れ縁。
草を打って、蛇を驚かす。
解釈:何気なくしたことが、思いがけない結果を生むことのたとえ。また、
一人を懲らしめることによって、関係する一同を戒めること。
類義:草を打って蛇を出し、毛を吹いて疵(きず)を求む。藪を突(つつ)
いて、蛇を出す。
草を結ぶ。
解釈:死後に恩を返すこと。中国晋(しん)の魏顆(ぎか)は父の死後、父
の妾を殉死から免除して他家に嫁がせた。後に晋が秦(しん)と戦った折に、
その妾の父の亡霊が草を結んで秦の勇将を躓かせ、魏顆がこれを討ち取って手
柄を挙げたという故事による。また、茅や藁で屋根を葺くこと。男女の縁結び
という意にも用いる。
孔子(くじ)の倒れ。
解釈:孔子(こうし)のような偉い人でも倒れることはあるものだ。どんな
に偉い人でも、失敗することはあるという意。
類義:河童の川流れ。孔子倒れ(こうしだおれ)す。弘法にも筆の誤り。権
者(ごんじゃ)にも失念。猿も木から落ちる。釈迦にも経の読み違い。上手の
手から水が漏る。千慮(せんりょ)の一失。文殊も知恵のこぼれ。
籤(くじ)は争いを止どむ。
解釈:籤は運で決まるから、その結果についてはとやかく言えない。だから、
籤で決めれば争いは収まるという意。
公事(くじ)は転(こ)け物。
解釈:訴訟の結果は、本当に当てにならないものだという意。
籤は三度。
解釈:籤は一度引いただけでは思いが残るが、三度引けば、結果に納得でき
るものだということ。
孔雀は羽ゆえ、人に獲らる。
解釈:なまじ人に抜きん出た長所があるために不幸になるというたとえ。
類義:甘井(かんせい)先ず竭(つ)く。薫(くん)は香を以て自ら焼く。
虎豹(こびょう)の文は射を来す。麝香(じゃこう)は臍(へそ)ゆえ、命を
とらる。翠(すい)は羽を以て自ら残(そこな)う。象は歯有りて以て其の身
を焚(や)かる。
愚者の百行(ひゃっこう)より、知者の居眠り。
解釈:凡庸(ぼんよう)な物が沢山あるよりも、優れた物が少しある方がよ
い。
類義:雀の千声、鶴の一声。千人の諾々は一士の諤々(がくがく)に如かず。
愚者も一得(いっとく)。
解釈:愚かな者も千に一つ、よい考えを出すことがあるものだ。
類義:阿呆にも一芸。負うた子に教えられて浅瀬を渡る。狂夫の言、聖人も
これを撰ぶ。愚者も賢者に助言を与え得る。愚者も千慮すれば必ず一得あり。
千慮の一得。能無しの能一つ。馬鹿にも一芸。
愚人(ぐじん)に論は無益。
解釈:話して聞かせても分らぬ者には、何を言っても無駄である。
類義:愚者に聞かす詞(ことば)はない。愚者に向かって返答なし。非理の
前に道理。
反義:話せば分る。
薬九層倍(くすりくそうばい)。
解釈:薬の売価が原価に比べると非常に高いこと。また、暴利をむさぼるこ
と。
類義:薬九層倍、呉服五層倍。百姓百層倍。
薬の灸(きゅう)は身に熱く、毒な酒は甘い。
解釈:自分のためになる苦言は聞きづらく、当てにならないお世辞や甘い誘
いは、とかく耳に快いものであるということ。
類義:金言は耳に逆らう。苦言は薬なり、甘言は疾(やまい)なり。口に甘
きは、腹に毒。良薬、口に苦し。
薬、人を殺さず、医師(くすし)、人を殺す。
解釈:罪は物になくて、それを操る人にある。薬が人を殺すのではなく、そ
の薬を誤って用いた医者が人を殺すのである。
類義:医師は人を殺せど、薬、人を殺さず。
薬も過ぎれば毒となる。
解釈:本来よいとされることも、度を越すとかえって毒となること。
類義:過ぎたるは、猶及ばざるが如し。
薬より養生(ようじょう)。
解釈:病気になって慌てて薬を飲むよりも、日頃の養生の方が大切である。
類義:一に看病、二に薬。一に養生、二に介抱。薬より看病。予防は治療に
勝る。
癖ある馬に、乗りあり。
解釈:癖のある者は、一面では何らかの取り得があるというたとえ。
類義:癖ある馬に能あり。癖なき馬は行かず。蹴る馬も乗り手次第。人食ら
い馬にも合口。名馬に癖あり。
反義:沈香(じんこう)も焚かず、屁もひらず。
曲者(くせもの)の空笑い。
解釈:胡散臭い(うさんくさい)者は、お世辞笑いをする。
類義:えせ者の空笑い。
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