51b 我想[宗教について]
 
[多神教の機能性]                   H13.01.28  H13.01.29
 多神教においては、このような考え方を採りません。現実の秩序を否定する考えは生
じません。多神教が信じられている世界は、太陽を頂点とする、自然の恩恵を得て人間
は繁栄します。生きとし生けるものは、それぞれ存在する位置において、自己の持つ機
能を素直にかつあるがままに活動させることによって、自己も、周囲も、延いては総て
のものが一様に繁栄して行く、と考えます。それは、「時処位ジショイ」と云う三つの機能
を効果的に働かせることにあります。
 
 即ち、一つは「時」の機能です。それは、時間の推移に応じて最適な時刻を選択し、
その機会に活動することです。例えば、生物がすくすく生長する合理的な時間帯は、太
陽の照る日中です。また健康を維持するためには、一日24時間を無理なく効率的に過ご
す必要があります。
 二つは、自己の位置する「処(場所)」の機能です。一見地球上の秩序は、不平等に
存在しているように思われがちです。例えば、熱帯と寒帯での温度差、日の当たる処と
日陰の処での生産活動の差があります。他方では同じ日当たりでも、熱帯地方や砂漠地
帯での生活と、温帯乃至寒帯地方での生活とでは、その感じ方は全く逆の作用をします。
 しかし、現実には不平等は、何の疑いもなく存在しています。例えば、人種の違い、
言語の違い、文字の違いが、地球上の各々の地域を超越して存在しています。また同じ
地域内の民族の中でも、老若男女、体格の大小など、これらは現実に存在しているので
す。世界とは、それぞれの異なったものや出来事の集合体として、その存在価値がある
のです。
 三つは、自己の置かれている位、即ち意義の機能です。現実において自己が存在して
いることの意義、つまりその役割を果たす機能です。例えば、花を観賞するために生え
るサクラは美しい花をつける枝張りが、一方桜餅に添える葉を採取するサクラは健康な
枝張りが、それぞれ必要とされます。
 
 この三つの機能が適正かつ円滑に行われることによって、世界全体が効果的に影響し
合い、その成果が期待されます。サラリーマンの「出勤」を例に採りますと、@電車の
運行本数の多い朝の時間帯に、Aすっきりした服装で安全な通勤道路を経て、流れのス
ムースな改札口を通り、Bあまり込んでいない電車を選んで列を乱さないなど通勤者と
しての節度をもって乗車する、と云うことになりましょう。この通勤方法は、最適で安
全かつ合理的な方法であり、多神教に由来する考え方であると思います。
 
[世界をリードする世界観]               H13.01.28  H13.01.29
 自己の尊厳を主張することは、他の尊厳をも尊重しなければなりません。このことは、
「哲学のすすめ」(前掲)の、「生命のかけがえのなさたる、基本的人権」の尊重なの
です。
 聖書の教える価値観のみに偏重したり、また仏教の教える来世観重視に極端に偏るこ
とがあっては、世界を包括する思想とは成り得ないと思います。
 神道は、過去も、現実も、未来も、それぞれの意義を考慮しつつ、世界をリードし得
る宗教であると考えます。「時処位」を旨とする神道は、仮令民族宗教と分類されてい
ても、世界に十分に通用する価値観、世界観を持っています。
 
 例えば、神話に拠りますと、この日本の国は、天照御大神を始めとする高天原の神々
が支配していました。そこで実行される施策は、総ての神々の協議によって決定され、
最も尊いとされる天照御大神の独裁で決定されたものではありません。天照御大神は優
しい為政者として、万人が等しく畏敬の念を以てお慕い申していたことが描かれていま
す。神々の協議によって決定された施策は、適切かつ合理的であり、民主的な手段によ
って順次日本を支配して行ったとされています。この根本理念は、「時処位」の考え方
に立脚したものであると思います。
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