11 神社有職故実
 
〈渡御トギョの鹵簿ロボとその用具〉
 
△渡御の鹵簿
 渡御の「渡」は遷移、「御」は神祇を意味します。鹵簿はその行列です。
▲神幸シンコウ・ミユキの鹵簿
 神幸の鹵簿は天皇の行幸に準じて定められました。一例を次に記します。
一 神輿の例
先払(曳竹又は金棒) 大麻 太鼓 氏子崇敬者 真榊 猿田彦神(鼻高面を被る) 
前導 神職 旗 辛櫃 神饌 幣 楯 矛 矢 弓 剣 楽員 荷鉦鼓荷太鼓 紫翳 
神輿 菅翳 胡床雨皮 神馬 錦蓋 菅蓋 神職 氏子崇敬者 後駆 神職
二 鳳輦の例
先導(竹箒、白杖、鉄棒) 太鼓 氏子崇敬者 猿田彦神 前導 神職 辛櫃 神饌 
旗 真榊 楯 矛 矢 弓 剣 楽員 荷鉦鼓荷太鼓 神職 紫翳 御綱御綱 鳳輦
御綱御綱 菅翳 胡床 神馬 錦蓋 菅蓋 旗 斎主 神職 氏子崇敬者 雑具 後駆
 神職
▲遷座の鹵簿の例
神職 警蹕 秉燭 大麻 塩湯 楯 矛 矢 弓 剣 楽員 紫翳 行障 (絹垣)御
羽車(絹垣) 剣 弓 矢 矛 楯 秉燭
 
△渡御の用具
▲御羽車オハグルマ
 御羽車は遷座のとき御霊代奉安の御料にします。屋根のある正式のものと、屋根のな
い略式のものがあります。
▲鳳輦ホウレン(鸞輿ランヨとも)
 鳳輦は頂上に金鳳・鸞鳥を飾るので斯く云います。元来は天皇乗御の御料でしたが、
神社では御霊代を奉安して渡御の御料とします。近式の屋根の四隅に蕨手ワラビテなく台輪
ダイワの周囲に数階の飾段あるものと、古式の蕨手があって飾段なきものとがあります。
▲神輿シンヨ・ミコシ
 神輿は御霊代を奉安して渡御の御料とします。様式には天皇の乗輿(鳳輦・葱花輦)
に擬したもの(四角造)、高神庫タカミクラに擬したもの(八角造)、宮殿に擬したもの(宮
殿造)の三様あります。
▲蓋キヌガサ
 蓋は御霊代・御帳台・御羽車等の上を覆い、また神幸鹵簿の儀飾ともします。種類に
は晴天用の錦蓋キンガイ、雨天用の菅蓋カンガイとがあります。
▲翳サシハ(刺羽とも)
 翳は御霊代を覆い、また神幸鹵簿の儀飾ともします。種類には晴天用の紫翳ムラサキノサシハ、
雨天用の菅翳スゲノサシハとがあります。
▲行障コウショウ(歩帳ホチョウ・指几帳サシキチョウとも)
 行障は主として遷座のとき、御霊代の前後を遮障するに用います。
▲絹垣キヌガキ・キンガイ
 絹垣は神事では遷座のとき、御霊代の両側を遮障するに用います
▲筵道エンドウ
 筵道とは、御霊代遷御の通路に敷き続ける筵ムシロ(普通は薦コモ)を云います。奉仕員は
決してこれを踏んではなりません。
▲布単フタン
 布単は筵道の上に敷き続ける白布です。
▲太刀タチ
 太刀は断切タチギるの意で、神社の神宝、威儀物、神幸鹵簿等に飾太刀カザタチが用いられ
ます。
▲太刀袋タチブクロ
 太刀袋には片口袋と両口モロクチ袋があります。
▲弓
 弓は神事の神宝、威儀物、神幸鹵の儀仗として用いられます。
▲弓袋
 弓袋には片口袋と両口モロクチ袋があります。
▲矢(箭ヤとも)
 矢は神事の神宝、威儀物、神幸の儀矢に用い、種類には征矢ソヤ、雁股矢カリマタヤ、鏑矢
カブラヤがあります。また平らに矢を盛る平ヒラやなぐいと、円筒形の壷状の壷やなぐいとが
あります。
▲覆面・手袋
 覆面は御霊代奉戴の際など、鼻息の掛からぬために用います。
 手袋も同様、手が直接触れぬために用います。
▲木綿鬘ユウカヅラ・木綿襷ユウダスキ
 木綿鬘は主として遷座の際、清浄の標識として用います。
 木綿襷は神物や神饌などに袖が触れぬために懸け、主として遷座のときに用います。諸
襷モロダスキと片襷カタダスキの二種があります。
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