神様の戸籍調べ
 
三十二 伊邪那岐イザナギ伊邪那美神イザナミノカミ
 
 伊邪那岐神       ―          伊邪那美神
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 泣沢女神       水蛭子         金山比古神
 衝立船戸神      淡島          金山比売神
 道之長乳歯神     淡路之穂之狭別島    波迩須毘古神
 時置師神       伊予之二名島      波迩須毘売神
 和豆良比能宇斯能神  筑紫島         弥都波能売神
 道俣神        伊伎島         和久産巣日神 ― 豊宇気毘売神
 飽昨之宇斯能神    波島          天吉葛
 奥疎神        隠伎之三子島      川菜
 奥津那芸佐毘古神   佐渡島         埴山毘売神
 奥波甲斐弁羅神    大倭豊秋津島      八雲神(大、火、黒、折、若、鳴、
 辺疎神        吉備児島 亦名建日方別     土、伏)
 辺津那芸佐毘古神   小豆島 亦名大野手比売
 辺神甲斐弁羅神    大島 亦名大多麻流別
 八十禍波日神     女島 亦名天一根
 神直毘神       知訶島 亦名天之忍男
 大直日神       両児島 亦名天両屋
 伊豆能売神      大事忍男神
 底津綿津見神     石土毘古神
 底筒之男神      石巣比売神
 中津綿津見神     大戸日別神
 中筒之男神      天之吹男神
 上津綿津見神     大屋毘古神
 上筒之男神      風木津別之忍男神
 天照大御神      大綿津見神
 月読神        速秋津日子神
 建速須佐之男神    妹速秋津比売神
 預母都事解男神    志那都比古神
 速玉之男神      志那戸弁神
            久々能智神
            大山津見神
            鹿屋野比売神 亦名野椎神
            鳥之石楠船神 亦名天鳥船
            大宜都比売神
            火之夜芸速男神
 
 天の神々様は、是れまで造化の三神があらせられ、それから国常立命クニトコタチノミコト、豊
雲野命トヨクモノミコトなど独り独りに御出来になったが、段々この次からは、男と女との神様
が出来た。
 その中で初めて男女の相違を御発見なされ、其効力を実地に御悟りなされ、使用方法
を発見になって、後の世の手本とならせられ、且つは日本を御生みになった方々に伊邪
那岐イザナギ、伊邪那美イザナミの二柱の神様があった。
 初め此神様は、別々に御出来になったゐて別々に各々沢山の御子様を御作りになった。
凡てこの天神の御時代には別々に神様を御作りになることが御上手で、皆々沢山の神様
を作ってゐられるが、殊にこの二柱の神様は多い。
 処が此二柱の神様は大層御仲がよいので、天の神々様も二柱の此神々を一緒にして、
日本国を治めさせやうと思し召して、天アメの瓊矛ヌホコを下し給ひて、
 「あのドロドロした世界を堅めるやうに」
と御命令になったので、二柱神は仲よく、天と地との間にある天アマの浮橋ウキハシと云ふ橋
の上に立って、下の方を御覧になると、成程下の方は霧にかくれて見えねども、ドロド
ロしたものがあるばかりで一向国らしいものがない、
 「一体全体国と云ふものはどこであるじゃらう」
と思して、天の瓊矛を以て、伊邪那岐神がグルグルとその処をかき廻して御覧になると、
矛を上げなさる途端にポタリとおちた一滴から、小さな島が御出来になった。これが淡
路島で、二人の神様は、ここに御降臨になって、八尋殿ヤヒロデンと云ふ立派な御殿を建て
御住みになった。処が真中に天の御柱と云ふ大きな柱があった。この柱をグルグル廻ら
れる中に、伊邪那岐神は、非常に面白い事件を御発見なされた。それは庭前に二匹の鳥
が飛んで来て、奇体キタイな事をしてゐるので、よくよく御覧になると、それは夫婦の仕事
であったから、伊邪那岐神は、命伊邪那美神に御向かって、
 「あの鳥のする様にしやうではないか。丁度御前の足らぬ処は、私のあり余ってゐる
処である。是を合はして見やうではないか」
と仰せになると、
 「それでよいでしゃう」
とて、天の御柱を廻って、初めて神様の夫婦事をなされた。そして御互に愛し合はれて
子を産みなされたが、第一番目も第二番目も共に骨のないグニャグニャの子であったか
ら、葦アシの船にのせて御流になり、次に淡路島が生れた。是から所謂島生みをなされた
のであるが、その順序を云ふと、
 
1 伊予イヨ          (愛比売エヒメ)
2 讃岐サヌキ          (飯依比古イヒヨリヒコ)
3 粟アハ           (大宜都比売オホゲツヒメ)
4 土佐トサ          (建依別タテヨリワケ)   以上二名島     (一)
5 隠岐オキ三島        (天之忍許呂別アマノオシコロワケ)         (二)
 
6 筑紫ツクシ島         (白日別シラビワケ)             (三)
               (豊日別トヨビワケ)
               (建日別タケビワケ)
               (豊久士比泥別トヨクシヒネワケ)
               (熊曽クマソ)
 
7 伊伎イキ島         (天比登都柱アメヒトツハシラ)          (四)
8 津島ツシマ          (天之狭手依比売アメノサテヨリヒメ)        (五)
9 佐渡島サドジマ                            (六)
10 大倭豊秋津島オホヤマトトヨアキツシマ (天御虚空豊秋津根別アマノミソラトヨアキツネワケ)   (七)
 
 この七島に最初に生まれた淡路之穂之狭別島アハヂノホノサワケノシマを加へて、大八島を御生み
になった。それから、又、吉備キビ児島(亦名マタノナ建日方別タケヒガタワケ)、小豆島アヅキシマ
(亦名大野手比売オホノデヒメ)、大島(亦名大多麻流別オホタマルワケ)、女島ヒメジマ(亦名天一根
アマノヒトツカネ)、知訶島チカジマ(亦名天之忍男アメノオシオ)、両児島フタコジマ(亦名天両屋アメノフタヤ)
等の六島を生みなされて、先づ島生みが終りまして、是から神々を御生みになることに
なった。
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