05a 神社
 
 こゝで神社の財務について触れよう。財務とは財産に関する一切の事務を指し、神社
規則及び神社財務規程に準拠して執行しなければならない。神社規則又は本庁規程に基
く細則は、それぞれの神社において定めることができるが、財務に関しては、不合理な
慣習は排除して飽くまでも規定に準拠し、且つ、合法的、常識的に実施すべきである。
その実務において特に留意すべきことは、
 一、神社の財産は神社の名義で管理すること、
 二、会計事務は帳簿及び証拠書類によって明確に処理すること、
 三、公私混同しないこと、
 四、神社の財産はいやしくもこれを他の目的に使用し、又は濫用しないこと、
 五、他の者の疑惑を招かない様公明であること、
等である。これらのうちの一つの誤に因って収拾しがたい事態に立至る例は少なくない
のである。
 
 神社の経費は、その神社の収入をもって賄ふ。そして神社においては一切の収入を歳
入とし、一切の支出を歳出として、会計年度開始一ケ月前までに款項目に区分した予算
を編成し、役員会の議決を経る外、規則所定の手続を終了しなければならない。
 一般的に神社の歳入の主なものは、財産から生ずる収入、神饌幣帛料、神符守札授与
料、祈祷料、賽銭、寄付金、氏子崇敬者負担金、繰越金等である。決算は、予算と同一
の款項目に区分して会計年度終了後二月以内に作成し、規則所定の手続を経なければな
らない。予算及び決算の決定は当然役員会の任務であるが、一般の神社規則においては、
予算及び決算は総代会に報告する旨を定めてゐるので、規則所定の手続を経るといふこ
とは、最終的には、定められた期間内に総代会に報告することである。最近は更に広い
範囲に報告する趣旨から予算及び決算をその都度印刷に附し、全氏子に配布する神社が
あるが、神社の実態を理解せしめねことは維持経営に関する協力を求める上でも意義あ
る方法といへる。
 
 決算と同時に必要なことは、年度末現在に於ける財産目録を作成して備付けることで
ある。また、複式簿記を採用しない場合、貸借対照表については、財産目録に借入金等
の残高を加へたものをもって代用できる。尚、神社財務規程に基き、統理又は神社庁長
が請求したときには、結局決算書と財産目録を提出することになる。更に財産目録は、
他の備付け書類である役員名簿等とともに、その写を所轄庁へ提出することが義務付け
られてゐる。
 神社に監査機関を置かないのは、役員会当然の任務として監査を行ふことを予想して
ゐるからである。従って収支は帳簿により明らかに処理し、役員会が自己監査を加へ、
何時他から検査されても支障のない様に整備して置くべきである。
 
 営繕工事の請負、財産権の売買、賃借等の相当金額に上る取引の契約は、原則として
競争入札に付するものとする。指名入札又は随意契約はやむを得ない事情のある場合に
限るやうにし、努めて不要の誤解を招かない様留意すべきである。
 神社の財産は基本財産、特殊財産及び普通財産の三種に分類して管理する。そのうち
基本財産及び特殊財産の設定については役員会の議決を要し、それらを処分し又は担保
に供すること、借入をすること、主要な境内建物の変更、境内地の変更等については役
員会で議決し、更に統理の承認を受けた上で、所定の公告をしなければならないのであ
る。
 
 最後に神社と神社本庁及び神社庁との関係の若干について重ねて述べる必要があらう。
前述の通り神社は神社本庁の基本構成単位であり、同様に又地方団体としての神社庁の
構成単位でもある。従って神社には共同の機関としての本庁及び神社庁、同支部に対し
て協力し、これを維持する義務がある。具体的には年々評議員会、協議員会等で議決し
た維持経費としての負担金を納める義務があるのである。
 本庁は神社を包括するための業務を行ひ、神社庁は本庁の地方事務並びにその都道府
県管内神社の共同の利益となる事務を行ひ、神社庁の支部は神社と神社庁又は本庁との
連絡事務を行ふのである。
 本庁は神社の権威を保持し且つ興隆を図る意味において神社の管理、人事その他につ
いて神社を制約し又必要な指示をする。
 神社から本庁に進達する書類は神社庁を経由しなければならない。又多くの場合神社
から本庁又は神社庁に進達する書類は支部を経由することにしてゐるが、これは最も親
近の関係にある神社庁及びその支部がその管内神社の実態を把握し対処する必要から出
たものである。
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