12 範例祝詞[室壽]
参考:堀書店発行「祝詞範例全書」
〈室壽ムロホギ(新築を祝うこと)〉
[室壽] (『日本書紀』顕宗天皇)
築ツイ立つる稚室葛根ワカムロツナネ、築立つる柱は、此の家長イヘキミの御心ミココロの鎮シヅマリなり。
取擧ぐる棟梁ムネウツバリは、此の家長の御心の林なり。取置く椽撩(木扁の撩)ハヘキは、此
の家長の御心の齊トトノホリなり。取置く蘆潅(三水の無い潅)エツリは、此の家長の御心の平
タヒラギなり。取結ぶ縄葛ナハツナは、此の家長の御壽ミイノチの堅カタキなり。取葺く草葉カヤは、此
の家長の御富ミトミの餘アマリなり。出雲は新墾ニヒバリなり。新墾の十握稻トツカシネの穗イナホ、浅甕
サラケに醸カめる酒ミキを美ウマらに飮喫ヲヤラフるかね。吾が子ヒコヒトたち、脚ひきの此の傍山カタヤマ
牝鹿ヲシカの角、擧ササげて吾が舞はむ。旨酒ウマサケ餌香市エカノイチに直アタヒもて買はず、手掌タナソコ
摎亮モヤララに、拍ウチ上げ賜ふ、吾が常世等トコヨタチ。
稻席イナムシロ、川そひ柳、水行けば、靡き押し立ち、その根は失ウせず。
[大殿祭オホトノホガヒ] (『延喜式』巻第八 詞)
高天原爾タカマノハラニ 神留坐須カムヅマリマス 皇親スメムツ神魯企カムロギ 神魯美之命カムロミノミコト以弖
モチテ 皇御孫之命乎スメミマノミコトヲ 天津高御座爾アマツタカミクラニ坐弖マセテ 天津璽乃アマツシルシノ 剣
ツルギ鏡乎カガミヲ 捧持ササゲモチ賜天タマヒテ 言壽コトホギ宣ノリタマヒ志久シク 皇我宇都スメラアガウヅノ御
子ミコ皇御孫之命スメミマノミコト 此乃コレノ天津高御座爾坐弖マシテ 天津日嗣乎ヒツギヲ 万千秋乃
ヨロヅチアキノ長秋爾ナガアキニ 大八洲オホヤシマ豊葦原トヨアシハラ瑞穂之国乎ミヅホノクニヲ 安国止ヤスクニト
平気久タヒラケク所知食止シロシメセト 言寄コトヨサシ奉マツリ賜比弖タマヒテ 以天津御量弖アマツミハカリモチテ
事問之コトトヒシ磐根イハネ木乃立知キネタチ 草能クサノ加岐葉乎毛カキハヲモ言止弖コトヤメテ 天降利アマクダリ
賜比志タマヒシ 食国ヲスクニ天下登アメノシタト 天津日嗣所知食須皇御孫命乃御殿乎ミアラカヲ 今奥山
乃大峡オホカヒ小峡爾カヒニ立留タテル木乎 斎部能イムベノ斎斧乎以イミヲノヲモチテ伐採弖キリトリテ 本末乎
波モトスエヲバ 山神爾ヤマノカミニ祭弖マツリテ 中間乎ナカラヲ持出来弖モチイデキテ 斎且(金扁+且)乎
イミスキヲ以弖斎柱イミハシラ立弖 皇御孫之命乃天之御翳アメノミカゲ日之御翳止ヒノミカゲト造奉仕礼留
ツクリツカヘマツレル瑞之御殿ミヅノミアラカ 汝イマシ屋船命爾ヤブネノミコトニ天津アマツ奇護言乎クスシイハヒゴトヲ以弖
言壽コトホギ鎮白久シヅメマヲサク 此乃コレノ敷坐シキマス大宮地オホミヤドコロノ底津磐根乃ソコツイハネノ極美キハミ
下津綱根シタツツナネ波府ハフ虫能ムシノ禍無久ワザハヒナク 高天原波青雲乃アヲグモノ靄久タナビク極美 天
乃血垂チダリ飛鳥乃トブトリノ禍無久 掘堅多留ホリカタメタル柱ハシラ桁ケタ梁ウツバリ戸ト庸(片扁+庸)
乃マドノ錯比キカヒ動鳴ウゴキナル事無久コトナク 引結幣留ヒキムスベル葛目能ツナメノ緩比ユルビ 取葺計留
トリフケル草乃カヤノ噪岐ソソギ無久 御床ミユカ都比能ツヒノ佐夜伎サヤギ 夜女能ヨメノ伊須須伎イススキ 伊
豆都志伎イヅシキ事無久 平気久タヒラケク安久ヤスラケク奉護マモリマツル神御名乎カミノミナヲ白久マヲサク 屋船
久久遅命ヤブネククノチノミコト 屋船豊宇気姫名登ヤブネトヨウケヒメノミコトト御名乎波ミナヲバ奉称利弖タタヘ
マツリテ 皇御孫命乃御世乎ミヨヲ堅磐常磐爾カキハニトキハニ奉護利マモリマツリ 五十橿イカシ御世乃足良志
タラシ御世爾 田永能タナガノ御世止奉福爾サキハヘマツルニ依弖ヨリテ 斎玉作等我イミタマツクリラガ持斎波利
モチユマハリ 持浄麻波利モチキヨマハリ 造仕礼留ツクリツカヘマツレル 瑞八尺瓊能ミヅノヤサカニノ御吹支乃ミホギノ
五百都イホツ御統乃ミスマルノ玉爾タマニ 明和幣アカルニギテ曜和幣乎テルニギテヲ附気弖ツケテ 斎部宿禰
イムベノスクネ某我ナニガハガ弱肩爾ヨワカタニ太襁フトダスキ取懸弖トリカケテ 言壽伎コトホギ鎮奉事能シヅメマツル
コトノ漏落武モレオチム事乎波コトヲバ 神直日命カムカホビノミコト 大直日命オホカホビノミコト聞直志キキナホシ見
直志弖ミナホシテ 平気久安気久所知食登白マヲス
詞別コトワキテ白久マヲサク 大宮売命登オホミヤノメノミコトト御名乎申事波マヲスコトハ 皇御孫命乃同殿能
オナジオホトノノ裏爾ウチニ塞坐弖サヤリマシテ 参入マイリ罷出人能マカヅルヒトノ選比エラビ所知志シロシメシ 神等
能カミタチノ伊須呂許比阿礼比坐乎イスロコビアレビマスヲ 言直志コトナホシ和志ヤハシ坐弖マシテ 皇御孫命
スメミマノミコトノ朝乃アシタノ御膳ミケ 夕乃ユフベノ御膳ミケニ供奉流ツカヘマツル比礼懸ヒレカクル伴緒トモノヲ 繦懸
タスキカクル伴緒乎 手躓テノマガヒ足躓アシノマガヒ不令為弖ナサシメズテ 親王ミコタチ諸王オホキミタチ諸臣マヘツ
キミタチ百官モモノツカサノ人等乎ヒトタチヲ 己乖乖オノガムキムキ不令在アラシメズ邪意アシキココロ穢心キタナキココロ無久
宮ミヤ進進米ススメニススメ 宮勤勤之米弖ツトメニツトメシメテ 咎トガ過アヤマチ在乎波アラムヲバ 見直志聞直
坐弖 平良気久安良気久 令仕奉ツカヘマツラシメ坐爾マセニ依弖ヨリテ 大宮売命止御名乎称辞タタヘ
ゴト竟奉久登ヲヘマツラクト白マヲス
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