0401c 中国名著解題2
 
遺教経ユイキョウギョウ
 仏典で,後秦の時代に鳩摩羅汁が訳出したものである。仏陀入寂に臨んで,仏弟子達
 に与えた最後の遺誡である。「仏遺教経」「遺経」とも云う。
 
唯識論ユイシキロン
 正しくは「成唯識論」と云い,唐の玄奘が世親の著「唯識三十頌」を注釈したもので,
 法相宗の重要聖典とされている。
 
遊仙窟ユウセンクツ
 唐の張文成の作った小説である。これは文成が神仙の窟イワヤに迷い込み,二人の仙女と
 遊び,遂にその一人と結婚すると云う物語である。
 
揚子法言ヨウシホウゲン
 漢の楊雄の編纂した書で,十三巻,十三編から成っている。これは経史が事跡の解釈
 に正邪,是非の識別が世に誤って流布しているので,大いに慨嘆義憤を感じ,「論語
 」を象カタドって十三編とし,大いに孔子の仁義王道の極致を主張したものである。
 なお,「揚子方言」十二巻は,地方の方言を集録したもので,同じく楊雄の著作であ
 る。
 
礼記ライキ
 五経の一つである。通説では漢の戴聖タイセイが集録したものと云われ,四十九編から成
 っている。「記」とは通釈の意である。周末秦漢時代の,儒者の古礼(冠婚喪祭の礼
 や音楽・教育)に関する見解が集められている。なお,周代の礼書には,周礼,儀礼,
 及び礼記の三つがある。周礼と儀礼は周公の作と云われている。周礼は礼の綱領を述
 べ,儀礼はその作法を示したものである。礼記はそれらの注釈のようなものである。
 
六経リクケイ
 詩経,書経,易経,春秋,礼記,楽記の六書を云う。楽記は秦の焚書に焼かれて失い,
 今は五経だけが残っている。
 
劉子リュウシ新論
 単に「劉子」,又は「新論」とも云う。劉孝標或いはその他二,三の著作とも云われ
 るが未詳である。これは各方面の古書,雅書から抜粋,編纂した十巻の書である。
 
梁書リョウショ
 唐の姚思廉,魏徴の二人が太宗の勅命により,編纂した五十六巻の史書である。
 
聊斎志異リョウサイシイ
 清の蒲松齢ホショウレイの著した怪奇小説集で,八巻,四百三十一編から成っている。内容
 は神仙狐鬼妖精の怪異物語であるが,描写が緻密で,文章も艶麗,凄味よりも人情味
 に魅力がある。中国怪談中第一の名作である。
 
呂氏春秋リョシシュンジュウ
 「呂氏」又は「呂覧リョラン」とも云う。秦の相呂不韋リョフイの撰したものと云われるが,
 実は彼の処に集まった諸学者の編纂したもので,二十六巻から成っている。これは,
 凡そ十二紀,八覧,六編に大別し,細分すれば百六十編となるもので,天地,万物,
 古今のことを述べたもので,大部分は儒書に拠り,これに道家,墨家のものを加えた
 百科全書のようなものである。この書が出来たとき,一字を増減した者に千金を与え
 る,と賞金をかけた話があり有名である。紀元前二三九年頃成立。
 
列子レッシ
 周の列禦寇ギョコウの著と云われるが,彼の死後のことまで書かれており,これは偽作説
 が有力である。八巻から成っている。「老子」の系統を継ぎ,清虚無偽の寓言グウゲン
 を含む道家思想である。なお,唐の玄宗は列子を称して冲虚チュウキョ真人と云い,宋の真
 宋は,至徳の二字を加えてこの書を「冲虚至徳真経」と称した。
 
列女伝レツジョデン
 漢の劉向リュウキョウの編纂した書で,七巻(続伝一巻があるが,これは作者不詳)から成
 っている。班昭の作と云い,或いは項原の著と云うが確証はない。これは唐虞以来の
 名婦の伝記である。宋の王回が頌のあるものないものとを分け,今の本の体裁とした。
 母儀,賢明,仁智,貞慎,節義,弁通など八編に分けられている。
 
老子ロウシ
 周の老タン(耳+冉,姓は李,名は耳,字は伯陽)の著した書で,上編三十七章,下
 編四十四章の上下二巻八十一章から成っている。著者が官を辞し,乱世を逃れて函谷
 関に至ったときに,関令尹喜の懇情により,道徳教五千余言を著したと云う。これは,
 虚無を以て万有の大道とし,正常な自然に帰著することを教え,無為黙化することを,
 その理想としている。唐代において,道家,道教の経典として広く読まれた。「老子
 道徳経」とも云う。
 
論語ロンゴ
 孔子の言行,弟子及び時人との問答,弟子同士の論議を集録したもので,孔子の没後,
 弟子達によって編纂された書で,二十編から成っている。孔子の学説,及びその教団
 の面目を知る唯一の資料である。わが国へは,応神朝の王仁ワニの貢物進呈以後,現在
 に至るまで,修身・修養の書として大きな影響を与えている。
 
論衡ロンコウ
 漢の王充の編纂した書で,三十巻,八十五編から成っている。内容は,物類の同異を
 説き,世俗の誤りを正し,諸家の説の虚偽を攻撃し,孔孟の書と雖もはばかるところ
 がなかった。

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