03a 暦 − 暦書その一
〈えと〉
十干と十二支を組み合わせますと,甲子を始めに,乙丑・丙寅・丁卯と進んで最後六
十番目が癸亥となる,60を周期とする六十干支が生じます。これを「えと」と呼びます。
旧暦では甲子を「きのえね」,乙丑を「きのとのうし」と読み,弟の方には干と支の間
に「の」を入れて読みます。
六十干支はこれを年・月・日に配当するようになり,干支カンシ紀年法キネンホウ,干支紀日
法が起こりましたが,干支によって年月日を表すことは西紀前4世紀,中国の戦国時代
の半頃に始まりました。暦書に年月日のほかに,年月日干支を附記しておきますと,年
・月・日の誤記を正タダす上に非常に便利で,歴史学者や年代学研究者には調法です。以
上のように十干,十二支,更に六十干支は,全く暦法上,年・月・日に順序付けのため
に発生したものですが,これが後には,種々の非科学的迷信を符会フカイするようになり,
ひいてはこれが年・月・日の吉凶や,方位の禁忌にまで左右するようになって,本来の
目的から逸脱してしまいましたが,今日ではこれがために暦があるといっても過言では
ありません。
えと紀法
甲子1・乙丑2・丙寅3・丁卯4・戊辰5・己巳6・
庚午7・辛未8・壬申9・癸酉10・甲戌11・乙亥12・
丙子13・丁丑14・戊寅15・己卯16・庚辰17・辛巳18・
壬午19・癸未20・甲申21・乙酉22・丙戌23・丁亥24・
戊子25・己丑26・庚寅27・辛卯28・壬辰29・癸巳30・
甲午31・乙未32・丙申33・丁酉34・戊戌35・己亥36・
庚子37・辛丑38・壬寅39・癸卯40・甲辰41・乙巳42・
丙午43・丁未44・戊申45・己酉46・庚戌47・辛亥48・
壬子49・癸丑50・甲寅51・乙卯52・丙辰53・丁巳54・
戊午55・己未56・庚申57・辛酉58・壬戌59・癸亥60
〈五行ゴギョウ説〉
太陽系の天体,水星・金星・火星・木星・土星の五星は古来から知られていました惑星
で,天空上におけるその運行は複雑で,その科学的解明は,近世ケプラーによって惑星
の運動に関する三法則が発見されて以後のことです。従って古代人にとっては五惑星の
運行は神秘的なもので,五星の運行が地上百般の現象と,何らかの関係があるのではな
かろうか,という考えから,森羅万象シンラバンショウが全て五惑星の木・火・土・金・水の精
気の消長によって影響されるという思想が生まれてきました。これが中国の五行説です。
これに十干十二支が結び付いて干支五行説となり,また全て事物は陰陽オンヨウから成る
という考えと結び付いて陰陽五行説となりました。全て宇宙に存在する森羅万象に陰陽
を区別し,五行を割り当てて判断する形而上ケイジジョウ的中国思想は,暦の中にも当然採
り入れられ,これが今日のわが国は勿論,中国においても暦の内容の大半を占めていて
いるのです。
五行配当
二気 五行 十干 十二支 四季
陽 木 甲 きのえ 寅 春
陰 〃 乙 きのと 卯 〃
陽 火 丙 ひのえ 午 夏
陰 〃 丁 ひのと 巳 〃
陽 土 戊 つちのえ 辰・戌 四季の土用
陰 〃 己 つちのと 丑・未 〃
陽 金 庚 かのえ 申 秋
陰 〃 辛 かのと 酉 〃
陽 水 壬 みずのえ 子 冬
陰 〃 癸 みずのと 亥 〃
陰陽五行説では,五行に「相生アイショウ」・「相克ソウコク」・「相勝ソウショウ」という性質を
付与しています。木・火・土・金・水の五行の間には,互いに二つずつ相順応ジュンノウし
て,木は火を生じ,火は土を生じ,土は金を生じ,金は水を生じ,水は木を生じるとい
う関係があるとしています。この関係は天地陰陽の気が調和して平衡を保つので,これ
を五行の「相生」といいます。例えば甲午の日は,甲は木,午は火に該当し,木→火の
相生です。故に万事順調に事が進む日であるということになります。
五行の相克とは,木は土を剋し,火は金を剋し,金は木を剋すということです。例え
ば,木が土に遇えばこれを剋食し,土が水に遇えばこれを吸収剋斂コクレンするということ
になり,天地の平衡が失われると説きます。
木は木を旺サカんにし,火は火を旺んにし,土は土を旺んにするというように,同気が
重なる故に,その気益々旺になる結果,陰陽遍在ヘンザイして万事よい場合はなお良くなり
ますが,不可なる場合はいよいよ悪くなるということで,これを五行の相勝といいます。
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