2202 神社における参拝の作法
 
             神社における参拝の作法
 
                     参考:大法輪閣発行三橋健氏編「神道」
 
 ▼小揖ショウユウ
 神社は神様の鎮座します神聖なところですので、参拝するときは敬虔な気持ちを抱き、
心身共に清浄であることが肝心です。
 神社の入口に立つ鳥居は、神域を区画する神門であり、また鳥居に掛けられた注連縄
シメナワや紙垂シデも聖域の境界を示す調度ですので、その参入や退出のときには、小揖ショウ
ユウといって浅く伏す会釈(15度程度)をする心遣いが望まれます。社殿まで延びる参道
では、神さまの正面である正中セイチュウを避け、静かに慎んで参進します。
 
 ▼手水テミズ
 社殿の手前では手水舎テミズシャにおいて自ら身体を清める必要があります。手水舎には
水盤に「洗心」などと刻まれ、其処から湧き出る聖水によって、手を洗い口を漱ススぎま
す。その手水の標準的な作法は次のとおりです。
 @手水舎に入って小揖の後、まず右手で柄杓ヒシャクに清水を汲み、左手に漱ソソぎます。
 A柄杓を左手に持ち替え、同様に右手に漱ぎます。
 B更に柄杓を右手に持ち、左の掌テノヒラに水を受けて口を漱ぎます(このとき、柄杓に
直接口を付けることは「杓水シャクミズ」と称して、不作法とされます)。口を漱ぎ終わっ
て、再び左手に水を漱ぎます。
 C最後に柄杓を立て、柄に水を流して清め、元の位置に伏せて置き、小揖をして手水
舎より出ます。
 このように手水を行って心身の浄化が為されてから、礼儀を尽くして社殿に参進しま
す。
 
 ▼参拝
 神前において祈願をする際は、まず真心の表現として賽銭サイセンを奉ります。賽銭は神
様への捧げ物の一つで、古くは米を紙に包んだ「おひねり」が一般的でしたが、次第に
現在のような金銭に変わってきました。
 賽銭を供えて、拝殿の向拝コウハイに掛けられた鈴を清らかに打ち鳴らし、祈念をこめて
「二拝二拍手一拝」の神拝作法により拝礼します。
 拝ハイとは「おがむ」の意味で、経タテの礼の最も重いものとされ、直立の姿勢から身体
を伏して、背中が水平になるまで深々と頭を下げる(このとき手は膝頭を覆うようにす
ます)敬礼作法をいいます。拝を重ねることを再拝(二拝)、再拝を重ねることを両段
再拝(四拝)、両段再拝を重ねることを八度拝と称して、その度数が多い程鄭重な作法
とされていますが、普通は再拝により拝みます。
 拍手は「かしわで」とも呼び、緯ヨコの礼の代表的なもので、胸の高さに両手を合わせ
心を正してから、右手を少し手前に引き左右に開いて高らかに拍ウち鳴らす、わが国特有
の敬礼作法をいいます。その数は四つ拍つことを一段として数え、八つ拍つ八開手ヤヒラデ
を長拍手、二拍手を短拍手として区別し、一般の神社参拝にはこの二拍手を用いること
になっています。
 神拝作法は拝を二回繰り返す再拝に、二拍手を合わせ、一拝を添えるという「二拝二
拍手一拝」を以て恭しく拝礼を行うことになりますが、拝礼の前後に深く伏す敬礼の深
揖シンユウ(45度程度)を加えますと、一層丁寧な所作となります。
 
 ▼玉串タマグシ奉奠ホウテン
 特別な祈祷や、正式参拝を行う折には、拝殿に昇殿して神前に玉串を奉って拝礼する
場合があります。拝殿へは小揖をして参入し、神様の正面である正中を避けるように畏
カシコまって席に著ツきます。まず、神前に及んで参拝をするに先だって修祓シュバツにより心
身を祓ハラい清めます。神職が祓詞ハラエコトバを奏上している間は、謙虚な気持ちで、磬折ケイ
セツといって深い平伏(60度程度)で伏します。引き続き大麻オオヌサや塩湯エントウにより祓を
受けるときは、磬折でも浅い平伏(45度程度)で伏します。
 修祓が済んで、拝礼の行事を行う際には神前に玉串を奉奠します。玉串は榊サカキなどの
小枝に紙垂シデや木綿を着けたもので、拝礼のとき、敬意を深めるためにこれを幣帛ヘイハク
として奉ります。玉串には神霊ミタマが宿り神威が通じるものと解釈されますので、慎重に
取り扱う必要があります。玉串を奉って拝礼をする基本作法は次のとおりです。
 @神職より玉串を薦められましたら、右手で玉串の下部を上から、左手で玉串の上部
を下から執り、胸の高さに左高に捧げ持ちます。
 Aそのままの姿勢で小揖をして席を起ち、神前の玉串案の前まで進み出て深揖をしま
す。
 B玉串を立て、左手を下げて両手で玉串の本モトを持ち、祈念をこめます。
 C右手を放して、葉先を右の方へ回しながら、右手で玉串の中程を裏(下側)から執
り、本を神前に向け左手を添えて案上に奉ります。
 D二拝二拍手一拝の作法によって拝礼し、深揖の後、神前を退きます。
 昇殿参拝を終えて拝殿を退出する際には、神前に供えた神酒を共食する直会ナオライの儀
を行います。直会は神様の霊威や生命力を戴くとともに、厳粛な神事での緊張した心身
を徐々に解して通常の状態へと戻す効力があります。
 参拝作法とは、神様に対する人間の誠意の心が一つ一つの所作として表わされたもの
で、神様に接する最も鄭重な作法です。「時処位」に応じた細かい心遣いと美しい作法
を以て、礼儀正しく神前に額突ヌカヅく姿が大切であるのです。

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