14 祈禳(イノリハラフ)に詠める和歌
△祈雨
あまの川苗代水にせきくだせ 天くだります神ならば神(古今著聞集 五和歌)
おほみたのうるほふばかりせきかけて ゐせきにおとせ河上の神
(新古今和歌集 十九神祇 賀茂幸平)
世をめぐむ道し絶えずば民草の 田ごとにくだせ天の川水(筆のすさび)
△祈晴
天津風あめの八重雲吹はらへ はやあきらけき日のみかげみん
(新勅撰和歌集 九神祇 卜部兼直)
△祈疾痊
きのふまで千世もと祈る人をしも 仏にたのむ道ぞかなしき(宗祇法師集 雑)
△祈学芸
木葉散宿は聞わく事ぞなき 時雨するよも時雨せぬよも(長明無名抄 下)
鴬のはつ音は何の色ならん 聞けば身にしむはるのあけぼの(理斎随筆 三)
薄墨にかくたまづさと見ゆるかな 霞てかへるはるのかりがね(同)
△祈富貴顕達
身のうさを中々なにと石清水 おもふ心はくみてしるらん(古今著聞集 五和歌)
いまゝでになどしづむらん貴船川 かばかりはやき神をたのむに
(千載和歌集 二十神祇 平実重)
さりともとたのみぞかくるゆふだすき わがかたをかのかみとおもへば
(同 賀茂政平)
△祈雪冤
身をつみててらしをさめよますかゞみ たがいつはりしくもりあらすな(袋草紙 四)
思ひいづやなき名たつ身はうかりきと あら人神になりしむかしを
(古今著聞集 五和歌)
△祈旅行安全
天地の 神も助けよ 草枕 羇タビ行く君が 家に至るまで(萬葉集 四)
秋萩を 妻問ふかこそ 一子ヒトツゴ二子フタツゴ もたりといへ かこじもの わがひとり
ごの 草枕 客タビにしゆけば たかだまを しゞにぬきたれ 斎ひべに 木綿ユフとりし
でて 忌イハひつつ わが思ふ吾子アコ まさきくありこそ(同 九)
くさまくらたびゆくきみをさきくあれと いはひべすゑつあがとこのへに(同 十七)
虚ソラ見つ やまとの国 あをによし 平城ナラの京師ミヤコゆ おしてる 難波ナニハにくだり
住吉スミノエの みつに舶フネのり たゞわたり 日の入る国に つかはさる 我がせの君を
かけまくの ゆゝしかしこき 墨江スミノエの わが大御神オホミカミ 舶フナのへに うしはきい
まし 舶ともに みたたしまして さしよらむ 磯の崎々 こぎはてむ 泊々トマリドマリに
荒風アラカゼ なみにあはせず 平らけく ゐてかへりませ もとの国へに(同 十九)
にはなかのあすはのかみにこしばさし あれはいはゝむかへりくまでに(同 二十)
ちはやぶる神のこゝろのあるゝうみに かゞみをいれてかつみつるかな(土佐日記)
△捐躯而祈
かはらんといのる命はをしからで さてもわかれんことぞかなしき
(古今著問集 八孝行恩愛)
△百度詣
いはゞこれみたらしがはのはやきせに はやくねがひをみつのやしろか
(台記 大僕卿孝標)
むかしわがいのりし道はあらねども これも嬉しな賀茂の川浪
(新続古今和歌集 二十神祇 皇太后宮大夫俊成)
△七日詣
桜花賀茂の川風うらむなよ 散をばえこそ留めざりけれ(長門本平家物語 一)
△参篭
哀とも神々ならば思ふらん 人こそ人のみちはたつとも(十訓抄 四)
草の葉のなびくもしらで露の身を おきどころなくなげくころかな(元長参詣記)
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