27b ユダヤ教
 
〈戒律による生活〉
 ラビ達は,「律法」(モーセ五書)の中に,義務律248戒と禁止律365戒からなる613の
"戒律"を発見しました。
 典礼や祝日など,狭義の宗教的戒律だけでなく,生活全般に亘る定めが「613の戒律」
の中に含まれています。このことは,民族共同体の生き方そのものが宗教であるユダヤ
教の特徴を表しています。
 安息日や祝日の食事のように,多数の戒律は家庭において守られます。従って,家庭
を形成するための結婚は,重要な戒律の一つです。同様に,ユダヤ人の一生の一節一節
は戒律によって方向付けられているのです。
 例えば食品の場合,動物ではラクダやブタは蹄が割れていないか反芻しないため食べ
られない,鳥では全ての猛禽類は食べられない,水中にいるものでは鰭ヒレと鱗のないも
のは食べられない,爬虫類は全て汚れているので食べられないが,昆虫ではイナゴのみ
食べられます。
 
〈神と選民〉
 「613の戒律」は,唯一の神に選ばれた民族"イスラエル"が選民として生きるための基
準であり,個々の戒律はこの枠の中に位置付けられて初めて意味を持つからです。従っ
て,「613の戒律」,乃至はラビのユダヤ教の本質は,神と選民に関する教義において初
めて明らかになります。
 ところで,単純な理想主義ではないラビのユダヤ教は,人間の本性の中に悪の衝動が
含まれていることを認めます。悪の衝動を押さえて神の創造の業に参加するかどうかを
決定することは,人間の自由意志に任されています。人間が善悪の選択をする自由を持
つ存在であるという認識が,ラビのユダヤ教の倫理の基盤です。従って,人間は本来的
に罪の存在であるというキリスト教の"原罪論"を,ラビ達は承認しません。
 
 神の正義と全能を信じる故に,人間生活がこの世の生のみで消滅してしまうという考
え方に,ラビ達は我慢できませんでした。彼らの考えによると,この世の終わりにメシ
アが来臨して準備した後に,神の正義が完全に確立する"来るべき世界"が始まります。
その日,全ての死者は蘇り,生前の行為に応じて最後の審判を受けます。その結果,罪
人は火が燃える"ゲー・ヒンノム"に送られ,永遠の滅びを苦しむが,正しい人は喜びの
尽きない"ガン・エデン"に入って永遠の生命を楽しみます。
 ラビ達の考えによると,以上述べてきたような神の姿と人間の運命を示す律法トーラーは,
最初,全世界の諸民族に提示されました。しかし,それを神から受け取った民族は,イ
スラエルだけでした。それ以後,律法を遵守し,律法を全世界の諸民族に伝えることが,
選民イスラエルの任務になりました。従って,イスラエルが選民であることは,唯一の
神への信仰同様,ラビのユダヤ教の基本的信条ですが,その選民である資格は,律法を
保持しているということに全てがかかっているのです。
 選民信仰のこのような構造が理解されるならば,ラビのユダヤ教が屡々誤解されるよ
うな偏狭な民族宗教ではなく,本質的に普遍的宗教であることが理解されるでしょう。
ラビ達は異教徒がユダヤ教に改宗することを歓迎しましたし,もし改宗しなくても,正
しい異教徒が最後の審判によって"ガン・エデン"に入ることを疑いませんでした。正し
い異教徒とは,偶像礼拝,涜神,殺人,姦淫,盗み,それに生きた動物を食べることの
禁止と,法制の確立命令を含む「ノアの子らの七つの戒律」を守る人々のことでした。
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