0403茶壺
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈茶壺チャツボ〉
「茶」
 ツバキ科の常緑低木。中国南西部の温・熱帯原産。葉は長楕円形で厚く表面に光沢があ
り、10月頃葉腋に白花を開く。多くの変種がある。果実は扁円形で、開花の翌秋に成熟
し、通常3個の種子がある。木の芽。
 
「茶壺」
 狂言の曲名。主人の使いで京の栂尾トガノオまで行き、茶を買い求めて来た田舎者が、途
中で立ち寄った知人の処で酒を振る舞われ、酔っぱらって街道筋に寝てしまう。其処へ
通り掛かったスッパ(悪者、シテ)が、茶壺を盗もうとして、茶壺を担った縄の片方に
肩を入れ、田舎者と背中合わせに並び臥す。間もなく目を醒ました田舎者と茶壺を奪い
合うところへ、騒ぎを聞き付けた目代モクダイ(代官)が現れて裁きを着けることになる。
しかし田舎者の申し立てる内容を、スッパが盗み聞きして同じように答えるので、どち
らの物とも決め兼ねる。次にこの茶の産地や商品明細を言わせる。田舎者が拍子に掛か
って舞いながら述べると、次にスッパもその通りに真似をする。更に両人相舞アイマイに舞
えと命ずると、矢張りスッパは巧みに誤魔化して果オオせる。遂に裁き兼ねた目代は、昔
から論ずる物は中から取れと云う諺コトワザがあると言って、自分が茶壺を取って逃げるの
で、田舎者・スッパの両人が追い込む。
 
 雑狂言。大蔵・和泉両流にあり、筋立ては変わらない。目代が二人の言い分を代る代る
聞くところに、狂言の芸の特色でもある演技様式パターンの反覆が効果的に生かされる。見
所は相舞(連舞ツレマイ)だが、スッパがちらりちらりと田舎者の出方を見て真似をする、
付かず離れずの呼吸の面白さが眼目である。
 天正狂言本には、『茶ぐり』の名で載っている。
 この狂言は、大正十年(1921)岡村柿紅が歌舞伎舞踊化し(長唄)、七世坂東三津五
郎によって初演された。
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