0203胡蝶
 
                    参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか
 
〈胡蝶コチョウ〉
「蝶チョウ」
 チョウ目のガ以外の昆虫の総称。翅ハネは鱗粉と鱗毛により美しい色彩を現し、1対の棍
棒状又は杓子状の触角を具える。幼虫は毛虫・青虫の類で、草木を食べて成長し、蛹サナギ
を経て成虫となる。一般に繭は作らない。種類が多く、わが国だけで約250種を数える。
胡蝶・蝶々・古名かわひらこ。
 
「胡蝶」
 能の曲名。三番目物(鬘物カズラモノ)。観世信光作。『荘子』『源氏物語』からの引用
があるが、構想は作者の創意による。
 まず後見が、紅梅又は白梅の立台を舞台正面先に出す(省略する場合もある)。舞台
は早春、梅の盛りの頃。和州三吉野の僧(ワキとワキツレ)が都へ上り、一条大宮の旧
跡を訪れる。梅花を眺めるうち、一人の女性(前シテ)が呼び掛け、胡蝶と生まれ、春
夏秋の花には戯れながら、早春の梅花には縁のない身であることを嘆き、女に姿を変え
て現れて来たことを語って消え失せる。僧の転ウタた寝の夢に胡蝶の精(後シテ)が現れ、
仏果を得て梅花に会えたことを喜びながら、花に飛び交う胡蝶の舞(中之舞チュウノマイ)を
舞い、霞に紛れて消えて行く。
 
 胡蝶と云う可憐な印象を生かした作品で、舞も太鼓入り中之舞(金剛流のみ太鼓なし
)で軽く、構成もあっさりしている。後シテは天冠テンカンに胡蝶の立物を付ける。面は、
流儀により品格の高い女性を表す増女ゾウオンナを用いる場合と、少女を表す小面コオモテを用
いる場合とある。普通は中入を持つ能であるが、小書コガキ演出「物着モノキ」の場合は中入
がなく、後見座で後シテの装束に替える。また、最後にシテは霞に紛れて飛び去る呈テイ
を表し、そのまま橋掛へ行き幕へ入ってしまい、ワキが見送って留拍子トメビョウシを踏む、
小書演出「脇留ワキドメ」もある。
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