[詳細探訪] 参考:小学館発行「万有百科大事典」ほか 〈オモト〉 オモト万年青はユリ科の常緑多年草で、原産地は日本・中国である。本州中南部、四 国、九州に分布し、福井県敦賀には天然記念物に指定されている自生地がある。地下茎 は肥大し、茎節から太い髭根ヒゲネを出す。葉は幅10p、長さ30〜40pの肉質で光沢があ る。春に葉の中心から短く太い花茎を出し、淡黄色の6弁の小花を筒状に着ける。液果 は球形で径1p内外、普通は赤熟する。 現在栽培されているものは、殆ど園芸種である。初めは薬用植物として栽培され、そ の根茎にはロデインrhodeinと云う配糖体が含まれ、強心剤などに用いられた。わが国特 有の園芸植物として愛培されたのは江戸時代中頃からで、享保二十年(1735)頃には斑フ 入りの各種が知られ、文政年間(1818〜30)の『草本育種』には品種名が付けられて、 既に60種が記載されていた。オモトの流行には周期があり、明治初期には一時衰えたが、 中期には再び盛んになり今日に及んでいる。 品種は葉形による変化や斑の入り方などによって細分され、観賞される。大葉、細葉、 立葉、丸葉、卷葉、剣葉などの他、胡麻斑、根岸斑、虎斑、砂子斑、覆輪フクリンなどがそ の例であり、また、べっこう、羅紗ラシャ地、くし目地、鉄扇など葉の地質によっても分け られる。草姿によって鉢を合わせ、模様などを変えて楽しむが、全て排水のよい素焼き 系のものが良い。 植え替えは春秋の2回行い、春は4月、秋は10月で、何れも中旬が良い。培養土は肥 沃な玉土を数種作り、荒目の砂や鹿沼土と混ぜて用いる。野生種に近いものは実生ミショウ で良いが、品種のものは全て株分けか、又は下の方の古い茎を切り離して別に植え替え、 新しい芽を出させて繁殖して行く「芽吹き法」などの無性繁殖による。冬季は水を控え、 葉に出る赤星病に注意し、夏は半日陰で栽培する。 品種として、薩摩富士・駿河富士・月光・四海波・雪渓錦・青海波・白牡丹ハクボタン・長命楽・ 富国殿などがある。