65 育ててみたい植物〈ムラサキ〉
 
〈ムラサキ〉
 ムラサキ紫はムラサキ科の多年草で、わが国の各地の山地の草原に自生し、根は太く
紫色である。茎は高さ50p内外、葉は互生し、披針形で鋸歯はない。花は白色、小形で6
〜7月に咲く。花冠は、下部は筒状で上部は5裂する。
 
〈染色〉
 ムラサキの根はシコニンと呼ばれる色素を含み、昔から紫染の原料として用いられ、
『万葉集』にも詠まれている。
 紫染めは、搗き砕いて粉にした紫根シコンを木桶に入れ、これに水を加えて揉むと紫色の
紫液が出来るので、その中に布を入れて、それを取り出してサワフタギ(ニシキギ・ニシ
ゴオリとも)又はツバキの灰汁アクで媒染する、と云う作業を交互に数十回も繰り返し、3
〜7日もかけて完了する。根の分量、液の濃度、灰汁の濃度などによって色調が違ってく
るので、特殊な技術を必要とする。
 なお、同属のイヌムラサキは根にシコニンを含まないので、染料にはならない。
 
〈薬用〉
 紫黒色の根を紫根と称して、漢方では解熱、解毒剤として、麻疹マシン、皮膚病に用い
る。外用としては華岡青洲ハナオカセイシュウの創方である紫雲膏シウンコウ(潤肌膏ジュンキコウ)が有名
で、紫根と冬帰トウキを主薬としたこの軟膏は、火傷、凍傷、ひび、あかぎれ、切り傷など
に大変良く効く。その色素はアセチルシコニンと云い、殺菌、肉芽形成促進作用がある。
 中国から輸入している軟紫草ナンシソウは、新疆シンキョウムラサキグサの根である。
 
関連リンク [51鹿角の紫根染と茜染]
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