0102b園芸蘭科植物(続き)
 
ポネロルキス属(ウチョウラン属) 例 アワチドリ・サツマチドリ
 北海道中部から九州,シベリア東部以南,ヒマヤラ地域にかけて約20種分布します。
 日本には3種知られ,草地や岩上に生えます。
 小型の多年草で,オルキス属に似るが,地下茎は小さく,葉は少数で,根出葉はあり
 ません。
 花序は少数花からなり,花は一方を向いて咲く傾向があります。蘂柱の先端の組織が
 伸びて花粉塊の先にある粘着体を包みますが,完全になっていない点もオルキス属と
 異なります。
 種としてのウチョウランは,日本の山草愛好家の間で変異品がよく栽培されています。
 
[マ]
マクシラリア属
 熱帯及び亜熱帯アメリカに約300種と云われ,樹木又は岩上に着生します。
 トリゴニディウム属に近縁ですが,萼片は基部から開き,コップ状にならず,側萼片
 の基部は,普通メンタム(凹み)を形成します。
 植物体は変化に富み,根茎が長く伸びるものや,短くて束生するもの,偽鱗茎を欠く
 もの,葉の先が2裂するもの,葉形が両側から扁圧された形のものなどがあります。
 花も大きいものは径10pを超えるもの,小さいものは径5o足らずのものがあり,姿
 の変化も多い。
 
マスデバリア属
 熱帯アメリカの涼しい山地に約30種分布し,樹上や岩上に生えます。
 根茎から分かれた茎は直立し,短くルーズな筒状の莢に隠れて外からは見えません。
 革質又は多肉質の葉は柄が長く,茎頂に1枚付きます。萼は互いに合着し,筒状かコ
 ップ状になり,普通裂片の先が尾状に尖ります。側花弁と唇弁は小さく,萼筒ガクトウの
 中に隠れます。柱頭は1個,花粉塊は2個です。
 
ミルトニア属
 南アメリカの熱帯地域に約20種分布する着生植物です。
 オンシディウム属やブラッシア属の仲間です。アスパシア属によく似ますが,唇弁は
 蘂柱と基部同士が合着しません。
 蘂柱は短く,上部に1対の耳状付属体があります。花粉塊柄は短く幅広です。
 根茎がやや伸びて株が広がり,偽鱗茎は1葉性です。花茎は偽鱗茎の基部から伸長し,
 1〜多数花が総状に咲きます。
 近縁のミルトニオプシス属は蘂柱の耳状付属体はなく,花粉塊柄が細長く,根茎は短
 く,1〜2葉性の偽鱗茎が塊になります。花粉塊は2個です。
 
[ラ]
リカステ属
 メキシコ,西インド諸島からボリビアにかけて約25種,着生又は地生です。
 マクシラリア属,クシロビウム属などと近縁で,花茎は偽鱗茎の基部から出ます。ア
 ングロア属と最も近縁ですが,花の開き方に違いがあり,唇弁の中央裂片は相対的に
 大きい。クシロビウム属と比べると花が大きく,1花茎に1花,細長い花粉塊柄など
 で異なります。
 
リパリス属(クモキリソウ属) 例 フガクスズムシ
 世界に広く分布し,約250種あり,熱帯地方の山地に特に種類が多い。
 地生,岩上生,ときに着生し,茎は偽鱗茎又は塊茎の上に立ち上がります。
 葉は薄く,やや縦襞状のもので,冬期に枯れるもの(地生)と,革質で縦に二つ折れ
 て常緑性(着生)のものとがあり,後者は別属にされることがあります。
 花は緑色で透き通ったものが多いが,黄色,紫色,橙色系の種もあり,一般に小さい。
 萼片は展開し,側花弁は細く,唇弁は屡々基部に小さな肉質隆起があります。
 マラクシス属に似ますが,蘂柱は細長くて唇弁側に曲がり,唇弁は下位で普通下に曲
 がり,花粉塊は4個です。
 
リンコスティリス属
 インドから中国南部,フィリピン,インドネシアにかけて約4種分布し,樹木に着生
 します。
 茎は短く,硬く,細くて樋トイ状に窪んだ葉が2列に並びます。
 花序は直立又は垂れ下がり,蜜に花が咲きます。側花弁は萼片より狭く,唇弁は3裂
 せず,距が後方へ突出します。蘂柱は短く,基部で広がり,短い脚部があり,先端の
 小嘴体ショウシタイと葯が嘴クチバシ状に突出します。花粉塊は2個ですが,それぞれに裂け目
 があり,細長い1本の柄に付きます。
 外見はエリデス属に似ますが,茎が短く葉は厚くて表面に青い筋があります。また,
 近属間の交配種が作出されつつあります。
 
レナンテラ属
 中国南部からマレーシア,フィリピンにかけて分布する着生植物で,約15種が知られ
 ています。
 植物体は大型で単軸分枝型,葉は革質で,先は左右非相称に窪みます。
 花序は円錐状,多数の花が咲き,一般に美しい。
 バンダ属,エリデス属などとよく似ますが,側萼片が特に長くなり,ほぼ平行になっ
 ているので見分けがつきます。
 唇弁は他の花被片に比べてずっと小さい。蘂柱は太く短く,花粉塊2個ずつが計4個
 となる点も特徴です。
 
レプトーテス属
 ブラジルからアルゼンチンにかけて約5種が分布し,小型の着生植物です。
 全体としてブラッサボラ属に似た感じがします。高さ10p以下,葉は肉厚で細く,表
 面の中脈が窪んだ筒状で,灰緑色です。
 花茎は短く,唇弁は3裂で,側裂片は小さく,蘂柱に接近するが斜めに開きます。蘂
 柱は短く,先がやや幅広です。花粉塊は外側に歪んだ扁平な三日月形のが2個,下側
 に大小の扁平でやや卵形のが1対,平たい盤にくっ付きます。外側の塊の付け根に小
 さな突起状の同色のものがあるのは,或いは他の1対が矮小ワイショウ化したものでしょう
 か。
 
レリア(ラエリア)属
 メキシコからパナマ及びブラジルにかけて約30種分布し,主に着生種で,地生種もあ
 ります。
 カトレヤ属やエンキクリア属に極めて近縁ですが,花粉塊を8個持つことによって別
 属とされています。しかし,カトレヤ属とは外見も酷似します。
 ショーンブルキア属やソフロニティス属とも近縁で,前者はレリア属に含めることも
 あります。
 こうした分類は人為的過ぎますが,園芸上,花の姿や植物体の性質で分けた習慣から
 と考えられます。これらの属間では交配がほぼ自由に行われ,作出された園芸品種は
 極めて多い。

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