0102園芸蘭科植物
 
               園芸蘭科植物
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
 ラン科植物は世界に約730属2万種が分布しています。人為交配種が多く,属間雑種も
約800例が記録されています。熱帯の湿った地方に種類が多く,草本で殆どは着生種で
す。寒冷地には少なく,地生種は温帯地方に多い。遠い祖先で関係があると考えられる
ユリ科と比べて際立つ点は,花が主に左右相称,多くは横向きに咲き,子房が180度捻れ
ること,また色彩と形の変化に富み,外花被片3枚のうち1枚を背萼片ハイガクヘン,2枚を
側萼片,内花被片3枚のうち背萼片と反対位置にあるものを唇弁,他を花弁(側花弁)
ということが多く,側萼片2枚が接して,基部が後方に出っ張っている部分をメンタム
(凹み)と云います。唇弁の形と色彩の変化は著しく,後方に距のでるものが多い。雄
蘂,雌蘂が合体した蘂柱ズイチュウとなり,雄蘂は多くが1個(稀に2〜3個)に減数し,
花粉は集まって花粉塊となります。果実はさく果で,種子は微小で多数,胚乳はありま
せん。
 
[ア]
アスコセンダ属
 アスコケントルム属とバンダ属との交配属で,前者の花の紅色系に,より後者の花色
 をよくしようとする意図から交配されたと云います。アスコケントルム属は小輪です
 が,バンダ属は一般に大輪で,交配品の中には花径7.5pになるものもあります。
 
アネクトキルス属(キバナシュスラン属)
 南西諸島以,インドからオーストラリアにかけて約40種が分布します。
 グッディエラ属に近縁ですが,形態は花が捻れず,唇弁は距が側萼片に隠れません。
 なお,花の前部は二叉ニサに広がり,中(胴)部は櫛の歯状になります。唇弁の中部が
 櫛の歯状にならないものをオドントキルス(イナバラン)属として別属にする意見も
 あります。
 ゼウクシネ(キヌラン)属はオドントキルス属と云われるものに似て見えますが,唇
 弁は上位にあり,花が捻れません。
 狭義のアネクトキルス属は葉に黄白色の脈紋が出るので,Jewel Orchid(英語)と云
 われます。
 グッディエラ属同様,地上部は冬枯れせず,偽鱗茎はなく,巻き型の葉のある茎の先
 に花序を出します。
 
アングレークム属
 バンダ属にやや近縁の属の中でも,唇弁の距が特に長くなる仲間の1属で,アフリカ,
 マダガスカルからスリランカにかけて約200種が分布し,栽培されるのは普通6〜7種
 です。
 近似の属に比べて唇弁は相対的に大きく,分裂せず,距の近くになると深く窪み,先
 は一般に急に尖るものが多い。花粉塊は2個,花粉塊柄はないか極めて短く,粘着体
 と接し,蘂柱は短い。
 園芸上この属名で呼ばれているものには別属の種が少なくありません(日本のフウラ
 ンも同属とされたことがある)。
 
アングロカステ属
 アングロ属とリカステ属の属間交配属で,植物体はリカステ類に似ますがやや大きい。
 一般にリカステ類より萼片が広いが,よく展開しません。側花弁は萼片より小さく前
 傾し,重なり合います。
 
ウィルソナラ属
 コクリオダ属とオドントグロッスム属,オンシディウム属の最初の3属交配種インシ
 グニスは,1916年イギリスのチャールスウォース商会によって登録され,その後およ
 そ100種の交配種が生まれています。オドントグロッスム属と,その近縁2属の交配種
 オンシディオダ属又はオンシディウム属とオドンティオダ属の交配によって美しい花
 柄の品種が生まれています。
 
エピデンドルム属
 熱帯及び亜熱帯アメリカに約400種分布し,主として着生ですが地生のものもありま
 す。
 エンキクリア属に似るが,茎は普通偽鱗茎を作らず,細い葦状です。
 蘂柱と唇弁がほぼ癒合します。花粉塊は硬く,やや平たい4個がほぼ同大です。
 エンキクリア属,ディネマ属などを含めてカトレヤ属とも近縁で,どちらに属させる
 方がよいか疑問の種類もあります。
 属名がリンネによって用いられときは,新大陸の着生ランが全て含まれていました。
 
エリデス(アエリデス)属
 中国南部以南の熱帯アジアに約40種分布します。バンダ属にやや近縁の属です。
 常緑の着生植物で,偽鱗茎はなく,葉は厚くて先が非相称に窪みます。
 花序は葉腋ヨウエキから出て下に曲がり,多花性です。花は通常芳香があり,萼片と側花
 弁はよく開き,側花弁は長い蘂柱脚部と癒合します。唇弁は3裂の傾向があり,蘂柱
 脚部と連なり,距があります。花粉塊は大小に分かれた2組が1本の柄に付きます。
 葉が棒状になるものは別属とされることがあります。
 
エンキクリア属
 アメリカ合衆国東南部以南の熱帯及び亜熱帯アメリカに約150種分布し,基本的には樹
 上に着生します。メキシコ及び西インド諸島に種類が多い。
 エピデンドルム属の1亜種とされることが多いが,枝は偽鱗茎となり,唇弁と蘂柱が
 一部だけ癒合し,ほぼ離生していることなどを重視して別属にされることも多い。こ
 れら二つの特徴から,狭義のエピデンドルムより,寧ろショーンブルキア属を始め,
 レリア属やカトレヤ属に近いと考えられています。
 本属は,偽鱗茎が普通平たくならず,花序の基部に莢がなく,果実が明瞭な3稜にな
 らない亜属と,偽鱗茎が普通平たくなり,花序の基部に明瞭な莢があり,果実に明瞭
 な3稜がある亜属に分類されます。
 
オドントグロッスム属
 中央アメリカ,南アメリカの熱帯地域の山地に約100種分布し,樹上又は岩上に着生し
 ます。
 オンシディウム属に似ますが,唇弁の基部は蘂柱と平行,その後急角度に外側へ曲が
 ります。蘂柱は長く,頂部の葯の両側に耳状付属体がありませんが,細い角状突起が
 あります。膜質の花粉塊柄が細長い。
 
オドントニア属
 オドントグロッスム属とミルトニア属との最初の交配種ライレセッアエは,1905年に
 ベルギー人によって登録され,その後今日までにおよそ350種の交配種が登録されてい
 ます。夏の暑さが厳しい日本では,高地性のオドントグロッスムやミルトニアは栽培
 が難しく,花の美しい割にあまり普及していません。厚さに比較的強いオドントグロ
 ッスムやミルトニアの原種を使って,耐暑性で栽培しやすい品種の作出が望まれてい
 ます。
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