21 椿・山茶花
 
                椿・山茶花サザンカ
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[ツバキ属]
○ヤブツバキ
 ヤブツバキ(薮椿)は日本の暖地(北限は青森県),朝鮮半島,中国の一部に分布し,
常緑中高木で高さ7〜9mです。葉は革質厚肉で光沢があり,長卵形で長さ7〜12p,幅
4〜6pです。花期は11〜4月,赤い漏斗ロウト状,径5〜8pの花をつけます。雄蘂は基
部で合着して筒状をなし,花弁の基部につきます。花後に球形の果実を生じ,径3〜4
pで1〜5種子を含みます。種子は黒褐色,径1.5〜2.5pで硬く,これを絞ってツバキ
油を取り,食用,整髪料として古来より重用されてきました。
 栽培:繁殖は実生,挿し木により,挿し木は新梢の固まる6〜7月が好期です。挿し
木後3年,実生ですと5〜8年で花が咲きます。栽培は容易で培養土は選びませんが,
排水が悪いと必ず根腐れします。また根詰まりしますと木が弱りますので,鉢植えの苗
は1〜2年毎に植え替えしましょう。
 
○ユキツバキ
 ユキツバキ(雪椿)は,新潟県を中心とする日本海側の積雪地帯に広く分布します。
太い幹は作らず,細いしなやかな幹を叢生し,高さ数mの株立ちとなります。雪に埋もれ
ても枝は折れにくいです。葉はヤブツバキに比し薄肉で鋸歯が鋭く,葉柄ヨウヘイに毛があ
ります。自生地での花期は4〜5月,花は一重の平開咲き,径6〜7pで紅色です。雄
蘂はユキ芯と呼ばれる小さな輪芯リンシン状となり,雄蘂筒ユウズイトウを作るヤブツバキと明ら
かに区別できます。ユキツバキとヤブツバキの雑種群をユキバタツバキと呼び,様々な
中間種を示します。
 栽培:繁殖はヤブツバキに準じます。積雪地以外での栽培は寧ろ難しく,冬期の乾い
た寒風から保護する必要があります。生育はヤブツバキに比し遅く,柄も短く密に茂り
コンパクトな樹形となります。
 
○サザンカ
 サザンカ(山茶花)は四国,九州から屋久島に分布する日本固有種で,高さ7〜10mの
常緑高木,木は立ち性です。葉は長円形,長さ3〜7p,幅1〜3p,主脈や葉柄に細
毛があります。花期は10〜12月,花は白色で香りがあり,径2.5〜3.5p,花弁や雄蘂は
バラバラに落ちます。子房には細毛があります。果実は球形で径1.5〜1.8p,1〜3種
子を含みます。本種とツバキの雑種起源といわれますハルサザンカやカンツバキを含め,
サザンカの園芸品種にみられます赤い色素は,ツバキに由来すると言われています。
 栽培:繁殖は実生,挿し木により,生育が早く非常に強健ですので,ツバキの台木と
して賞用されます。またツバキに比し根が粗いため,鉢植えでもあまり根詰まりを起こ
しません。耐寒力はツバキに劣りますが,東京周辺ではなんら支障はありません。
 
○ヒメサザンカ
 ヒメサザンカ(姫山茶花)は奄美大島から沖縄諸島を経て西表イリオモテ島に分布し,常緑
中高木で高さ3〜8m,枝は細く繊細です。葉は長円形,長さ2.2〜4p,淡緑色です。
花期は12〜2月,花は各葉腋ヨウエキから1〜2個を生じ,径1.5〜3pで白色,花弁は6
枚,花には甘い香りがあります。本種は香りの育種素材として重要視され,フラグラン
ト・ピンクやシナモンシンディー,アックセントなどの有名品種が育成されていますが,
この植物自体非常に愛らしく好ましい。
 栽培:繁殖は挿し木や接ぎ木により,栽培はツバキに準じます。他の原種同様,潮害
に弱く,被害を受けますと葉を全て震い,枝が枯れ込みます。
 
○サルウィンツバキ
 サルウィンツバキは中国西南部の雲南省に広く分布し,昭和37年に渡来,常緑低木で
高さ1〜5m,枝を直線的に伸ばし立ち性です。葉は長円形,革質で長さ2.5〜5.5p,幅
1〜2.5p,濃緑色です。花期は1〜4月,花は透明感のある白色からピンクで径4〜5
p,花弁は6〜7枚,雄蘂筒ユウズイトウを有し花弁の基部で合着しています。果実は径2〜
2.5pで,1〜2種子を含みます。本種の耐寒力を導入したツバキとの雑種群はウイリア
ムシー系と呼ばれ,花の少ない寒中から花をつけ,生育も旺盛です。
 栽培:繁殖は実生,接ぎ木により,挿し木の発根はよくないです。小型種のため実生
2〜3年で開花します。本種には枝が枯れ込みやすい欠点があります。寒さには強いで
す。
 
○ヤマトウツバキ
 ヤマトウツバキ(山唐椿)は中国南部雲南省の騰沖に自生し,常緑高木で高さ10m以
上,枝打ちは粗く葉数も少ないです。葉は長円形,長さ5〜11p,幅4〜5p,濃緑色
で光沢があり葉脈が明瞭です。花期は1〜3月,花は径6〜10p,花弁は6〜11枚で,
淡桃色から濃桃色,一重から半八重の変異があります。果実は球形から扁球形で径4〜
9p,種子は径1.5pです。本種の園芸品種は中国だけでも100あまり報告されており,
全て大輪の美花ですが,殆どが赤色系で花色に乏しいです。またトウツバキ系の交配品
種は,栽培上問題が多く,普及の障害となっています。
 栽培:繁殖は実生,接ぎ木により,挿し木は難しいです。接ぎ木された苗木の植栽は
容易です。ただし,寒さや寒風に弱く,一度傷みますとなかなか芽が吹かず,回復が遅
いです。関東地方でも,露地植えで育てる場合,余程好条件のところでないと難しいで
す。
 
○グランサムツバキ
 グランサムツバキは香港九竜半島に自生し,昭和37年に渡来しました。高さ3〜8mの
小高木で,枝を疎らに生じ,密な樹冠は作りません。葉はチャに似て革質で光沢があり,
長さ8〜10p,幅3〜5p,緑色で葉脈部が窪みます。花期は10〜12月,花は白色,径
10〜17p,花弁は7〜10枚,咲き進みますと花弁の先が反転し,巨大なサザンカを想わ
せます。黄色の雄蘂の束は大きく,径5pです。本種とトウツバキの交配種チャイナ・
レディーやシャンハイ・レディーは他のトウツバキ系品種より花期が早く,大輪の美花
ですが,温室内でないと花は望めません。
 栽培:繁殖は主に接ぎ木により,生育は早いですが寒風と潮害には特に弱く,露地栽
培の適地は限定されます。
 
○クリサンタ
 クリサンタは中国名金花茶キンカチャといい,中国南部の広西省の温暖多雨な常緑広葉樹林
中に自生し,昭和55年に渡来,常緑小高木で高さ2〜5m,立ち性で枝は上へ上へと伸び
ます。葉は肉厚革質で光沢があり,脈部は窪み,長さ11〜19p,幅4〜8pで緑色,新
芽は褐色がかります。花はカップ状で径3.5〜7pの黄色で,蕾ツボミ,花形ともチャによ
く似ており,長さ1〜1.5pの花柄カヘイがあります。花の寿命は3日,外側の花弁が硬い
と花は開かず,筒状で終わります。果実は径6〜8p,3室からなり,各室に1〜4種
子を含みます。
 栽培:繁殖は実生,挿し木,接ぎ木によります。本種は非常に生育が早く,年に2〜
3回芯梢を伸ばします。栽培は他種に準じますが,冬期は0℃以上に保って下さい。
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