[詳細散歩]
 
                      参考:北隆館発行「野草大百科」など
 
〈タデの仲間〉
タデの仲間(タデ属)は、わが国に50種位ある。しかし、この中にはミゾソバやイシミ
カワまで含んでいるので、普通にタデと云っているものはこれより少ない。春咲きのタ
デとしてはハルタデとサナエタデ、秋咲きのものとしてはヤナギタテ、イヌタデ、ボン
トクタデ、サクラタデ、オオケタデなどがある。
 
 タデは万葉集を始め多くの古典文学にも、「大和本草」を始めとする「和漢三才図会
」、「物品識名」などの古い書物にも採り上げられている。漢名は蓼、利根草、委葉、
苦葉、唐葉、苦菜、辛葉、陸蓼、石龍、紅龍、紅(草冠+紅)草など多数ある。古名太
豆タヅ、太良タラ、別名として利根草リコンソウ、賢草カシコグサなどの名がある。
 
 吾が屋戸の穂蓼古幹フルカラ採み生オボし実になるまでに君をし待たむ
 
と万葉集巻十一・2759にある穂蓼、水蓼ミズタデと云うのは、今日のヤナギタデのことであ
る。
 
 蓼は「和訓栞」に「爛タダレの義、辛辣をもて、口先の爛るるが如きをいう」とある辛
味のあるものを指していたことが分かる。万葉集に穂蓼と云っているところをみると、
葉ではなく花穂を香辛料として用いていたようである。
 「蓼食う虫も好き好き」と辛味の強いタデを食べている虫がいるように、人間の好み
はそれぞれ異なる、と云った比喩に用いたり、「蓼虫葵菜リョウチュウユサイに徒ウツるを知らず」
と苦い蓼を好む虫は、甘いアオイの葉に移ろうとはしないと云ったように使われている。
タデと云えば全て辛いと云う印象を持っているが、辛いのはヤナギタデとその変種だけ
である。
 従ってヤナギタデは、ホンタデとかマタデとも云われている。香辛料として栽培され、
ホソバタデ、ムラサキタデ、アオタデと云った変種や品種がある。
 
 魚や鳥など臭みのあるものにタデの芽生や若葉、花穂を生のまま添えると臭みを消し、
味が引き立つ。タデは奈良時代から用いられていたようである。室町時代の料理書に「
コイはワサビ酢、タイはショウガ酢、スズキはタデ酢、フカは実カラシの酢」とある。
臭みの強いアユやサバなどに若葉を摺って酢に溶いた蓼酢はよく合う。
 
 兵庫県赤穂市は忠臣蔵の四十七士で有名であるが、赤穂城の赤穂の地名が、赤いタデ
に因んだものと云われている。
 即ち正元天皇の時代(1259〜60)に、極めて美しい赤い穂のタデが生えた。あまりに
珍しいのでこれを献上したことから付けられたと云う。
 このタデはベニタデ或いはトウタデと云い、ヤナギタデの一品種である。
 このヤナギタデと共に蓼の代表種はイヌタデ、別名アカノマンマである。
 
 タデの方言菜としてはアイクサ、アカマキグサ、アカママクサ、オコワバナ、コンペ
トン、タゼ、タテ、タンデグサ、ナンバングサ、ホンタデなどがある。
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