[詳細散歩]
 
                      参考:北隆館発行「野草大百科」など
 
〈アザミの仲間〉
 アザミの仲間は、わが国に数十種ある。山野に最も普通に見られるノアザミやヤマア
ザミから、海岸性のハマアザミ、高山性のタカネヒゴタイまで普通はアザミと云う総称
で呼ばれている。
 多くのものは多年草で葉に鋭い刺があり、触ると痛い。頭花は筒状花のみからなり、
キクのような舌状花はなく、紅紫色の花を着ける。アザミの花は雄性先熟で頭花が開い
たばかりは、筒状花から雄蘂が伸び出し、葯が花粉を出しているが、このとき雌蘂の柱
頭は閉じていて、雄蘂が萎れた頃雌蘂が成熟する。葉はとげとげしてしているので野性
的ではあるが、花は可憐である。
 
 アザミの仲間は、どの種類も茎・葉を食べることが出来る。モリアザミ・フジアザミ・ノ
アザミ・ハマアザミなどのアザミの根は牛蒡ゴボウ根で、煮物、漬物、キンピラなど食用
となる。特にモリアザミの根は信州では味噌漬けにし、これを菊牛蒡とか山牛蒡と云っ
て土産店で売っている。
 
 アザミは、若葉を生のまま天麩羅にして食べる。葉の縁の刺は荒々しく剛直なときに
は、鋏で刺を切り落として使う。こうすると、7〜8月頃まで、茎の上方に付く葉を揚
げて、美味しく食べられる。
 頭花は摘み集めて、総苞ソウホウ付きのまま、3〜4倍量のジン、ホワイト・リカーなどに
漬けると、3〜4ケ月で、少し辛い黄褐色のリキュールが爽やかに仕上がる。マリモの
ように容器の底に沈んでいる頭花は、飲み始める頃に引き上げる。
 これらは、ノアザミだけでなく、アザミ類全てに共通する食べ方でもある。
 
 アザミは多年草なので株分けして殖やせるが、種子繁殖も出来る。しかし、植えたも
のは連作していると弱る。
 北欧ではアザミの紫色は稲妻から得られたものとされ、「雷神の花」として落雷除け
とされている。
 またアザミは、スコットランドの国花となっているが、これはデンマークがスコット
ランドを攻めたとき、斥候(間諜のこと)が王城の近くまで来たとき、アザミの刺が刺
さったために捕らえられ、攻め込む情報が得られたために国が救われたと云う故事から
来ている。
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