05d 日本庭園の手法2
△間知積ケンチヅミ
間知積は,角錐形の間知石を積み上げるもので,擁壁,護岸などの石積に利用されま
す。裏込みにコンクリートを使用した練積,栗石などで極めた空積,斜めに組み負わせ
る谷積,石を平に使って縦の目地を交互に組み合わせた布積などがあり,いずれも随所
に水抜きの穴を開けます。
△野面積ノヅラヅミ
野面積とは,自然石の比較的面の平らな部分を正面にして積面を揃え,大小の石を取
り合わせて積み上げる方法です。普通は高さに比例して上部を後へずらしますが,城壁
などでは,積面に反りを持たせるものもあります。表面の積石よりも控えの部分に石を
多く使うことにより,石積に強度を持たせます。また裏込の栗石の大小を取り混ぜ,安
定を図るとともに水はけをよくします。
△崩れ積クズレヅミ
石の大きさや形の不規則なものを,石面を揃えないで凹凸をつけながら石を噛み合わ
せて積み上げます。高さは石3個位までとします。小石を支込カイゴメや詰物ツメモノに使いま
すと見栄えがしません。あまり石に手を加えることなく,石の間に根締めを噛ませて仕
上げることがあります。
△乱れ積ミダレヅミ
乱れ積とは,石の種類や石の大小を選ばないで積んだ石積です。従って石の大小の配
置の面白さ,石そのものの噛み合わせの面白さなどを考慮せず,石積そのものの強固さ
を主眼として積み上げたものですが,それが乱れ積の妙味でもあります。
△目地メジ
石や煉瓦などを敷き並べたり,積み上げたときの継ぎ目を目地といいます。目地の巾
の大小,深浅,使用材料などは意匠上重要なことですので,使用素材や使用場所などい
ろいろ工夫されることとなります。
△合い場アイバ
石積又は石張りなどで,石と石の相接する部分のことをいいます。相接したところに
目地をつけないで,直接突き合わせた部分をいいます。
△天端テンバ
石積天端,擁壁天端などといわれ,上端ウワバともいいます。自然石などで石組みする
場合,その石の個性を活かして不規則な面を上に向けて据え付けるときにも,その上面
になる部分を天端といいます。
△面取メントリ
面取とは,石材などの材料を直角に仕上げたとき,その部分の破損を防ぎ,耐久性な
どを考慮してあらかじめ角カドを落とすことです。ときには,面取は一つの意匠になるこ
ともありますので,その形などいろいろ工夫されています。
△薬研彫ヤケンボリ
薬研彫とは,石材に文字を彫刻するときの断面仕上げの手法です。漢方薬において,
薬を砕くときに石板にできた溝に由来するといわれています。梵字ボンジを彫るときなど
に用いられます。
△敲きタタキ
敲きは,土を盛って配石以外の軒内全面をたたき打つことですが,露地内における茶
席待合,その他構造物の軒下は,軒内化粧としていろいろ工夫を凝らします。使用する
土は三和土,深草土ですが,細かい青砂利や赤砂利と石灰をほぼ半々の割合で固く練り,
苦汁ニガリを入れながらたたき締め,厚さは10p程度です。
△すさ壁スサカベ
壁の亀裂を防ぐ目的で,壁材料の中に混和するものをすさスサといい,材料は藁ワラなど
の繊維質です。特に化粧のためにすさを入れて塗り上げた壁をすさ壁といいます。
△桧皮葺ヒワダブキ
桧皮葺は,古くは寝殿造の屋根や,神社仏閣の屋根に使われています。ヒノキの皮を
剥ぎ取り,一定の寸法に切り揃えて幾重にも重ねて葺く方法で,独特の優美な曲線を持
たせるのに有利な葺き方です。屋根の上部を瓦で葺いて軒先のみ桧皮葺きにし,又は上
部を桧皮葺きにして軒先のみを瓦で葺く方法もあります。
△正真木マサキ
正真木とは,庭園の中心となる主木のことです。主として常緑樹が使われ,特にマツ,
マキなどが使われます。この正真木が決まることによって,他の役木ヤクギの位置が決定
されるのです。
△刈込みカリコミ
刈込みとは,庭木に手を入れて樹形を整えることです。例えば枯山水に庭では,小面
積故に,石組その他全体の均衡を保つためと,樹木を山などに象徴したり,各種の造形
の素材とするために工夫されます。江戸時代になりますと技巧的になって,刈込みを庭
の主景としたり,規模の大きい大刈込みも作られました。
△施工具セコウグ
施工具には重量運搬用具,造庭用具,樹木手入れのための用具などがあります。古く
から使われてきています施工具を紹介します。
@神楽カグラ:井桁に組み合わせた枠に心棒を通し,その心棒を廻すことによって綱を
巻き,その力で重量物を引く道具です。
Aコロと木馬キウマ:木組の橇ソリの形をした枠を木馬といい,その上に重量物を載せ,道
坂との間にコロという金棒又は木の棒を入れ,その上を転がして運搬する道具です。
B長柄鋏ナガエバサミ・長柄鋸ナガエノコギリ:竹竿の先に鋏(鋸)を取り付け,鋏(鋸)に綱
を取り付けてその綱を引くことによって鋏(鋸)の作用をする道具です。枝先の長
い木の手入れに使います。
C手箒テボウキ:小型の箒で,長さ40p位の竹の穂で作ったものです。細かく土を均すた
めの道具です。
Dコキ板:台形をした板で,手箒同様,土を均すのに用い,また,土を細かくするも
のです。
参考 養賢堂発行「造園事典」
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