03 庭石の産地
庭石の産地
〈庭石とは〉
△庭石の定義
自然の岩石で庭園に用いられる素材を「庭石」といいます。多くの場合,天然に一塊
となっており一個の個性的表徴を活用する他に,石組や石垣のように庭園空間構成素材
として個を主張しない使い方もありまいす。
△庭石の分類
庭石は本来持っています岩質の他に,色,錆サビ,型状その他使われ方によっても様々
な属性が要求されます。特に他の素材と著しく区別されることは,それぞれの素材がで
きるだけ人工の加わらない状態で,最大限にその特性が生かされることです。それ故そ
の分類法も規定されてきます。このため地質学上同様な産地においても,一山違えば,
また一谷越してもその岩質が微妙に違いがありますので,その産地名と共に理解される
のが常です。
1 産地地形による分類
@山石
山地の表面又は地下から掘出されます。多くは錆サビがついていますが,地下のもの
はそれほどでもなく,角稜が多く目立ちます。例えば,筑波石,丹波石,生駒石,
鞍馬石はこれに入ります。
A沢石
比較的弱い水流を受けて移動したもので,あまり甚だしく磨減されていません。沢
石の名称の如く,上流の沢近くに産出します。多くの主要な庭石はこの沢石であり
ました。
B河石
大量の激しい水流に押し流され,磨減,欠損も大きくなります。河蝕によって石の
表面は比較的変化が少なくなります。中以下になりますと転石として石垣等に多く
利用され,更に小さな石では畳石等も採取できます。
C海石
海岸近くに産する石が海中に落ち込み,海波に洗われ侵蝕されたものをいいます。
関西の伊予青石が高名です。
2 空間構成の用途による分類
@役石
庭空間構成上主要なポイントに使用される位置に応じた名称で,三尊石,拝石,鏡
石,前石,控石,橋挟み石,軒内役石(沓脱石),つくばい,滝口などに必要な役
石。
A飛石
実用的意味の他,美的空間構成要素としての石で例えば,短冊石,延段石,畳石,
沢飛,沢渡等をこれに分類しています。
B組石
石組の中核をなす重要な石。
C実用石
構造力学的安定を目的としますが,庭園の場合の特質として,常に美的配慮がされ
ています。例えば積石,土留石,敷石,段石,縁石,挿石,土台石(葛石),屋根
板石,張石,台石,道しるべ石,標石,基礎石等があります。
3 石質及び産地による分類
地質学的には同様の扱いを受ける石でも,利用上の特性から産地での産出状態等も
ほとんど切り離して考えられない場合が多く,水石,盆石等同様に産地名と共に呼
ばれることが多いです。
凡例
◎現在良く使われている
庭石産地一覧(昭和40年代後半のデータ) ○現在使われている
●殆ど使われていない
秋田 雄勝郡院内 院内石
岩手 岩手郡岩根 鉄平石 ◎
東東磐井郡室根 折壁みかげ
山形 山形市山寺 山寺石
西置賜郡上山 鉄平石 ◎
宮城 松島 松島石 ◎
石巻市 仙台石
福島 福島 福島石 ○
田村郡三春 三春石 ○
〃 小野町 浮金石
石川郡江持 須賀川石
耶麻郡高郷萩野 萩野石
会津郡只見村入叶津 赤玉石
新潟 中蒲原郡鍋倉山 鍋倉石 ●
糸魚川姫川 赤玉石 ●
両津市南方 〃
茨城 水戸 寒水石 ◎
稲田 稲田みかげ ◎
筑波 筑波石 ◎
栃木 那須 ボク石 ◎
宇都宮市大谷 大谷石 ◎
群馬 渡良瀬川上流 渡良瀬みかげ
多野郡吉井町多湖 多湖石 ◎
〃 鬼石町 三波石 ◎
埼玉 秩父地方 秩父石 ◎
千葉 山武郡成東町 房州石
君津郡上総町 〃
安房郡鴨川 〃
〃 鋸南保田 元名石
東京 多摩川中流 多摩川砂利
奥多摩 奥多摩石 ○
神奈川 鎌倉 鎌倉石 ○
大磯町 大磯砂利 ◎
足柄下郡 六方石 ◎
小田原市 根附川石 ◎
足柄下郡真鶴 小松石
〃 湯河原 白丁場石
相模 相州ごろた ◎
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