03e 京都歳時記[花鳥風月]その二
 
〈十二月〉
 
△霰アラレ・霙ミゾレ
 冬深き外山の嵐冴え冴えて すそ野のまさ木霰降るなり 後鳥羽院
 
△氷
 わたの原ふかくや冬のなりぬらん 氷ぞつなぐあまのつり舟 式子内親王
 
△梟フクロウ
 山深みなかなか友となりにけり 小夜サヨふけがたの梟の声 慈円
 
△木枯
 色々に散りし紅葉もおとたえて 月影さむし木枯の空 隆信朝臣
 
△水鳥ミズドリ
 物思はぬ人のきけかし山里の こほれる池にひとりなくをし 藤原定家
 
△歳暮
 あらたまの年のをはりになるごとに 雪もわが身もふりまさりつつ(古今集)
                                   在原元方
 ゆく年の惜しくもあるかなますかがみ 見るかげさへに暮れぬと思へば(古今集)
                                    紀貫之
 ひととせの暦を奧に巻き寄せて 残る日数のほどぞ少なき 正三位知家卿
 
△埋火ウズミビ
 うづみ火のあたりに近きうたたねは 春の花こそ夢に見えけれ 藤原俊成
 
△炭竃スミガマ
 としを経て爪木とりくべ炭竃に 煙をたえぬ大原の里 権大納言公実卿
 大原や小野の炭竃雪降りて 心細げにたつ煙かな 大納言師頼卿
 
ビワ ビワの花咲く年の暮れです。ビワの和名は,中国名枇杷の音です。葉の形が楽器
 の琵琶ビワに似ているので云います。ビワの花期は十一月〜十二月,枝の先に鈴のよう
 に白い小さい花を多数付け,果実は翌年六月に熟します。中国原産ですが,本州西部
 ・四国・九州の山地の石灰岩地帯に野生化しています。わが国の洪積世や鮮新世から
 種子の遺体は未だ知られていません。一方ではわが国の種は天然の野生とする説もあ
 ります。中国においては中南部に広く栽培し,わが国へは良い品種が度々伝来しまし
 た。野生化のものは果皮が薄くて食べられません。ビワは常緑樹なので枝が茂ると日
 当たりが悪くなりますので,庭の南に植えると病人が絶えないと云う伝えもあります。
 
ロウバイ ロウバイの花は淡黄色で光沢があり,十二月から二月に咲く落葉低木で,蝋
 梅ロウバイとは花が蜜蝋ミツロウに似ているので云います。朧月ロウゲツ即ち旧暦の十二月に咲
 くから朧梅と云う説は,字が違うので否定されています。ロウバイは芳香があり,花
 の少ないときにウメより早く咲きますので,京都においてはよく庭に植えてあります。
 ロウバイは中国中部の原産で,宋代や明代から蝋梅の絵があり,わが国においては江
 戸初期に朝鮮から渡来したと云います。いろいろな園芸品種があります。トウロウバ
 イは花が大きく径3〜3.5p,花弁は広楕円形,檀香梅ダンコウバイとも云います。

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