05 国民公園「皇居外苑」
 
             国民公園「皇居外苑」
 
〈皇居外苑のあらまし〉
 皇居外苑は,昭和24年4月に旧皇室苑地の一部を国民公園として開放したものです。
 この皇居外苑は,皇居前広場を中心とした皇居外苑地区,皇居の北側に位置する北の
丸地区,及び12の濠によって皇居を取り巻いている皇居外周地区からなり,面積115haあ
り,このうち,濠の水面部は合わせて37haに及びます。
 皇居外苑地区は,クロマツの点在する大芝生広場と江戸城の佇まいを遺す濠,城門な
どの歴史的建造物とが調和し,わが国を代表するシンボル的な公園として親しまれてい
ます。
 また,江戸城の城郭は,その規模においてわが国随一のもので歴史的な価値が高く,
その名残りを最も留めている濠部を中心に「特別史跡江戸城跡」として文化財に指定さ
れています。
 北の丸地区は,旧近衛連隊の跡地を苑地に整備し,同44年4月に公開され,面積は19
haあります。皇居内のうちで一般開放されている東御苑を挟んで皇居外苑地区と連絡し,
一体的な公園利用が可能となっています。小鳥の囀サエズる森林公園として散策や自然観
察に利用されています。
 このように本苑は,皇居の森と一体となり都心においては最大の緑地と水辺地を有し,
公園利用のみならず,自然環境保全及び都市景観保全上重要な地域となっています。こ
の貴重な国民の財産が後世に引き継がれるようきめ細かな管理を行っています。
 
〈二重橋〉
 皇居前広場から正門を経て宮殿へ至る濠に二つの橋が架かっており,手前の橋が「正
門石橋」,奧の橋が「正門鉄橋」です。
 「二重橋」は一般にこの二つの橋を総称して云われていますが,厳密には奧の橋を指
します。奧の橋はかつて「下乗橋」と云われ,橋桁を支えるため,中途に台があり二重
構造となっていたことからこの名が付きました。現在の橋は,同39年6月に架け替えら
れたものです。
 これらの橋は通常は使用されず,新年の一般参賀や外国賓客の皇居訪問等,宮中の公
式行事の際に利用されます。
 
〈クロマツ〉
 皇居前の大芝生広場に点在しているクロマツは約2千本あり,皇居内の深い森と対照
的に,開放的でしかも荘厳な雰囲気を保持し,皇居外苑を代表する美しい風景となって
います。
 江戸城築造前はこの一帯は入江となっていて,丘陵部にはクロマツが自生していまし
た。皇居前の広場に植栽され始めたのは明治21年からで,その後,昭和14〜18年かけて
実施された「皇紀二千六百年記念宮城外苑整備事業」により,現在のような姿になりま
した。
 
〈桜田門〉
 桜田門は寛永カンエイ13年(1636)に修築され,大正12年の関東大震災により破損し,そ
の際に鉄鋼土蔵造りに改修されました。
 江戸城の各門の多くは,第一の門と第二の門との中間に枡形(四角形)の広場のある
「枡形城門」の形式が採られ,戦略上有利な立体的な門の形となっているところに特徴
があります。
 この桜田門枡形は15間×21間あり,現存している城門の中では最も広い規模を有し,
「枡形城門」の形態が良く保存されているため,昭和36年6月,国の重要文化財に指定
されています。
 
〈和田倉噴水公園〉
 和田倉地区にある噴水公園は"継続性と新たな発展"をテーマとしており,民間協力を
も得て,皇太子殿下のご成婚を機に平成7年に完成しました。この噴水公園は,今上天
皇のご成婚を記念して昭和36年に造られた高さ8.5mに吹き上げる大噴水を再整備し,新
しく造りました高さ5.5m,長さ30mの落水施設やモニュメント(記念碑)とを流水施設に
より結んでいます。
 噴水の運転に連動した水中照明も設備されており,また,水はお濠の水を濾過した上
で循環利用しています。
 
〈北の丸公園〉
 北の丸公園は,昭和30年代後半に旧近衛連隊等の多くの建物を撤去し,森林公園とし
て造成されたものです。
 外周部は皇居の森と一体感を保つため,クスノキ,タブノキ,スダジイなどの常緑樹
が植栽されています。
 中央部には明るい芝生地と池が配置され,その周辺にはヤマモミジ,ケヤキ,コナラ,
クヌギなどの落葉樹や花木があり,野鳥の好む「実のなる木」も多く植えられ,秋には
美しい紅葉が見られます。
 また,代表的な樹名を当てながら散策できるグリーンアドベンチャー・コースも整備さ
れています。
 
〈千鳥ケ淵〉
 千鳥ケ淵は「千鳥」の形をしているために名付けられたと云われています。かつては
半蔵濠と繋がっていましたが,明治33年に道路建設のため埋め立てられ,濠が二分され
ました。
 千鳥ケ淵や半蔵濠の堤塘テイトウ(土手)には,ソメイヨシノやヤマザクラなどが植栽さ
れ,堤塘の上部にある千代田区の管理する千鳥ケ淵公園のサクラと一体となり,都内に
おいても有数の桜の名所となっています。
 
〈濠の生き物と水の浄化作戦〉
 濠にはコイ,ソウギョ,ワカサギなど17種もの魚が生息しています。野鳥ではカワウ,
コサギ,カイツブリなどが年間を通して生息し,秋から春にかけてはキンクロハジロ,
ヒドリガモ,ハシビロガモ,ユリカモメなどの冬鳥が大量に飛来します。
 このように濠の水域は生き物たちにとっても格好の生息地となっていますが,濠に入
る水が少ないので水が停滞するため,水質が悪化し,生物への影響や美観上の面で心配
されています。
 このため環境庁においては濠の水を浄化する施設を建設し,平成7年度から運転して
います。
 
〈田安門と清水門〉
 田安門は江戸城の北部に位置し,建立以前のこの付近は田安台と称した田園地帯でし
た。この門も枡形門でその創立年代は明らかではありませんが,慶長ケイチョウ12年(1607)
には存在していて,現在の門は寛永カンエイ13年(1636)に再建され,現存する門の中にお
いては最も古いものです。
 清水門は北の丸の東門で,万治マンジ元年(1658)に再建されたものです。
 両門とも江戸城の遺構として貴重なため,昭和36年6月に国の重要文化財に指定され,
文化庁において直接管理しています。
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