05a 飲食に関わる短歌
△酒
いく千代も絶ずそなへむ六月の けふのこざけも君がまにまに(年中行事歌合)
△白酒
石臼をみせにかざりて旅人を 引きとめてうるふじの白酒
(扶桑名処名物集 駿河 木春)
一杯でおかれぬ味のよし原と かさねて通る不二の白酒(同 乗方)
△酒作
あぢ酒の霞し空に似たる哉 あまけの月のしぼり出つゝ(七十一番歌合 上)
我恋は忍ぶとすれどさか瓶子 口こそつゝめ色に出つゝ(同)
△半田酢屋
下男つかふ支配は仕入れ時 くちをすくする丸勘の店(扶桑名処名物集 駿河 木春)
△酢商
さもこそは名におふ秋の夜半ならめ あまり澄たる月の影哉(七十一番歌合)
いつまでか待宵ごとの口つけに あすやあすやといふをたのまむ(同)
△塩
わくらはに問ふ人あらばすまの浦に 藻塩垂つゝわぶと答へよ
(古今和歌集 十八雑 在原行平朝臣)
もしほやく煙になるゝすまのあまは 秋たつ霧もわかずや有らん
(拾遺和歌集 十七雑秋 よみ人しらず)
たごの浦にかすみのふかくみゆる哉 もしほの煙たちやそふらん(拾遺抄註)
君まさで烟たえにし塩がまの 浦さびしくも見え渡る哉(顕注密勘 十六)
絶てみぬもしほの煙立かへり 昔にかすむしほがまのうら(近世畸人傳 四 僧似雲)
しほたれし昔の人の心まで けふ汲てしるすまの浦なみ(同)
身にぞしむ又こりずまにやく汐の 煙も絶し跡のうらかぜ(同)
△塩商
あきなひの秋のあたひも高潮の 今宵ぞ月の名をもうるなる(七十一番歌合)
思ひ初るむねのやきての塩けぶり なびきなびかずせめてとはゞや(同)
△味噌商
夏まではさし出ざりしほうろみそ それさへ月の秋をしるかな(七十一番歌合 上)
うとくのみならの都のほうろみそ ほろほろとこそねはなかれけれ(同)
△納豆
節分の茶には入ずて大福寺 皮山椒もまじる納豆(扶桑名処名物集 遠江 正雄)
△火乾魚(ひぼしのあゆ)
雲まよひほしのあゆくとみえつるは 螢の空にとぶにぞ有ける(拾遺和歌集 七物名)
△魚條
まちえたる人のなさけもすはやりの わりなく見ゆる心ざしかな(吾妻鏡 十)
△鮓スシ
口のうちにはおとの高くきこゆるは 喉を飛こす雀鮨かも(後撰夷曲集 二夏)
△豆腐商
故郷はかへのとだえにならどうふ 白きは月のそむけざりけり(七十一番歌合 中)
恋すれば苦しかりけりうちどうふ まめ人の名をいかでとらまし(同)
△香物
大かうの物とはきけどぬかみそに 打つけられてしほしほとなる
(後撰夷曲集 九雑 澤庵和尚)
△梅干
むかし見し花のすがたはちりうせて しはうちよれる梅ぼうしかな
(江戸砂子 五下 澤庵和尚)
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