06b 野菜「根菜類−直根」
◎ゴボウ 牛蒡
キク科 原産地:ユーラシア大陸北部
プロフィール:ゴボウを食用としているのは,わが国だけです。原産地においては,
野生種を薬用にするのみです。中国においても薬用として解毒,解熱,鎮咳などの治療
に利用されており,食用とはされていません。
わが国へは中国から渡来したと云われており,その記録は平安時代の『本草和名』に,
キタキス,ウマフブキの名で記載されています。
中国において薬用として用いられていましたように,その成分には多くの効能があり
ます。炭水化物の一種であるイヌリンや,繊維質のセルロース,リグニンなどを沢山含
んでおり,これらが胃や腸を洗浄する働きを持ちます。また,悪性細菌を増殖させず,
逆に良性細菌を増やす働きもあり,ビタミン合成を活発にする効果もあります。
根の形状は,品種によって異なりますが,一般に長さは30〜50pで真っ直ぐに伸びま
す。葉は根出葉で,形は心臓形,40p程度の長さです。
長根種と短根種に分かれ,長根種には滝野川,渡辺早生,中の宮,砂川など,短根種
には大浦,萩があります。堀川ゴボウ(京野菜の項参照)は滝野川を特殊栽培したもの
の呼称で,品種名ではありません。
△食べ方と効能
晩秋から初冬が最もゴボウの美味しい時期です。泥付きのものと,洗ったもの,カッ
トされたものが売られていますが,手間はかかりますが泥付きの方が断然風味が良い。
即ち,ゴボウ独特の風味や旨味は,皮にあるのです。太さが均一で太過ぎないもの,髭
根ヒゲネや瘤コブのないもの,肌の綺麗なもの,適当な湿り気のあるものが良質です。乾燥
して折れたもの,皹ヒビ割れたものは古いゴボウなので,スが入っていることが多い。保
存するときは,泥付きのまま濡らした新聞紙に包んで冷暗所に立てて置きます。土に埋
めますと春まで保ちます。
水洗いしたものは,出来るだけ早めに使いきって下さい。皮の部分に風味があります
ので,皮は剥かずに束子タワシで擦るか,包丁の背でしごいてこそげ落とす程度にして下さ
い。空気に触れますと酵素の働きによって直ぐに褐変しますので,切った端から塩水や
酢水に晒します。また酢湯で茹でますと,白く茹で上がります。
繊維は縦に走っていますので,歯応えを楽しみたいときは繊維に沿って切り,柔らか
めにしたいときは笹掻きにします。
ゴボウは,野菜の中において食物繊維が飛び抜けて多く,大腸において発ガン性物質
を掃除し,高血圧を改善させる働きも期待できます。また炭水化物の一種のイヌリンを
含むのも特徴で,ゴボウ特有の歯応えはこのイヌリンによるものです。ひのほか,ビタ
ミンCやカルシウム,鉄も含まれています。
◎ホースラディッシュ わさびダイコンとも
和名:西洋わさび,陸オカわさび アブラナ科 原産地:ヨーロッパ南東部
プロフィール:ホースラディッシュは繁殖力旺盛な野菜で,殺菌作用の成分を持ち,
薬用としても用いられていました。
わが国には明治時代初期に,北海道開拓と同時にアメリカから渡来し,そのまま野生
化しました。北海道においてはこれをアイヌワサビと呼び,ワサビの代用品として現在
も用いられています。長野県を中心に栽培されており,日本古来のワサビが主に清流の
中において栽培されるのに対して,このホースラディッシュは畑において栽培されてい
ます。
根の太さは3〜5p,長さは30〜50p,根の中身は白く,ワサビに似た芳香はします
が,香りや辛味は弱い。辛味の成分はワサビと同じミロン酸カリウム(シニグリン)で,
生を卸したものは,風味が直ぐに逃げてしまいます。乾燥粉末にして着色し,辛子粉や
澱粉などを加えて,粉ワサビや練りワサビの原料にされます。
夏にアブラナに似た白い花を咲かせます。涼しい気候の下において栽培され,市場に
は年中出回っています。
△食べ方と効能
ホースラディッシュはセイヨウワサビとも呼ばれ,日本のワサビにように辛味を持っ
た野菜で,根は白色(日本のワサビは淡緑色)です。
辛味は野性的な風味を伴った辛さで,刺身や寿司に合わないことから普及しませんで
した。強い辛味の成分は,シニグリンと云う配糖体が酵素によって分解されて生じたア
リルマスタードオイルと云う物質です。
イギリスにおいては,卸してローストビーフの付け合わせにしたり,肉の甘味をベー
スにしたソースや,ドレッシングと合わせたりして辛味を楽しんでいます。
わが国においては専ら乾燥,粉砕して,粉ワサビを作る原料に用いられます。
利用直前に卸しますと,風味が活きます。残ったものは,レモン汁を掛けて置きます
と,変色しません。保存のときはラップに包んで冷蔵保管して下さい。
栄養的には,食物繊維としてビタミンC,カルシウムを比較的多く含みます。
◎サルシフィ バラモンジン(ムギナデシコ)とも
和名:西洋ゴボウ キク科 原産地:ヨーロッパ南部
プロフィール:サルシフィはヨーロッパやアメリカに分布し,その姿形がゴボウに似
ていることから,西洋ゴボウとも呼ばれます。わが国には明治初年に導入されました。
葉は良く広がって長く尖り,高さは1m以上になります。根は多肉質で白色,直径は約
3p,長さは30p程度です。夏に青紫色の花を付け,葉が枯れてから掘り取ります。
英名にオイスタープラントとか,ベジタブルオイスターとありますように,根にはカ
キに似た風味があります。
△食べ方と効能
サルシフィは根を食べます。切ると乳色の汁が出て,カキに似た風味があり,フラン
ス料理に用いられます。スープやグラタン,煮込み料理のほか,肉料理の付け合わせな
どにします。また擂り卸してお菓子材料にもします。若葉はサラダに用いられます。
ブラックサルシフィも,サルシフィと同様に利用します。
◎パースニップ オランダボウフウ・清正ニンジン・白ニンジン・アメリカボウフウとも
セリ科 原産地:地中海東部沿岸〜コーカサス地方
プロフィール:パースニップは色は白いが,形がニンジンに似ていることから白ニン
ジンとも呼ばれます。香りもニンジンに似ているものの,糖分を多く含んで甘味があり,
濃厚な味を持っています。古代ギリシャ時代から栽培されており,食用・薬用共に利用
され,古くから重要な野菜でした。17世紀にはイギリス・アメリカにまで普及し,特に
アメリカにおいては進んで栽培されました。
パースニップは貯蔵性に優れており,主に野菜の少ない冬期から春先まで食されます。
また,貯蔵中に糖分が増加します。低温で貯蔵し,土に埋めても良い。
△食べ方と効能
パースニップは寒冷地において栽培される根菜で,春に種子を蒔き,晩秋に収穫した
ものを,冬期間貯蔵して,香りと味を含ませます。形はニンジンに似ていますが,長さ
は50p以上になり,黄白色をしています。特有の香りがあり,蔗糖を含んでいるため甘
く,砂糖人参とも呼ばれます。
生食には向かず,煮込み料理などによく用いられます。加熱しますと甘味が増し,カ
ブとイモの中間の,ほくほくした食感が楽しめます。茹でてスープにしても美味しい。
栄養価が高く,特にビタミンE・B1及びミネラル類が豊富です。
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