02 竹文化〈竹の生態/竹は草か木か〉
竹文化〈竹の生態/竹は草か木か〉
竹箆圏チクヒケンとは,出産時に竹箆タケベラ(
アオヒエ)を用いて,臍帯セイタイを切るとこ
ろの竹文化の地域のことです。この地域の人
々は先天的に竹工が精巧であるといわれてお
ります。竹箆圏は主として東南アジア地方で
すが,古来,わが国もこの文化圏に含まれる
とされています。
わが国の国有林野においては,その林野に
成育する「立木竹リュウボクチク」を主産物として
扱っており,竹は森林原野を構成する重要な
植生の一つです。
本稿は,法政大学出版局発行の「ものと人
間の文化史〈竹〉」を参考にさせていただき
ました。 SYSOP
〈竹と笹〉
△竹と笹
竹と笹の一般的な定義は,マダケ,ハチクのように竹の皮が成長後,脱落するものを
竹(マダケ属,ナリヒラダケ属,トウチク属,シホウチク属,オカメザサ属)といい,
クマザサ,チマキザサ,ヤダケのように竹の皮が腐るまで脱落しないものを笹(クマザ
サ属,シノ属,メダケ属,カンチク属,ヤダケ属)としています。また,バンブー(ホ
ウライチク属,マチク属)は地下茎がありませんので区別できます。
昔は使用目的によって,人為的に処理して竹稈チクカン(茎)を使用するものを竹,葉を
主に利用するときは笹と呼んでいました。
△タケ類と竹類
本稿では,前述の竹類・笹類・バンブー類を合わせて「タケ類」とします。
△タケ類の語源
「たけ」は,たけ(竹),たけ(菌),たけ(丈),たけし(猛),たかし(高),
日たけたり,年たけたり,智たけたりなどの一連の日本語から,たけし(形容詞),た
かし(形容詞)や,たく(動詞)のtak-という語源をもとに生まれたものと思います。
なかでも「竹の子の生長の早いこと」が名の起こりの主要ポイントです。茸に由来する
男性そのものの連想も考えられます。
「ささ」は,大言海に「細小竹ササダケの下略,或は言ふ,葉の吹かれて相触れるる音
を名とし,竹の異名にしたるなり」とあります。ササと俗間でいうのは,山麓などに生
ずる小型のものを指す場合と,単に竹の葉を指す場合とがありますが,おそらく葉々の
触れる音からササの名が生まれたものでしょう。
「バンブー」は,東南アジアのマレー地方の原住民が,火災によってその焼けて吹き
出す音からバンブーと言い出したといわれています。
△タケ科とイネ科
・葉の関節と肩毛の有無:タケ類は葉柄と葉身の境に肩毛カタゲ(葉耳ヨウジともいいま
す)と呼ばれる付属物があり,その付属物に関節がよく発達して,葉が枯れると離層が
できますが,イネ科にはこれらがありません。この関節の有無は人間生活に大きくかか
わっています。藁で縄がなえることは離層ができないためですし,また離層ができて落
葉するので竹箒として利用されます。
・稈の木質化:タケ類は稈が木質化して生長する木ですが,イネ科は草です。
・稈,葉などの斑の入り方:イネ科植物(単子葉植物全般)の斑は稈の一側面に白条,
又は黄条が現れますと,その同一生長部線上の葉柄にも葉身にも斑ができます。タケ科
はそのほかに節,節間,葉鞘ヨウショウ,葉身の各々の原基のつくられる以前に斑の転化が
起こり,その転化率が著しく違います。
・花の咲き方:イネ科は1年ごと,タケ類は何十年の周期で咲きます。イネ科の花穂
は稈の先端から出ますが,タケ科は枝の基部,笹類は株元から花穂が出ます。
・生長形成の差:タケ科は稈生長を終えてから横枝を出しますが,イネ科は分蘖ブンケ
ツ(株分け)後に出穂シュッスイの時期がくると一斉に伸びて開花します。
〈竹の特異性〉
△竹は草か,木か
「木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの
はしにが身は なりぬべらなり(古今集)」
竹は一回開花植物で,何十年目かに一斉に開花枯死したり,旬日〜1ケ月で生長した
り,地下茎で繁茂したりするなど草本の性質を持っています。
また竹は何年にわたって伸長したり,巨大で,細胞の木化した木本茎などは木のグル
ープ入ります。
しかし竹は,草からも木からも大きく違っていますので,竹は草でも木でもなく「竹
である」ということになりますが,いずれかのグループに入れようとすれば,年ごとに
成長して伸びてゆくので,木のグループとみるのが当を得ていましょう。
△筍の伸びる時刻
竹類の生長型に関する研究
タケ類 1日の生長 生長割合% 所属
(平均p) 昼 夜
モウソウチク 34.6 58 42 タケ類
ハチク 38.3 56 44 タケ類
カンザンチク 15.7 49 51 笹類
ダイサンチク 15.4 44 56 バンブー
ホウライチク 9.7 38 62 バンブー
・夜間の方がよく伸びるもの・・・・・・ホウライチク,ホウオウチク,ダイサンチク
・昼間の方がよく伸びるもの・・・・・・モウソウチク,クロチク,ホテイチク,ハチク,
マダケ,カンチク,シホウチク
・不定のもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤシャダケ,ナリヒラダケ,カンザンチク,メダ
ケ,ヤダケ,オカメザサ
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