31 秘境作沢沼の植物
参考:鹿角市発行「鹿角市史」
浮島のあることで古くから知られている作沢沼サクザワヌマは、樫内川カシナイガワの上流田ノ
沢を登り切った一方高イッポウコウ(1,104m)の北斜面、標高750mの処にある、周囲400m、面
積0.6平方㎞の沼である。
かつてこの沼の周辺一帯は、ブナを主とした原生林に広く覆われていたと云うが、現
在は一部を残して大半の広葉樹は伐採され、替わってスギなどの植林が進められ、当時
の面影は全く見られない。それでもブナなどの巨樹の切り株の間に、ブナ・ミズナラ・セ
ンノキ・タムシバ・ホオノキ・キタゴヨウ・イヌエンジュ・ハウチワカエデなどの幼木が多く
見られ、僅かに伐採以前の姿が偲ばれる。
また沼の周辺には、辛うじて伐採を免れたブナを始め、ハウチワカエデ・ミズナラ・サ
ワグルミ・ナナカマド・カツラ・イヌエンジュなどの残存高木が見られ、その中に、マルバ
マンサク・オオカメノキ・ヒメアオキ・エゾユズリハ・ハイイヌツゲなどの、裏日本要素の
低木やチシマザサの植生が見られる。
こうした周辺の変化はあるものの、沼だけは古くからのままの姿で、静かに水を湛え
て静まり返っている。そして沼の中には、この沼を特徴付けている多くの浮島が浮いて
いる。浮島の中には、周囲10m以上もあろうかと思われる、大きなものが三つ程見られ
る。
浮島の成因については、普通周辺のミズゴケに被われた地表面が、長い間にミズゴケ
の遺体が分解せず、堆積して泥炭層を形成し、やがてその基底部が沼の周辺の水に溶け
て、浮島が出来るとされており、作沢沼の浮島も、表面がミズゴケに厚く被われている
ところから、そうした要因によって、発達したものであろう。
この浮島の上に一歩足を踏み入れて見ると、足許が沈んで行く程の厚いミズゴケの層
があり、島の上を歩くと、弾力性があり、ゆらゆらと揺れ動くことから、浮島の裏面が
完全に沼の底から離れていることが分かる。
浮島の植生としては、一面のミズゴケとモウセンゴケの中に、サワギキョウ・アイバソ
ウ・ミズオトギリ・ヒメナミキ・タチギボウシ・ノリウツギの低木などが見られる。また沼
の中にはヒルムシロが繁茂し、沼の表面を広く、四分の一程覆っており、岸近くにはミ
ツガシワが群生している。
この沼はまた、モリアオガエルの生息地としても貴重な場所であるので、十分な保護
を図ってゆく必要がある。
作沢沼の浮島 H14.05.22
[地図上の位置→]
[関連リンク(0501白沢神社の伝説・06作沢沼伝説)]
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