04a 陸水散歩〈湖の場所・型・生物群集〉
〈湖沼の型〉
△湖沼型の分類
湖水の環境要因と生物生産との相互関連に主点をおき,現在世界で普遍的に使われて
います分類をご紹介します。
・調和湖沼型:生物生産に必要な湖内の諸条件がよく揃い,不適当な条件が存在しな
いもので,次の二つに区別されます。
・・富栄養型:生産に必要な栄養塩類(窒素と燐酸)が豊富に存在し,プランクトン,
水草,底生生物,魚類の生産が多いです。
・・貧栄養型:栄養塩の含量が貧弱で,生物生産が少ないです。
・非調和湖沼型:栄養塩類が貧弱のみならず,生物の生存に不必要あるいは不適当な
条件が存在し,したがって特異な条件に適応した生物だけが繁栄し,次の四つに区別さ
れます。
・・腐植栄養型:腐植質が湖底に堆積するか,泥炭地の河水が流入する湖で,主に高
冷地や北方の湿原地帯に多く,わが国では青森以北の平地湖に例があります。湖水はチ
ョコレート色,酸性で窒素に富みます。沿岸には浮葉,挺水植物が多く,プランクトン
としてはツヅミモ類で,魚と底生生物は少ないです。
・・アルカリ栄養型:石灰分が多く,わが国には例が乏しいです。
・・鉄栄養型:鉄分が多く,わが国には例が少ないです。
・・酸栄養型:無機酸,主として硫酸によって酸性を呈し,東北地方に分布が多いで
す。植物プランクトンは乏しく,動物プランクトン,底生生物,魚類はPHの程度によっ
て種類と密度が異なります。魚ではウグイの棲むところが多いです。わが国には火山や
温泉が豊富ですので酸性湖が多く,研究も世界をリードしています。
△貧栄養湖と富栄養湖
特徴 貧栄養型 富栄養型
水色 藍又は緑 緑〜黄,水の華のため,ときに
著しく着色
透明度 大(>5m) 小(<5m)
反応 中性付近 夏の日中表層はアルカリ性
窒素ppm 少量(N<0.15) 多量(N>0.15)
燐酸ppm 少量(P<0.02) 多量(P>0.02)
けん濁物質 少量 プランクトンとその屍体多量
浮遊酸素 全量を通じて飽和に近い 表水層は飽和又は過飽和,深水
層は欠乏
沿岸植物 少,深所まで生える 多,浅所にのみ繁茂
底生生物 種類も多く,量も比較的多い。 種類は少ないが量は多い。標兆
標兆種はタニタルスス又はセル 種はキロノムス・ブルモスス
ゲンチア
植物プランクトン 貧弱,主に珪藻よりなる 豊富,夏はラン藻の水の華,こ
の外珪藻,虫藻も多い
動物プランクトン 貧弱 豊富,ワムシ類多し
遊泳動物 貧弱,マス,ウグイ多し 豊富,コイ,フナ,ウナギ,ワ
カサギ
湖底堆積物 有機物に乏しい,珪藻骸泥卓越 骸泥又は腐泥
△富栄養化問題
富栄養化が川や湖の生態系に結びつきますとその除去は容易ではありません。湖は当
然の帰結として,富栄養湖から沼沢への道を進みます。
富栄養化の進行状況は,透明度,溶存酸素,栄養塩の濃度,生物の生産性などで知る
ことができます。
植物プランクトンと高等水生植物(水草)とは,水中の養分を吸収するという意味で
は互いに競争関係にあるように考えられますが,必ずしもそうではありません。挺水植
物や浮葉植物,又は水草など底泥から養分を吸収する植物も,光合成により空気中の炭
酸ガスに依存しましす,また,これらが枯死分解しますと水中に多量の栄養塩を供給す
ることになって,かえってプランクトンの増殖を促します。ヨシ,マコモ,ヒシなどの
多い湖はこの例です。反対にタヌキモのように根のない沈水植物は水中の養分に成長を
依存しますので,このような湖では両者は競合し,プランクトンは少ないということに
なります。
参考 「川と湖の生態」共立出版
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