31 松茸はあなたの山に〈マツタケづくり〉
 
         松茸はあなたの山に〈マツタケづくり〉
 
                         広島県林業試験場においてその
                        研究に取り組んでいます,マツタ
                        ケ作りをご紹介します。 SYSOP
 
《マツタケの人工栽培に挑む》
                             参考 AFF19933
 広島県林業試験場における研究は,マツタケは菌根性のきのこですので,生きたアカ
マツの根に寄生して菌根を作り,寄主からの栄養吸収で菌糸が増殖し,子実体(きのこ
)を作ることです。
 マツタケの人工栽培に当たっては,このマツタケ菌の生理・生態の研究とともに寄主
側のアカマツや栽培地となるアカマツ林の条件整備等,総合的な技術開発が必要となり
ますが,本稿では,マツタケ菌糸を利用した人工栽培技術の開発,つまり菌糸の移植や
種菌化とこれらによるシロの人工形成についての試験について述べてみます。シロとは,
マツタケ子実体が発生するリング状のコロニー(マツタケ菌の集団)のことです。
 
〈感染苗によるシロづくり〉
 マツタケの発生していないアカマツ林に新しくシロを作るには,シロの移植とか,マ
ツタケの胞子を播くなどの方法が採られていましたが,移植したシロの生存期間が短か
ったり,播いた胞子の発芽が充分でなく,またアカマツ細根への発芽胞子の定着が不確
実であるなど不安定要素の多いものでした。
 従ってシロの人工形成では,移植菌糸の生存期間が長く,高い確率で寄主(アカマツ)
への菌糸伝達が必要です。以下感染菌による人工シロ形成の手順を述べます。
 @4〜5年生の健全なアカマツ苗を用意します。
 Aこのアカマツ苗をマサ土の入った鉢カバー(ポット)に植えます。
 B前年秋に発生したマツタケの周りのシロの先端に,鉢ごと植え込みます。1年目の
  感染は15p,2年目は30p位に感染(一次感染)していきます。
 C植え付け後1〜2年に,鉢ごと感染苗を掘り取ります。
 D掘り取った穴は,心土で埋め戻します。
 E20年生前後のアカマツ成木林へ感染苗を定植します。
 F感染苗から成木の根へ二次感染します。定植から3〜4年経過をシロ形成初期とい
  います。
 G定植から6〜7年を経過しますと,感染苗によるシロが形成され,マツタケが初発
  生します。
 この方法は,既存のシロが損傷を受けたり,一度に大量の感染苗を得られないことや,
自然条件下のため安定した品質の感染苗を作ることが難しいなどの問題がありますが,
特別な施設や特殊な技術が不要であることから,農林家であれば手軽に取り組める人工
栽培技術でしょう。
 
〈苗根合成による感染苗育成〉
 感染苗によるシロの人工形成が確認されますと,今度は感染苗の量産化が大きな命題
となります。マツタケ菌糸の大量培養と施設内の低汚染環境下でのアカマツ苗(感染用
苗)の大量育成により,培養菌糸の接種による感染苗量産化に取り組むことになるわけ
ですが,マツタケ菌は元来感染力が弱く,低汚染苗木でも細根への菌糸接種では,まだ
充分な成果は得ていません。
 このため,@苗木をできるだけ無菌状況の中で育成するため,ガラス器内で種子培養
ます。Aある程度生育しましたら,この培養苗とマツタケ菌を加えて同時に培養して,
B菌根を合成し,Cポット(鉢)でミニ感染苗を順化育成します。
 この手法では,順化した苗木はまだ1年生ですので,アカマツ林に充分適応できずに
枯れてしまうことがありますので,今後は,無菌状況下での大型感染苗の育成方法を開
発する必要があります。
 
〈合成菌根のカプセル化〉
 感染苗の菌糸や菌根が林地への移動の際に,汚れた外気に触れないように配慮する必
要があります。これは合成菌根をカプセル化することによって可能となります。
 この方法は,@アカマツ種子培養から得た分離根を,Aガラス器内の無菌状況下で培
養し,B同じくガラス器内で,この培養根とマツタケ菌との混合培養により菌根を合成
させ,Cアルギン酸ナトリウム液で被覆し,D塩化カルシウム液のゲル内に包埋し,合
成菌根をカプセル化します。
 この方法によるカプセル内の菌根は雑菌に汚染されることなく,土中で1ケ月以上生
存しますので,マツタケ種菌としての利用が可能となります。
 
 なお,今後の課題としては,感染力の強いマツタケ菌の選抜収集,寄生根系の糖頻流
転の状況,さらにシロ形成時の土壌呼吸量の把握などの究明が期待されています。
                                       
《マツタケ山づくり》
                               東京営林局資料
T マツタケ山に適した山
  マツタケは,アカマツの樹齢が25〜30年位から発生しはじめ,70〜80年になると終
 了するようです。
 1 地質・土壌
   土壌の基になります岩石は,花崗岩,流紋岩,砂岩,赤色古生層ですが,これら
  の岩石が風化してできた土壌に発生する確率が高いです。いずれも有機質の少ない
  土壌がよいようです。
 2 林の見方
  ・乾いたアカマツの若い林が最適とされています。アカマツの生立密度が高い方が
   良いようです。
  ・アカマツの高さが5m程度の林で,1ha当たり3千本前後をアカマツの生立本数
   の目安とします。
  ・アカマツ以外の植物としては,ツツジ類,ネズミサシ,ナツハゼ,ネジキ,アセ
   ビ,コシダ等が生えている林が適しています。
  ・山の尾根には,ところどころ基岩や地肌の露出しているところがあるような山が
   よいとのことです。
U マツタケ林の施業
  繁り過ぎた広葉樹は,アカマツの林内を暗く,湿っぽくしたり落葉や腐食の量を増
 やし,マツタケにとっては大敵です。
 1 日陰の調整
  ・アカマツは3〜6月に生育の悪い木を伐採します。
  ・3〜6月に落葉の多い雑木(ナラ類,サクラ,カキ,ホオノキ,アカメガシワ,
   ネムノキ,ナツツバキ,ウルシ等)を伐採します。
  ・ツツジ類,ナツハゼ,アセビ,ソヨゴ,ヒサカキなどは残しておきましょう。
 2 地表の管理
   地表の草木や雑木は,不要なものは抜き取ります。ササ類やシダ類は密生します
  とマツタケの発生には好ましくありません。
   地表の腐食土層の厚さが3p以上あるときは,掻き出して林外へ出して下さい。
  この土壌が厚くなりますと,水分や雑菌が多くなってマツタケ菌糸が消えてしまう
  ことがあります。
V マツタケ山の育成
  マツタケ山を守るためには,山全体を清潔に保ち続け若々しいアカマツ林の環境を
 維持することが基本です。このため,落ち葉や腐葉土は取り除いて下さい。
  マツタケの胞子播種後,数年くらいから収穫が期待できます。       以上
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